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2008.06.12
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 そもそも、初めて彼女に関心を抱いたのは如何なる理由によってであったろうか。

それはわが身ながら定かではないが、茶道の習いに出ていた日の夜の事に相違ない。

習いといっても学生のすることであるから、

その日を無事に終え、いざ帰らんという頃合いには厳粛な雰囲気はすべて失せ、

大口を開けて大笑する人あり、襟元や足の乱れも心に留めずに座す人あり、

また室はがやがやと騒ぐ声に満ち、修羅道の様を呈するのだが、

そのような時分に初めて彼女と言葉を交わしたように思う。


この修羅道に一輪の水仙が花開いたのだろうか。

顔貌は澄んだ水のように涼やかで、すっきりと通った鼻筋を見ても、

薄く小さな唇を見ても、見苦しいと思うところはない。

躰はほっそりとして手足はすらりと伸び、肩は巧みに削り取られ、

抱けば折れてしまいそうな腰つきで、項は白川のようである。

目映いばかりの真白な肌はぬばたまの黒髪と黒衣によく映えて、

銀の髪飾りは品のある美しさを漂わせている。

華やかならずも落ち着いて、鴉のような不思議な風情のある女性だった。








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Last updated  2008.06.15 17:12:35
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