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カテゴリ:【小説】不動明王
“事件は終わっただろうに”
まだ見える不気味なものにスガーミンは心で言った その時栞の携帯が鳴った 「おっ、真紀ちゃんからや」 星だらけの携帯をとって栞は話し始めた 「ええねん、ええねん・・・うん・・・うん・・・うちらの不動明王が解決したから 今回が最後やで。また学校でな」 栞が携帯を切った時、急に部屋の雰囲気が明るくなった それまでじめじめしていたのが、クーラーを強くしたわけでもないのに乾燥し 菅谷のぼんやりしていた頭を軽くした 「彼女、何だって」 栞に菅谷は聞いた 「ありがとう、だって。おかあはんとお金が来たって。よく分かんないけど喜んでいた」 “ありがとう” その言葉とともに、ここにいた連中もどっか上に行ったんだろうな、菅谷はそう思った 「鉄、竜、本気で呑むぞ」 ぶん殴る相手が居なかったな 思い切り腕を奮わせる相手が居なかった このストレスは・・・酒に限る 右へ回ればラブホ街。すでにそこは愛を確かめ合うところではないようだ 菅谷の目には、沢山のこの世に生を受けなかった子供が見える 子供の想いなのだろうがな。いや、女の潜在意識の後悔の念か。それならまだ救われる 捨てられた男女の怨念、札束を数えている腕だけの影、自殺した奴もいる 確かにこの小さな田舎町は吹き溜まりみたいなもんだ 社会も不安定なこのご時勢じゃ何も信じられなくて 無理やりでも自分の欲望を正当化して刹那の享楽に溺れるなら 自分より弱い者を餌にするのが一番手っ取り早い だが汚すぎるぜえ 自分より若い女を、自分の娘を享楽の相手にできるのか こうなりゃ子どもをこの街から全員避難させなきゃなんねえよ しかも・・・ 菅谷が動かなければ解決できなかったことである。これは法の及ばないところで行われていた 法が追いつくかず単なる「地域の特性」が表層化されたものなのである この街のひとつの顔なのだ。皆が日常のように許していた事なのだから 法が適用されない、法の適用外とはそういうものなのだ そして法の適用外には、極道と外道がはっきり分かれている 呑み過ぎた菅谷はすまんすまんと呟きながら繁華街を歩いた 少しだけ繁華街に立ち込めていた薄靄が晴れたようだった 「成仏してくれやあ」 酔ってふらついている菅谷の目からは涙が止むことなく流れていた これは吐き気からくる涙なのだ 菅谷はそう皆に説明していたし、皆もそう思ってやることにした 「おっちゃん、もう帰るで。おばちゃんも心配してるがな それとこれ、キャベジンや」 俺の救いがやってきた、菅谷はそう思った(了) お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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