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カテゴリ:世界各国!旅先リポート
という想いは旅に出る前から胸に秘めていた。 Keithはユーコンでは最も有名な彫刻家の一人だ。 大小含め、数々の作品を残しており、 現在は後進の育成にも余念がない。 僕も彫刻の手ほどきを受けられることになった。 湖で拾った流木は乾燥していてやわらかく、 彫刻にはちょうど良さそうだ。 実はこの流木、ちょっと面白い特徴がある。 棒の先端は鉛筆を削ったように尖っている。 そして良く見ると、細かい削り跡がついている。 実はこの棒は、ビーバーが歯で切り落とした幹が 川を流れてTeslin湖に流れ着いたものなのだ。 ビーバーが好んで食べるのがアカヤナギの木。 特殊な薬効成分が含まれ、人間も頭痛のときに煎じて飲むといいらしい。 ビーバーは皆頭痛もちなのだろうか。 この流木もアカヤナギの木かもしれない。 「ビーバーの歯は本当に鋭い。 その昔、我々の祖先は、 ビーバーの歯を枝にくくりつけて彫刻刀にしていたんだよ」 とKeithが教えてくれた。 ビーバーが辛抱強く噛み切ったこの流木には、 小さな動物に内包された強い意志と忍耐力がこもっている気がした。 この流木を彫ってみたい。 モチーフはもちろんビーバーだ。 Keithが、初心者向けの、 簡単なビーバーの尾のデザインを考えてくれた。 工具もKeithのものを借り、彫り方も全部教えてもらった。 Keithが使っている彫刻刀は殆ど全て自分で手作りしたものだ。 刃は板バネから削りだし、丁寧に研いだもので、 適当な太さの棒を柄にしている。 力を入れなくてもスイスイと木が削れて行く、 驚異の切れ味だ。 驚いたのが「引く・押す」のが日本とは全て逆であること。 彫刻刀は引いて使い、かんなは押して使う。 かなり戸惑いながらの作業となった。 そして、2時間後、遂に完成した。 ”Talking Stick”と呼ばれる杖だ。 杖といっても、歩くときに使うものではない。 クリンギット族が会議を開くとき、この杖が会場を回るのだ。 杖を持った人が気が済むまで発言し、その人が話している間は 他の皆は全員、きちんと話を聞かなくてはならないという。 そして発言が終わると、杖は次の人に手渡され、 平和裏に会議は進んでいく。 自分の意見を述べる以上に、他人の言葉にしっかりと耳を傾けることこそが 大事なことなのかもしれない。 自己主張や競争の激しい現代社会の中で、 このTalking Stickを触るたびに、 僕も自身を自重していこう。 誰かと喧嘩になりそうな時は、 このTalking Stickを実際に使い、 きちんと話し合うのもいいかもしれない。 もっとも、人間の未熟な僕のことだ、 まずはTalking Stickの取り合いで喧嘩にならないように 気をつけよう。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2006年11月10日 21時39分57秒
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