この映画が出た頃が1995年なので、この頃見た人は「アウトブレイク(大流行)」が身近なもの・日本で起こりうることと考えたのは少数派ではないでしょうか。その頃”エボラ出血熱”とかを思い浮かべたでしょうか。”O-157”は「アウトブレイク」の対象になると思った人はどれくらいいたでしょうか。航空機の発達で圧倒的に地球の時間的距離が縮まったので、この作品は今ではわりと身近なものになっていなければ、”日本人の危機管理状態”は、まだ未熟だと思います。
さてこの作品は一匹の猿から始まるアメリカ滅亡の危機を描いています。この作品の題材は明らかに”エボラウイルス”がモデルになっています。アフリカが最初の発生地であること、猿が関わっていることなどからです。
ストーリーは、まずアフリカで原因不明の体中から血を噴出して住民が次々と死んでいくという事件が起きます。その調査に赴いたアメリカ軍医学研究チームのリーダー”サム・ダニエルズ(=ダスティン・ホフマン)」は警戒態勢を進言しますが却下されます。ところがその後同じ症状の患者がなんとカリフォルニア州に出現、一気に感染は広まり人々はパニック状態に陥ります。サムは独自に調査を進めるうちに軍に極秘血清があることに突き当たり・・・。息もつかせぬスリリングな展開が続きます。
この作品は二つのテーマを扱っています。一つは未知のウイルスの恐怖で、もう一つは細菌兵器の極秘開発問題です。今ではこの二つはリアリティがあります。軍の権力が強い国はおそらく細菌兵器の研究をしているでしょう。また航空機の発達で短い期間で他国からウイルスが飛び火する可能性はますます高くなっています。この映画の投げかける問題を真剣に考え始めたらきりがありません。ともかくリアルで奥の深いテーマの作品と言えます。
主役のダスティン・ホフマンは演技の幅の広い俳優だと思います。「卒業」「クレイマー、クレイマー」「レインマン」「トッツィー」と様々な役をこなしています。来年で70歳になるのですがまだいけそうです。
「アウトブレイク」