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カテゴリ:本の感想 作家別-あ行
コンビニ強盗に失敗し逃走していた伊藤は、気付くと見知らぬ島にいた。江戸以来外界から遮断されている“荻島”には、妙な人間ばかりが住んでいた。嘘しか言わない画家、「島の法律として」殺人を許された男、人語を操り「未来が見える」カカシ。次の日カカシが殺される。無残にもバラバラにされ、頭を持ち去られて。未来を見通せるはずのカカシは、なぜ自分の死を阻止出来なかったのか?卓越したイメージ喚起力、洒脱な会話、気の利いた警句、 抑えようのない才気がほとばしる!第五回新潮ミステリー倶楽部賞を受賞した伝説のデビュー作、待望の文庫化。 37冊目 伊坂幸太郎デビュー作ですね。読み終わった後、 一人怪しく「ふっふっ これで別の伊坂作品読んだ時に”神様のレシピ”やら "コンビニ強盗”、”島” その他もろもろの言葉に一段とにんまりできるのね~」 とほくそ笑みました。 人生をリセットしたいとコンビニ強盗をして捕まりパトカーから逃げだした主人公は 江戸以来外界から遮断されてきたという見知らぬ島に連れてこられます。 外界から遮断されたというわりには 日本の田舎の町並みとそれほど変わらない様子ですが 住民は妙な人たちばかり、そしてきわめつけは”しゃべるかかし”の「優午」、 彼は未来を予知する事ができながら ある日なにものかに殺されてしまう。 主人公の伊藤は生前(?)の優午との言葉をてがかりにその真相を追っていきますが ラッシュライフから伊坂作品を読み出した私には最初、このファンタジーものの ようで淡々とすすむ話のペースが苦手な気がして「こっちを先に読んでいたら 伊坂作品は)これっきりだったかも」と思いました。 それでも交互に挿入される 伊藤の祖母との思い出や、島での出来事、 島が外界と遮断される前の物語、伊藤の住んでいた町に残された人々の話などが 布を織るがごとくからみあって結末という作品に織りあがっていく構成力には舌をまきます。 オーデュポンが人名なのにも驚きました。じゃなんだとおもっていたの?と質問されると 「FFの召還獣じゃなかったっけ(違った)」と我ながらなんにも分かってなかったのですが 画家で鳥類学者 そしてあの”リョコウバト”のおはなしが延々でてきます。 リョコウバト とは鳥類史上最多の生息数でありながら乱獲にあって絶滅した鳥で この話題には個人的ににんまり 英語のリーダーで教材に載ってた程度の知識しかないんですが こんな題材までミステリー素材になるんだ~とため息 ばらばらのできごとが綿密に練られ積み重なっていく過程がわかってくるともう 読むのをやめられません。優午がなぜ死ななければならなかったか、 そして島に欠けていたものが島にもたらされる瞬間 静かでありながらなんとも心地よいカタルシスを感じます。 実際読み終わったのは8月で感想書くにも思い出すのに苦労しているのですが 物語すべてが運命とでもいいたくなるように組み立てられている一方で ”神様のレシピ”という言葉が 運命の押しつけで行動をおこしているのではなく 人の生き方で結果がうまれているという なにかしら心にほんわりと暖かいエネルギーが湧いてくるような気がします。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2007.09.23 16:54:08
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