仙燐眼

なぜに元亭主と10年も居続け、すぐに離婚できなかったか、
時々考える。

一つは子供がいたので
用意もなく出て行くための場所がなかった。

もう一つは・・
夫が気に入らない事があると
切れてしまう事に慣れてしまっていたという事かもしれない。

普段の生活ではそんなに切れまわるというのではなかったが、
自分のペースを崩すことに
かなり抵抗があるような人だった。

例えば
休日にどこかへ出かけるとき
9時に出かけようと決めていたら、
必ずその10分前には出かけるようにしていかないとならなかった。

夫はかなり普段から早起き

出かけるときは
必ずその２時間前から起きている。

私というと
やっと１時間前に起床して
ギリギリで用意が済み出かけることに。

でも、慌てて用意しては
たまには不機嫌になることも。

夫は運転中に
好きな音楽をかけ、
私に聴かそうとするのだが、
私というと、せわしない気持ちで
子供に話しかけるばかり・・

そのうち・・・

「もう、帰ろう」と。

なぜ？
と
聞けば、音楽もゆっくり聞けない心境なら
家に帰ってるほうがましだから

と

猛スピードで車を走らせ
急ブレーキで自宅の駐車場に。


途中、車を戻し
又元の行き先まで行こう、と誘っても
一度切れたら歯止めが効かない。


どんなにご機嫌とっても同じ。

これは、テレビ番組も同じ。

何かおもしろい番組があると
必ず私を誘う。

夕飯の忙しい支度の中でも
そわそわして内容なんて覚えていない状態だと

「もう、見ないならいい」
と言って消して
自分の部屋に閉じこもってしまう。

放っておくとそのうちに
機嫌を直して又元の居間になんか戻ってきたりするんだが、

しかし、夜中になって
また蒸し返してくるのだ。

なぜに
一緒に音楽を聴こうとしなかったのか？

なぜに
番組を見て楽しんでくれなかったのか？


理由はひとつ。


ただ、その時、感心が湧かなかったから。


忙しかったから、そういう状態だったのかもしれないが
相手がタイミングを察知して
用意したものなら、
腰を据えて感心を示したかもしれない。

でも、
とにかくそのときはそういう状態だった、というだけ。


夜中の話し合いだけで終わればそれで
終わっていたろうが、

夫は必ず仕返しをしてきた。


私が普段から感心を示す番組を見させないとか

音楽を聴かないなら、
全てのCDを捨ててしまったり。

アホがやってる・・と
私はビデオに録画して
後で見たり、
再びCDを買ったりした。

別にそのくらいの負担ならいいかーーー、他はなんとかなるし。

なんて問題を棚に揚げっぱなしにしていた。


そのうちに
もっと攻撃するようになった。

お出かけ中に何か自分だけが疎外感を感じるようなことがあれば、
１５０ｋｍ以上もの猛スピードで車を走らせ
恐怖を味あわせようとしたり、
また、家での出来事では
突然、出て行き
「借金をしてきた、おまえのせいで・・」
など言い放つようになった。


とことん話しをしても
結局お互いが本当に望むとこが改善されないから
いつも同じ結果。

夫は私が密かに離婚をもくろんでることを
確信していたようだった。
だから、どっかで繋ぎ止めたいという願いがあった。

恐怖感を感じさせ
自分に従わせたかった。


私は既に気持ちの中で夫を捨てていた。

だから、その場だけ取り繕えばなんとかしのげる、とも思ってた。

でも、そんな風にその場だけの付き合いで
長くやっていけるのなら
ひょっとしたら、
心では切り捨てても
もっと長くいけるかも・・なんても。

でもね、
とーーとーーダメになり、
これは、ちょっとした工夫をこらした。

動物の勘のように鋭い夫だったので
私が再び家出するのを知ったら
どんなに逆上するだろう、と思った。

いつまでも堂々巡りするような生活は断ち切りたかった。

ねばならない、とも思った。


だから・・・
（詳細はあまりにも！なんでここでは書けないが）


ある夜に実行。

「もう、あんたとはやっていけないよ～～」
と、はっきりと言ってのけ、
今度は絶対に引き下がらなかった。
（いつもなら、
子猫のように、べそかきながら
でも、明日になったら、やり直すよね、
本当は、最終的には離婚しないよね？なんてすがってくる）

エレベータのような気持ちを
続けていながら、
もうすっかりと疲れていた私。

殺されても出て行ってやる～～～！！

（私も一種の共依存だったかもしれない、
いや、秤にかけてるつもりだったが・・）

大事なものだけ持って
車にエンジンをかけ少し走り始めたとき

夫が追いかけてきて
フロントガラスに飛び乗った。


僅かに５ｍもない道幅で
この夫を途中まで引きずりながら、バックで走り
途中、振り落とした
そして、猛スピードで逃げた。

なぜにバックかというと
正面に進むと
夫が引かれてしまうからで
一応は気を遣っていた。

ん～～～～・・・

思い出しても素晴らしいハンドルさばきだったと思う。

坂道でまるで教習所の試験場のような
蛇行した道。

それから、
別居に踏み切っていったのでした。

この夜中の決意がなかったら、
私は未だに
あの生活から抜け出せないままだったのかもしれない。