カテゴリ:工事契約
工事契約の解約についての専門誌の記事をご紹介しています。
工事契約やっぱりヤメタ その時の違約金は? A社の解約トラブル その経緯 約款とは さて A社が適格消費者団体から申し入れを受けた契約書(約款)の是正内容とはどんなものだったのかを見る前に 工務店P社の例を示し、約款とは何かというところから書いてみます。 住宅などの工事契約書というのは、 ・ 工事契約書 ・ 約款 ・ 工事見積書一式 ・ 設計図書一式 ・ 場合によっては質疑書(工務店から建築士への質問書とその回答) などで構成されます。 契約の内容をはっきりさせるために、契約書以外の書類や図面を添付します。 例えば設計図書一式は、契約の内容を具体的に図面で表したものになります。契約をした双方は、この図面通りに建物を建てることを合意することになります。 また見積書は、設計図書に記載された材料の数量や金額が記されたもので、同じく契約の内容を補足するものとなります。 約款は、契約する内容の中で、図面や見積書に出てこない内容、例えば解約をする時の条件や、変更するときの手続き方法、著作権などについて文章で書かれています。 これらを契約書と一緒に綴じて、双方が記名捺印したものが契約書となります。 工事契約書の約款は、住宅くらいの規模の場合 多くが「民間(旧四会)連合協定工事請負契約約款」を使用しています。 普通は「四会連合の約款」などと呼びますが、これは過去建築主要四団体によって制定されたことによる呼び名で、現在は以下の7団体による監修となって販売されています。 一般社団法人 日本建築学会 一般社団法人 日本建築協会 公益社団法人 日本建築家協会 一般社団法人 全国建設業協会 一般社団法人 日本建設業連合会 公益社団法人 日本建築士会連合会 一般社団法人 日本建築士事務所協会連合会 ですから、この約款を使う以上は特に問題はないだろうと一般の工務店は思い込んでいます。 今回の日経ホームビルダーの記事では、この「標準」と思っていた約款でも、適格消費者団体は「問題点有り」と考えていることを示しています。 P社が受けた申し入れ内容 記事によると、瑕疵担保機関(不具合などを見つけた時にそれを訴えることが出来る期間)について、民法では「木造5年」としているところを、P社の約款では「1年間ないしは2年間」としていたことが問題になったようです。 ただし これはP社に悪意があってやったことでは無く、業界が標準と思って使っている約款がそうなっているからです。 平成23年5月の最新版の約款でも、この条文に変更はありません。つまりどの工務店もこの件について適格消費者団体から是正申し入れを受ける可能性があるわけです。 具体的に P社はどのように約款を改訂したのでしょうか。 2012年合意 2013年より使用 P社契約書約款 第15条(瑕疵担保責任等) 乙は甲に対し,本契約の目的物の瑕疵につき第13条の引渡しの日から木造の建物については、1年間、石造・金属造・コンクリート造およびこれらに類する建物、その他土地の工作物については2年間とする。ただし、その瑕疵が乙の故意または重大な過失によって生じたものであるときは1年を5年とし、2年を10年の責任を負うものとします。 →申し入れ理由 第15条1項は消費者契約法第10条により無効となるので削除を求めます。 →是正後 当該条項は削除する。 P社契約書約款 第18条(履行遅滞、遅延損害金) 乙が正当な理由なくして工事の完成並びに本契約の目的物の引渡しを遅滞したときは、甲は乙に対し、請負代金から出来形部分等および発注済の材料に対する請負代金相当額を控除した金額について日歩3銭の割合による遅延損害金を請求できるものとします。 →申し入れ理由 第18条1項は消費者契約法第10条により無効となるので削除を求めるとともに、乙が履行遅滞した際に甲に対して支払う遅延損害金について適正な条項を整備することを求めます。 →是正後 第20条(履行遅滞、遅延損害金) 乙の責に帰すべき理由により、契約期間内に契約の目的物を引き渡すことができないときは、特約のない限り、甲は、請負代金に対し年6分の割合による遅延損害金を請求することができる。但し甲はその他遅延による特別必要とした仮住居費用等や収益を目的とする建築物については、その損失違約金を加えて別途請求できる。 P社契約書約款 第19条(甲の解除権等)※甲は施主(消費者)を示します。 (1)第5条の着工日前において、甲が本項に基づいて本契約を解除した場合には、甲は乙が既に支出した費用を負担するとともに、乙に対し違約金として請負代金の20%を支払うものとします。 →申し入れ理由 第19条1項(1)は消費者契約法第9条1号により無効となるので削除を求めます。 →是正後 第21条(甲の解除権等) (1)第5条の着工日以降において、甲が本項に基づいて本契約を解除した場合には、甲は乙に対して本契約の出来形部分等および発注済材料に対する請負代金を負担するものとします。 (消費者機構日本のウェブサイトより転載) 施主の都合による工事契約の解除で、施主が工務店に支払う金額は、「一律○○円」ではダメで、出来高に応じた金額を払えば宜しい、ということだそうです。 誤解の無いように付け加えておきますが、民法の瑕疵担保期間である「10年間」については、契約者双方の合意が有れば「短縮」出来ます。 10年が 1年 と記載されていても、良いのですが、「説明」が無ければ消費者に不当に不利益を強いたことになりかねない ということだそうで、四会連合の約款をそのまま使うのであれば、その「説明」と「合意」が必要である、というのが適格消費者団体の考えのようです。 業界が契約ではなく「信用」で商売してきたから、と善意で解釈することはできますが、そこに付け込んで悪意のある商売をする人たちが多いのも、また建設業界である、ということを業界は自覚すべきでしょうね。 加藤一高建築設計事務所 http://kato-kazutaka.com/ (FB) https://www.facebook.com/kato.kazutaka.nagoya.japan 丹羽かずたか (FB) https://www.facebook.com/profile.php?id=100004948120484 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
最終更新日
2015年01月25日 22時55分52秒
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