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カテゴリ:ダンシング・オン・ザ・ウォーター
「あの、Sarraute(サロート)?ちょっと気になった事があるんだ!聞いていいかい?」アフタヌーンティーを楽しみながら、彼女に問い掛ける。「どうしたの?Daladier(ダラディエ)?」「君は白雅を知っているの?さっきのやり取りで、白雅と初めて会った様には見えなかったんだけど?違うかい?」「あら?さすがね!気がついたの?そう!私は彼を知っているわ!彼の母エリザとは、イギリスの同じモデルの事務所にいたのよ!彼女とは、先輩と後輩という間柄なの!彼女は日本に行って、私はイギリスからフランスに移り住んだけど、今でもとても仲良くさせてもらっているのよ!貴方を調べていたら、エリザの名前が報告書にあるんだもの!びっくりしちゃったわ!」
微笑みながら答える彼女。「そうだったんだ!まさか繋がりがあるとはね!世界って広いようで狭いのかもしれないね。」僕は答える。何となく、察していたからそれ程驚かないけれど。白雅、君は知っているのかな?ミルクティーを口に含みながら彼を想う。「ねぇ、Daladier、人と人の繋がりって素敵よね!貴方の目指すコンシェルジュとは、まさにその世界そのものなんじゃないかしら?人が好き、そして、誰かの為に役に立ちたいという考えが無いと、絶対になれない職業かもね。」 「そうかもしれないね、Sarraute。もともと、僕が最初にバトラーを志したきっかけが、自身の存在意義を確認したかった為なんだけど、今はね、僕と接する全ての人に、最高の寛ぎを与えられる様になりたいって、はっきり言い切れる気がするんだ!それはコンシェルジュになりたいって決意してから、想いが更に強くなったんだよ!」私の正面に座り、はにかんだ様子で話す青年、浄瑠璃。きらきらした瞳がとても美しい。複雑な生い立ちで、真っ直ぐ育つ人はそう無いのでしょうけれど、この子はきっと周りの大人に恵まれてきたのでしょう。私も愛人の子だったから、彼の気持ちとかよく理解できる。そして自身もまた、周りの大人に恵まれてきたからこそ、今の立場にいるんだわ。 「ねぇ、Daladier、自身の育ってきた背景にあるものは、未来の自分の糧になるって信じるわ!私もたくさん苦しい事とか、悔しい想いもしたけれど、それをバネにしてきた。貴方もそうなのね?」彼女の問いに頷く。「うん。その通りだよ!『悪い事はいつまでも続かない。どんな時でも笑顔を絶やさず、自身の力を信じていけ!』これがね、僕の小学校時代の恩師の言葉なんだ!女の先生だったんだけど、とてもさばさばとした女性でね、正義感の強い人だったんだ!僕が影で虐められているのを知って、クラスのみんなに『虐めは100%虐める人間が悪い』って泣きながら言ってくれた。僕が捻くれずに育ったのは、この先生をはじめ、いい大人が周りにいてくれたからなんだ!だからどんな苦しい事にも耐えられた」 「そう・・・」紅茶を口に含み答える。知れば知るほど素直でいい子よね。エリザ、貴女がこの子を「全く!うちの愚息と大違いなのよ!朱砂が引き取ってきた子の方が、頭も良いし何よりいい子なの!」って言っていたのがよく解るわ!「Sarraute、私と朱砂が離婚した事で、白雅が捻くれてしまったんだとしたら、ただ、親として後悔しかないわ!朱砂と復縁すれば、白雅の、彼に対する憎悪が少しは消え去ると想う?」一ヶ月前復縁するか迷う、エリザからの相談を受けていた。ふと、彼女の言葉を想い返す。思考を遮るように浄瑠璃が静かに話し出した。 「Sarraute、僕の想い人白雅はね、とっても繊細なんだ。それを隠す為に、いつも虚勢を張っていて、本当の自身の姿を悟られない為に、わざと意地悪を言ったり、皮肉たっぷりな物言いをする。それでいて誰より寂しがりで、人恋しいんだよ。エリザさんに出て行かれたのが、余程ショックだったんだろうね。白雅がね、僕に固執するのは、僕のこの髪色が彼女に似ているからなんだよ!朱砂様もそう。2人とも僕にエリザさんを重ね合わせている。時に重いって感じてしまうけれど、今はね、嬉しかったりするんだ!だって必要とされているって感じるから」 「ねぇ、それって、貴方が彼を想い続ける理由だったりする?」私の問いにこくりと頷く浄瑠璃。「そう・・・彼を想う背景には、そんな気持ちがあったのね・・・」答えてから再び、エリザからの相談に思考を戻す。「少なくともエリザ、貴女と朱砂さんが幸せな様子を見せてあげれば、白雅君の想いも変わるのかもしれないわよ!憎しみあって離婚したわけじゃないんですもの、お互いにまだ未練があるならば復縁しなさいよ!意地を張っていないで!」私の言葉に、電話の向こうの彼女は涙ぐんでいたんだった。 