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カテゴリ:本の感想 作家別-あ行
鬼才・村山聖、29年の魂の軌跡! 難病と闘い、死を見つめ、名人の夢ひとすじに生きぬいた。家族の絆、友情、そして心にしみる師弟愛──。 村山は幼くしてネフローゼを患いその宿命ともいえる疾患とともに成長し、熾烈で純粋な人生をまっとうした。彼の29年は病気との闘いの29年間でもあった。(中略)少年は限りない夢を思い描き、青空を自由にそして闊達に飛び回った。その空ははるかな名人につづいている空だった。その空を飛ぶために、少年はありとあらゆる努力をし全精力を傾け、類まれな集中力と強い意志ではばたきつづけた。夢がかなう、もう一歩のところに村山はいた。果てしない競争と淘汰を勝ち抜き、村山は名人への扉の前に立っていた。──プロローグより 将棋どころか、先々に一手を読むというゲームがからっきし だめで、指したこともないのに手に取った作品。 村山聖 ”東の羽生、西の村山”と並び称された棋士 いかんせん将棋に興味がなく 将棋を指されている頃の 姿、名前は知らなかったのですが 2000年発表の コミック 山本おさむ著 ”聖―天才・羽生が恐れた男” 聖―天才・羽生が恐れた男 全9巻(ビッグコミックス) を読んでいて そのすさまじく鮮烈な将棋に賭けた生には 目を見張っていました。 このコミックは村山氏の師匠森信雄氏の監修によるものです。 本著は元将棋雑誌の編集長であった大崎善生氏著 当然 将棋のことを知るのは当たり前、 将棋を知らぬ者がはたして話についていけるのかという 心配は杞憂でした。 村山氏の生い立ち、幼少時から余儀なくされた闘病生活、 その最中 実に幼くして見つけた 将棋への希望、闘志、尋常ならざる集中力 そして夢の実現にむけて 病む体をまさしく引き摺りながら 親元を離れ 師匠森氏と二人三脚で 駆け上がって行くプロへの道のり 「名人位」への渇望 これってノンフィクション? と疑問があがるほどに ぐいぐいと読ませます。 人というものは ここまで一つのことに対して 真摯に苛烈にまさしく命を削りながら 自分の望みに向かって進んで行けるものなのか それは間違いなく苦行でありながら 同時に得難い喜び、生きている実感 そして、喜びを得た次の瞬間に感じる 損失、失望感、次なる一歩への執念と あせり 生きているからこその それぞれを (しかしそれは一方で容易に逃げ出せるものを) あますことなく病魔にあえぐ体で 将棋を指すその姿に 家族、師匠、棋士仲間との触れ合いの中に 軌跡を残していることが伝わってきます。 彼は”将棋の神”に愛されたのか? 答えは明白です。 将棋をなんにも知らない私でも 本著巻末に掲載されている棋譜を眺めていたのですから 今回は図書館から借りた単行本でしたが 文庫版にはお父様の寄稿文が収録されて いるそうです。 買おうかな? お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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