冷房の話
今年もそろそろ本格的な夏が始まる。夏に備えて何かと準備が必要だと感じることはないだろう。冬に比べて、夏は生活することにそう苦労を伴わないからだ。昔は昔は冬を越すことはとても難しいことであるように思われるが、現代ではそうでもない。夏もまた同じく…越すことに苦労を強いられるものではない。普通の人ならば。私は違う。私は夏だから安寧と過ごせるわけではない。なにしろ私には夏を安全に越せない病気のようなものがあるからだ。この病気は冬も辛いが夏も相当に辛い。これから来る戦いのことを思うと…いつも以上に準備は入念にしなければならない。そんな準備の第一歩は、まず冷房の整備からだ。冷房は私にとって夏を越す為の大切な道具の1つだ。健常な人にとってのそれは涼を運んでくるだけのものかもしれないが、私にとってはかなり重要な地位を持っている。なにしろそれがあるとないとでは夏越しにかかる体力が全く違うからだ。昨今は節電の流れにあって、冷房がないと安全に生きていけない私にとっては住みにくくなってきた。だがそれでも私は健常ではない。少なくとも冷房を使えば安寧と出来るのであれば使わざるをえない。たとえ夏の電気代がどれほど膨れ上がろうとも。そんな夏のパートナーの冷房を掃除することにした。これは私の1人暮らし生活の今くらいの時期の恒例の行事だ。私は冬に暖房関係のものは一切使わない。否、本当は使えないのだが、兎に角自発的に暖房を使うことはない。夏の最後の業務を終えた我が家の冷房は、次の夏まで長期休暇に入る。そんなブルジョアな冷房にまた働いてもらうには、まずは綺麗になってもらわなければならない。別に計画しているわけではないが、冷房の掃除はいつもこれくらいの時期になってしまう。梅雨が明けるか明けないか、そんな時期だ。いつものようなルーチンワークで冷房を掃除していく。1年間怠惰に過ごした冷房はまさに汚れの巣窟となっていた。そんな冷房を綺麗に掃除していく。この行事こそ私の夏の始まりと同義だ。そしてその後は試運転だ。しっかり働けるかどうかを見てあげなければならない。幸い、1年間の休暇をエンジョイした冷房は軽やかに昨年と同じく運転し出した。掃除の甲斐あってか、まぁまぁの出だしといったところか(笑)もう夏が来る。私はまたこの子と共に夏を越していくことになるだろう。夏の終わりのその日まで、へばることなく働き続けた見返りはたっぷり1年の休暇だ。夏は殆ど休みなく働き続け、その代わりに1年間の休暇をもらう。もしも自分がその立場だったらその条件を飲んで働くだろうかと考えて、少し真剣に悩んでしまった今日この頃だった。