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カテゴリ:本の感想 作家別-あ行
異形の者ども、新しき帝都の闇を征服せよ。 帝都・東亰、その誕生から二十九年。夜が人のものであった時代は終わった。人を突き落とし全身火だるまで姿を消す火炎魔人。夜道で辻斬りの所業をはたらく闇御前。さらには人魂売りやら首遣いだの魑魅魍魎が跋扈する街・東亰。新聞記者の平河は、その奇怪な事件を追ううちに、鷹司公爵家のお家騒動に行き当たる……。『屍鬼』の著者がつくり上げた、探偵小説と伝奇小説の妖美なキメラ。 18冊目 上質なホラーでありミステリー、舞台は東京ではなく帝都・東亰(とうけい)。「その町は泥の中から浮上した」という書き出しから異界の町の物語がはじまります。 浄瑠璃の人形とそれを操る黒衣(くろこ⇒黒子)が狂言回しとなり異形が闊歩する物語が語られていきます。 妖怪のたぐいが跋扈し子供をかどわかしたり殺したりしているというおどろおどろしい話はかなり怖く うっかり夜に読み始めた自分がうらめしくなりましたが、 主人公であり探偵役を努める平河がでてくると 実用主義的視線で話がすすみ推理小説的雰囲気が濃くなり この物語の作品世界が帝都東亰(とうけい)ではなく 明治維新からさしてたっていない実際の東京での物語ではないかと錯覚をおこしていきます。 そしてこのホラー的要素と推理的要素が絶妙にからまって夜に闇を色濃くはらんだ世界にどっぷりとひたってしまいます。 十二国記シリーズを除くと「魔性の子」しか読んでいないのですが小野ワールドともいえるどこか陰鬱で一方でしごく懐かしいような闇の存在の空気の匂いすらしてきそうです。 一連の殺人事件の真相はもの悲しく哀れで恐ろしい人の心が生み出したものではあるのですがその恐ろしさ哀れさも闇の世界の存在に飲み込まれていくところは圧巻です。 そしてエピローグは文字通り魑魅魍魎が闊歩し人が襲われる日々の中 外を出歩かないわけにもいかないと 強盗や流行病と妖怪を同列に割り切り生きていこうとする人たちの描写が生き生きとあり、この異界に光が投げかけられて物語が閉じます。 我が語彙の少なさがうらめしいのですが、面白かったです。 物語はパラレルワールドではあるのですが 明治維新という名のもとに自国が培ってきた土壌、 根をかなぐり捨てて西洋世界のものに眼をむけてしまったことなども 取り上げ日本という国のありかたにも疑問の目もむけている所もあり苦いものも感じました。 また、暗闇が怖くてお化けや幽霊話を聞くと背中を壁にくっつけないと落ち着かない、神仏関連にはつい手を合わせる、そんな気持ちもすごく大切な事だなとなぜかしらしみじみ思いました。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2008.03.19 21:57:58
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