はっと汁
うちの長女は少々変わっていて、並んでいる屋台の中で渋いものを買ってきたことがあります。はっと汁といいます。意味は岩手、宮城、山形など、東北地方一帯で食べられる郷土料理「はっと」は、同地域の「ひっつみ」などと同じく、小麦粉を水で練った「すいとん」のような食べ物です。「ひっつみ」は小麦粉の生地をちぎったものなのに対し、「はっと」は薄く紙状にのばしてゆでることが多いようです。また、「ひっつみ」は汁料理のことを指しますが、「はっと」は小麦粉をねったもののことを指すことが多く、「ずんだばっと(ずんだばっと)」や「小豆ばっと」のように、汁に入れない食べ方も好まれています。「ずんだはっと」は、ゆでた枝豆を砂糖とともにすり鉢ですったあんに、ゆでた「はっと」をからめたもの。お盆に食べる行事食でもあります。汁仕立てにした「はっと汁」は、身も心もあたたまる冬の定番。元々は家庭料理ですから、味付けや具の種類もさまざま。お麩を揚げた「油麩」をのせることが多いそうです。岩手では、そば粉を柳の葉の形にのばしたもの(そばはっと)を野菜たっぷりの汁に投じた「柳ばっと」と言われる郷土料理もあります。「はっと」の語源ですが、平安期にあった菓子「薄飩(はっとん)」がなまったものという説のほかに、あまりにおいしすぎて食べ過ぎは「御法度(ごはっと)」という説もあるようです。