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カテゴリ:本
高校2年の時、変わった風貌のIという先生が赴任してきた。 何がどう変かと言うと・・・ てかてかポマードのリーゼント頭にサングラス! お前は『ダウンタウンブギウギバンド』か?って こんな“なり”で、某大学の哲学科出身の社会科教師!! 私もかなり尖がった?高校生だったので、 I先生とぶつかる、ぶつかる。 ところが、さんざんやり合った(何をやりあったかは内緒♪)あげく、 一学期の終わりに私が起こしたある事件(その事件も内緒♪、これには時効がない) をきっかけに仲良しになった。 (チープな青春ドラマみたいだな♪) それからは、I先生の下宿に遊びに行き、 深夜まで語り合うようになった。 ある時、I先生が言った。 「“中庸”という言葉を知っとるか?」 「はい、でもそうゆう中途半端は嫌いです」 「そうか、では“無為自然”は分かるか?」 「ム、ムイシゼン?それはバームクーヘンの一種ですか?」 「阿呆、『老子』だ、ロ・ウ・シ。 leleの行動はあまりにも極端で過激に過ぎる。 危なっかしくて見ちゃおれんのだ。 老子を読んで、“無為自然”を学びなさい。 でないと、身を滅ぼすぞ」 ところが、私の町の本屋にはそんなの置いてない。 “お取り寄せ”すると何日かかるか分からない。 たまたま本屋に同行していたN君が、 「次の日曜日に市内に行く用事があるから、買ってきてやるよ」 持つべきものは友人である。 翌週の月曜日に『老子』を手にした私は、むさぼるように読んだ。 難しい・・・でも、理解できないなりに何かを感じた。 少~しだけ“無為自然”が分かりかけてきた頃には、 I先生はもういなくなっていた。 その風貌ゆえに、他の教職員や父兄からバッシングがあり、 わずか一年で県北の過疎地の学校へ転勤することになったのだ。 それきり、I先生の消息は聞かない。 その時の『老子』は大切に保管してある。 この書物を通して、私は自身の内にある“熱い何か”と折り合いをつける術を学んだと思う。 もし、I先生との出会いがなかったら、『老子』を読んでいなかったら、 I先生の予言どおり、私はとっくに自らを破滅に追い込んでいたかも知れない。 無人島に持って行きたい一冊であり、 棺おけに入れてもらいたい一冊である。 久しぶりに、ページをめくってみた。 高校2年の秋の匂いがした。 October 6, 2009 21:02:45 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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