101日
「101日」 The Show Must Go On 2010年 クロアチア映画製作・監督・脚本 ネヴィオ・マラソヴィッツ またまた、変わった映画を見つけてしまいました。なんとクロアチア映画です。もちろん日本未公開です。いつものごとく、いつものレンタルビデオ屋で、DVDのパッケージの解説文を読んで、もちろんまったく知らない映画でしたが、面白いかも、と思って借りてきたのです。「ハウスト」は、6組の男女を180日間ある建物に閉じ込められて生活させ、その中でゲームなどをさせながら、視聴者の投票で脱落者を決め、最後の1人が勝者になる、というTV番組でした。 この番組のチーフプロデューサー・フィリップは、裏番組の人気キャスターである元妻ヘレナと、公的には視聴率を争うライバルとして、私的には1人息子パトリックをどちらが迎えに行くかなど、常に争っています。 番組はスタッフの努力むなしく、1ケタの視聴率で低迷を続けます。 そうこうしているうちに国際情勢が怪しくなり、とうとう戦争が勃発してしまいますが、番組参加者には一切知らせず、番組は続行され、戦争からの現実逃避でしょうか、番組の視聴率は43%,68%と、うなぎのぼりになっていきます。 戦争はますます白熱し、状況はいよいよ怪しくなってきたころ、残った6人の参加者を薬で眠らせ、地下深くに作られたシェルターに移し、フィリップは、万一のことを考えて、最後のメッセージを録画しておきました。 そしてとうとう、核ミサイルが………。 というお話です。番組のため隔離されていた男女が、核戦争から生き残り、サバイバルをするというお話ではなく、戦争の危機が迫る中、番組維持のため、プロデューサーが奮闘するお話でした。 24時間放送のわりにはスタッフ少なすぎないか?(放送し続けるためにはスタッフは2交代または3交代制にするべきですが、プロデューサーのフィリップが帰宅する描写はありますが、彼が会社に行くと機械の前に座っているのはいつも同じメンバーです。)とか、ミサイルが飛んできた後180日目(本来の番組終了)までほかっておかれたみたいですが、その間の電源とかはどうなっていたのだろう(2.3日ならともかく、何十日も電気は備蓄できません。常に発電し続けないとあれだけの施設の電源は確保できません。)?とか、180日目になって録画しておいたフィリップのメッセージが流されたみたいだけど、外の世界は崩壊しているのに、どうやって録画は流されたのか?とか、最後種明かしした後、参加者たちが秘密の出口を見つけ出て行った先にやたら大量の食糧などの備蓄の段ボールがありましたが、途中で番組のゲームで使用するハンバーガーの材料を確保するのに苦労したというような描写があったことに矛盾しません?とか、突っ込みどころは満載です。 しかし、最大の突っ込みどころは別にあります。 この映画、180日目、スタッフからの連絡が途絶えてから何十日もたち、いら立っている参加者たちに、突然フィリップからのメッセージが流れ出す場面から始まります。 そして、メッセージの肝心な部分は流されないまま場面が変わり、過去に戻り、その後、結構短い間隔で、時系列がバラバラに描写されていきます。 ちょっと1つ1つの描写が短すぎて(1人息子パトリックを巡って、争っているフィリップとヘレナの描写も加わって、)、はっきり言って混乱してきますが、事実を少しずつ解からせて行って、だんだんと危機をあおろうと工夫しているようです。 そして、最後に、外の世界は崩壊しており、彼らだけ生き残ったんだよ、ということをオチにして終わらせたかったようです。(実際にそう終わっています。たった82分でしたので、「えっ、これで終わり???」感が半端なかったですが。) ところが、明らかに核戦争後で死の灰が降り積もった背景にガスマスクをした人物を配したパッケージ(上の写真)に、裏面には、以下の説明があります。第三次世界大戦。核戦争。人類滅亡―。 6人は、なぜ生き残ることが出来たのか―? DAY1:TV番組の企画のために、6人のカップルが集められる。6か月間、この家から出ることはできない。DAY42:視聴者の投票により、ひとり脱落。世界規模の戦争が開始。 DAY95:参加者は戦争が始まった事実を、まだ知らない。 DAY100:眠っている参加者を、地下の核シェルターへ移送。DAY101:ミサイルが発射される。到着まで1時間―。 そして、これは観終わってから気になってチェックしたのですが、このDVDの日本版予告編(これは、劇場公開用ではなく、他のDVDに入れるために作られたものと思われます。)でも、核戦争で崩壊した世界に生き残った人々というのを全面的に押し出している内容です。 これっておかしくない?? 映画のオチを全面的に押し出した宣伝って、あり??? この日本版DVDを作ったスタッフは、映画の内容を理解しているのか???? もう1つ言わせてもらうなら、邦題の「101日」これも意味わかりません。確か、ミサイルが飛んできたのが番組が始まって101日目ということですが、数字を強調して明確にカウントダウンしているわけではないので、はっきり言ってよく分かりません。101日で終わっているわけではないしね。(原題は「ショウは続けられなければならない」という意味の英語です。内容の通りですね。) どうも、この題名の付け方からも、物語のテーマをきちんと理解しているわけではなさそうですね。 この映画、なんか賞を取っているそうなんですが、はっきり言って、核戦争云々を全く知らないで観ていたら、まったく違った印象で観れたのではないでしょうか。 僕自身、核戦争後に生き残った人々の、サバイバルとか、生き残りたいエゴむき出しの醜い争いとかを期待して、DVDを借りてきたわけで、内容が全く違うのでがっかりした1人です。(ネットで検索してみると、同じように感じた同志が目白押しです。) ということで、期待した内容と全く違ってがっかりした次第です。 この映画アイディアは非常に面白いので、脚本などもっとよく吟味して落ち着いて作ってほしかったですね。 それから、主人公フィリップの元妻でライバル番組のキャスター、ヘレナですが、彼女、何度も何度もフィリップに連絡してきて、やれ「パトリックを早く迎えに来て。」とか、「さっさと避難させてよ。」とか言ってきていましたが、そんなに気になるなら、自分で避難させれば、どうせ、戦争始まってから、視聴者は、あんたの元旦那が作ったおバカ番組しか見てないんだし、あんたの報道番組なんて誰も見てないんだから。と思って、非常に鼻について、いやな女だなあ、と思ったということを付け加えておきましょう。