遥かなるユーコンへ 再び
"Hey, life is once. Ya, you gotta do what you wanna do."そんな言葉を、ストレートにたたきつけてくれた男に、僕は海を越えて、再び会いに行ってしまった。Keith Wolfe Smarch北米インディアン、クリンギット族のTotem pole carver。今やユーコンを代表する彫刻家の一人だ。そして僕にとっては、大自然の中で生きていく術を教えてくれる先達であり、狩りの師匠であり、彫刻の先生であり、かけがえのない友人、そして男としてちょっと憧れている存在でもある。去年の10月以来、9ヶ月ぶりの再会だ。太くたくましい腕、優しくも鋭い眼光、何も変わらないが、一つだけ変わったところがあった。額にできた、新しい縫い傷だ。そして、その傷こそが、今回僕がユーコンに再びやってきた理由でもあった。実はこの縫い傷、1週間前に行ったばかりの癌の手術の痕なのだ。先月Keithにもらったメールは、僕にとって大きな衝撃だった。"I just have found that I have cancer in my head."Keithが癌?しかも頭の中?万が一のことを考えると、僕はいてもたってもいられなかった。すぐに、無理やり仕事の都合をつけ、飛行機のチケットを手配した。しかし僕の心配をよそに、久しぶりに僕の手を握りしめたKeithの大きな手は、相変わらず万力のようだった。「幸い発見が早かったから大丈夫。 それより手術の入院のおかげで体が弱ってしまってね。 早く山に入らないと。 山に入ったほうが落ち着くし、体調も良くなるんだ。」僕が空港についたのは深夜1時を過ぎていたが、僕らは車を飛ばし、そのまま森に直行した。Keithはいつものようにトウヒの枝先を切り取ると地面に敷きつめ、手際よくLean Twoスタイルの寝床を作った。この時期、緯度の高いユーコンの夜は極端に短い。本当に暗くなるのは深夜2時から4時くらいまでの2時間くらいだ。明るさのせいか、再会の喜びからか、僕たちは時を忘れて語り合った。しばらく会っていない間お互いどう過ごしていたか、友人たちの近況、そしてこれからの人生、夢について。短い夜が明け、僕らはようやく眠りについた。今回の旅の目的は、高山に暮らす野生の羊、ドールシープの狩りだ。警戒心が強い上に視力も抜群に良く、仕留めるのはとても難しいが、肉は滅法ウマいらしい。本格的に山に入る前、Keithが僕に頼みごとをしてきた。抜糸だ。山の中、僕はアーミーナイフについている小さなハサミとピンセットで、Keithの額から出ている7本の糸を抜いた。この傷痕の下にKeithをしばらく苦しめた癌がいた。しかし、Keithは負けなかったのだ。最後の糸を抜くとともに、Keithは病の呪縛から解き放たれ、再び野性の中で生きる力を取り戻す。準備は整った。さあ、行こう。新しい旅が、これから始まる。