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2006年11月09日
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Keithの家のすぐそばには、
アラスカへと通じる、通称「アラスカハイウェイ」が通っている。

Teslin湖を目指しハイウェイを散歩していると、
後ろから走ってきた車がスピードを落とし、僕の横に止まった。

一体なんだろう。
ピストルを持ったギャングが現れ、
身包み剥がれる、なんてことも有り得ない話ではない。

窓が開く。


緊張の一瞬。


「村まで行くなら乗っていってもいいよ」

優しそうなおじいちゃんが顔をのぞかせた。

「ありがとうございます。でも散歩を楽しんでいるので、大丈夫です。」

「そうか、じゃぁ、楽しんで!」

おじいちゃんは走り去った。




しばらく歩いていると、次の車がまた僕の横で止まった。

今度はおばちゃんが、

「どうしたの?乗っていく?」

と尋ねてくる。

またしても丁重にお礼を言ってお断りする。



Teslin湖まで歩くと、今度は荷台に荷物を満載したバイクが止まった。
運転しているのはインディアンのお兄ちゃんだ。

「何してるの?」

「散歩です。」

「2日前に、この辺でヒグマが出たらしいから、気をつけて。
 どっちの方にいくの?」

「この岸沿いをしばらく歩いてから林道を抜けて戻ろうと思うんですが」

「そうか。あいにく荷物があるんで君を乗せることはできないけれど、
 ヒグマが出てこないように、その道を走っておくよ。
 早めに帰ったほうがいいぜ。」

ブンブンと派手にアクセルを空吹かせしながら、
お兄ちゃんは走り去っていった。


湖のほとりをしばらく歩く。
岸辺は流木がたくさん流れ着いている。
実は僕は流木が大好きだ。
数歩歩くごとに「おっ」とか「むむっ」とか言いながら、
流木を拾い上げ、その姿かたちを吟味する。

流木はみな不思議な色をしている。
白銀、というのが一番近いだろうか。
銀色のベルベットのような鈍い輝きを持っているのだ。
一体なぜなんだろう。
樹種や、水の性質や、厳しい寒さなどが関係しているのだろうか。
触ってみると、表面はすべすべで気持ちいい。

結局、1本を自分用に、2本を沖縄でゆいむん工房という
お店を立ち上げたばかりの、
尊敬する流木アーティストの為に拾った。


3本の流木を担いでハイウェイ沿いを歩いていると、
またしても車が止まった。
運転しているのはインディアンのおばちゃんだ。

「そんな重い木を担いで大変でしょ、ほら、乗っていきなさい」

車から降りてトランクまで開けてくれた。

ヒグマの事もあったし、思ったより流木が濡れていて重く、
襟元や手袋も湿ってきて、僕は凍え始めていた。
今回はご好意に甘え、素直に乗せてもらった。

おばちゃんはわざわざ遠回りして、
Keithの家の玄関先まで送ってくれた。

道すがら、この辺りに暮らす動物のことなどや、
森に入る時に注意すべきことなど、
色々と親切に教えてくれた。

凍えていた僕の体がポカポカと温まったのは、
車のエアコンのおかげだけではなかったに違いない。





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最終更新日  2006年11月11日 08時50分37秒
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