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カテゴリ:本の感想 作家別-あ行
老練な女用心棒バルサは、新ヨゴ皇国の二ノ妃から皇子チャグムを託される。精霊の卵を 宿した息子を疎み、父帝が差し向けてくる刺客や、異界の魔物から幼いチャグムを守るため バルサは身体を張って戦い続ける。建国神話の秘密、先住民の伝承など文化人類学者らしい 緻密な世界構築が評判を呼び、数多くの受賞歴を誇るロングセラーがついに文庫化。 痛快で新しい冒険シリーズが今始まる。 45册目 作者上橋奈緒子氏の名前を初めて耳にしたのは王様のブランチで”獣の奏者”についての 特集があった時でした。アジア色をそなえたファンタジーで児童文学、にも関わらず 彼女の作品シリーズは老若問わずの人気作品だと。 その矢先にBSで精霊シリーズの第一作が4月からのアニメ化に先立っての特集番組が 組まれていたのを観ました。 放映前の特番や放映途中でアニメ夜話に取り上げるなど期待、注目度一杯のアニメ作品 でしたが、その前評判の高さに劣らない良質で素晴らしい作品でした。 児童文学として出版されていた原作もアニメ化に連動してか4月には 大人向けに文庫化され、シリーズとして続編も刊行されていく予ようです。 実はもう文庫出版された時点で購入していたのですが、特番でアニメの方は原作に 肉付けして(7話分くらい)オリジナル脚本になると知っていたのと、 毎回の作画・背景・脚本etcは もう 「制作費ってどうなっているの」 とよけいな心配してしまうほどの素晴らしい質であまりの感動に2~3週分録画をためて まとめて観ていたので、もうアニメの最終話をみるまで原作には手をつけまいと私の得意の積読(つんどく)をしていた次第。アニメ放映も終わりやっとこさ原作に手をつけました。 原作を読む前は通常小説をアニメ化する時は文庫一冊に対して30分作品で 3話よくて4話しかあてない昨今、 26話で製作 しかも毎回感動して目頭熱くしていたので、 原作を十二分に消化してるんじゃなかろうかと思っていましたが、 杞憂というかとんでもなく浅はかでした。 アニメでは人物のエピソードが増やされ、帝側(追跡する側)の王子への想いが 強調されていましたが、原作では建国にまつわる逸話がどのように歪曲され 伝説化されていくのかといった点がじっくり描かれていたような気がします。 現実においても戦争後に勝者の主張が正義とされていくのが常ですが、 敗者側も自分たちの望むままに伝説を生み出していくという多面的な視野は とても新鮮でした。 そして話の展開が実におもしろい。 男じゃなくて女用心棒バルサが、姫君ではなくて王子のチャグムを、 悪人の手から救い出すのではなく、連れて追っ手からの逃避行をする。 私の子供時代には絶対お目にかかれない物語。 その逃避行もただ、逃げ廻るのではなくともに生活する中でお互いに 人間的な成長や自分自身と向き合う時をもっていく。 まさしく「読み出したら止められない。 読んでいたら鼻の奥がツンとならずにはいられない」作品でした。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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