「どうしたの?Sarraute?今日はおとなしいね?いつも沢山話すのに!」笑いを含めた、いたずらっぽい問い掛けに我に返る!「そう?私がおとなしいと、主人も不思議がるのよね~!(´∀`*))ァ'`,、 テンション高い時ばかりじゃないのよ!(´ω`ι)あ、そうそう!私が先に帰国しても大丈夫なように、Jolivet(ジョリウ゛ェ)を置いていくわね!コンシェルジュに関して、解らない事は何でも彼に聞くといいわ!それから貴方がフランスに行く時には、彼も同行させるから!貴方がコンシェルジュ目指す事、岬総支配人も快く応じてくれたし、本当に良かったわね!」 「本当にありがとうございます!Jolivetさんもいてくれるんですか?それは助かります!コンシェルジュになると決めたとはいえ、まず何をすればいいのかも解らなかったので。」答えながら白雅を想う。白雅、フランスに行く事、君には言わないで行くよ!さよならを言ったら、君と再び逢えなくなってしまいそうで怖い。それに僕は信じている!努力したら、神様はちゃんと願いを叶えてくれるって!どんなに時間が経とうと、必ず僕達を惹き合わせてくれるって!それにね、朱砂様が「これからはお前の自由だ。もう20歳になったのだし、俺の監視下にいる必要は無い」って言ってくれたんだよ!もう僕は、彼のラグドールから解放されたんだ!だから次に君に逢う時には、何の負い目も無く逢えるんだ! 君は歓迎しないのかもしれないけれど、再婚の報告に来た朱砂様とエリザさんは、とても幸せそうだったよ!白雅、僕はどんな時でも君を想い続ける。そして幸せになって欲しいと願い続けるよ!胸の前で両手を組み、瞳を閉じる。祈るような表情の浄瑠璃を見つめる。本当に一途な子。誰を想っているかすぐに解るわ!白雅、貴方はこんなに可愛くて、純粋な子に愛されて幸せ者ね!なんだか無性に、主人に逢いたくなっちゃったわ!私は静かにイスから立ち上がり、座ったままの浄瑠璃を、背中から抱き締めた。「Daladier・・・貴方が恋しいわ・・・」耳元で甘く囁いて。 「首尾はどうだった?」「すこぶる順調よ!白雅も必死で抗っているわよ~!((藁´∀`)) でもちょっと可哀想かなって思っちゃうわ!酷い男よね~!朱砂って!で?第三弾も発動したんでしょ?そろそろ暁闇さんもこっちに着く頃かしら?」「ああ!そうだな!さーて!これからが見物だぞ!これからあいつはどう動くかな?お手並み拝見といこうか!」(。-∀-) ニヒ♪「つくづく悪い男よねっ!!そんなにサレンダーさせたいの?実の息子に?」「同属嫌悪というやつだな!ァヒャヒャ(ノ∀`*)ノ彡☆昔の俺を想い出させるんだよ!白雅は。あいつの振る舞いも考え方も、そして甘さもだ。長男だからといって甘やかす必要なんか無い!徹底して、世間の厳しさを知ってもらわんとな!俺だって再婚の為に、一番のお気に入りを手放したんだ!少しばかりの意地悪くらいさせてくれよ!」 「ちょっとっ!!何よそれっ!!私の為に、浄瑠璃ちゃんを手放したんじゃなかったのっ!!」「お前の為もあるけど、白雅の為でもあるんだよっ!!浄瑠璃を手放せば、少しは俺に対する思いも変わるかなって考えたのっ!!(>д<;) ホントはお気に入りだから手放したくなかったのに~!俺の浄瑠璃を返せっ!!馬鹿息子っ!!」ゥヮァ─・゚・(゚`Д´゚)・゚・─ァァン ・゜ 「なんじゃそりゃっ!!相変わらず未練たらしい男ねっ!!Σ(`oдО´;)ホントあんた達親子そっくりっ!!手放したんだからいつまでも未練残すなっ!!これからは私がいるんだから、充分でしょっ!!」朱砂の頬をきつく抓り上げた! 「痛たたっ!!ったくっ!!相変わらず狂暴な女だなっ!! そんな事すると襲っちまうぞっ!!つーか、お前としたいっ!!」「やーだっ!!そんな気分じゃないのっ!!笑ロ親父っ!!ホント、年がら年中発情期で嫌になるわっ!!結婚してやらないわよっ!!」 「それはやだっ!!一人になりたくないっ!!エリザちゃーんっ!!」抱き締めると手が頬に触れ、キスを奪われるっ!!「もうっ!!したいなんて言葉で表現しないで、女を誘う時は、もっとロマンティックにベットに誘うものよ!darling・・・」何度も繰り返してきた朱砂とのキス。女を知らなかった朱砂を変えたのは、他でもない私自身。どうしようもない男だけど、一番のお気に入りの人。浄瑠璃ちゃんの代わりに、私が沢山癒してあげるから、早くあの子の事は忘れて!お願いだから、ね?darling・・・ 強い自己嫌悪へ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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