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カテゴリ:本の感想 作家別-あ行
兄は泉水、二つ下の弟は春、優しい父、美しい母。家族には、過去に辛い出来事があった。その記憶を抱えて兄弟が大人になった頃、事件は始まる。連続放火と、火事を予見するような謎のグラフィティアートの出現。そしてそのグラフィティアートと遺伝子のルールの奇妙なリンク。謎解きに乗り出した兄が遂に直面する圧倒的な真実とは??。溢れくる未知の感動、小説の奇跡が今ここに。 21冊目 5月6日読了 ”春が二階から落ちてきた。” 思わず「はぁ~?!」と目をみはるもなんともワクワクしてどんな話が始まるのだろうと心が浮き立つ書き出し、そして同じ言葉で幕が閉じます。 私にとっては二作目の伊坂作品! 正真正銘のミステリーでグラフィティアート、遺伝子やネアンデルタール人とクロマニョン人の違いやら蘊蓄を面白く読ませてくれて、そしてDNAなんてぶっとばす家族の愛の物語 物語は「私」(=春の兄貴) 泉水の弟、春との鮮烈で小気味よい出来事の回想から始まります。その出来事、実際兄は弟に呼び出され訳もわからず同行して弟がすることを呆然とみている傍観者の役割をふられるのですが、その語り口に兄弟の仲の良さ、兄の弟への心酔振りが垣間見えます。 (そしてこの傍観者である兄が弟 春にとってどれほどの意味をもつのか物語の最後に語られます。) しかしこの兄弟が兄弟として生まれ落ちたことには陰惨な過去があり二人とも心に瑕を持っていることが明かされます。その瑕の痛みは矛盾をはらむものでありながら、兄弟両親との揺るぎない愛情あふれる絆に決してむかうものでないことが、挿入されるエピソードの数々に描写され鼻の奥が何度もツ~ンと熱くなりました。この家族の描写がシンプルでなにげなく、でも嘘くさくなくて思わずうなってしまいます。 弟の言葉から頻発する街の落書き(グラフィティアート)と自分の仕事場も標的とされて連続放火事件の関連性に興味をだき兄は謎解きを始めていくなかラッシュライフで登場したお気に入りキャラの黒澤氏やハンサムで魅力的な春を追いかける年期の入った女性ストーカーも登場したりとにぎやかに物語がすすんでページを繰る手がとまりません。 放火事件の真相、物語の結末は倫理的にはあってはならないことでしょうが 実にすかっとした晴れわたす青空を見上げるような気分になります。 「小説の中の物語であってよかった」としみじみと思いました。 ヤ~ これから当然他の伊坂作品も(貧乏だから文庫)手に取っていく自分の姿が浮かびますが、あとがき読むと文庫化する時に改稿してあるって そっそれって高村薫作品ばりの改稿でしょうか~ と青ざめました まずは文庫を買い求め あきたらなかったら図書館に頼りましょう お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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