カテゴリ:●病院
太い注射器で肺から溜まった水を抜いた経験のある人は少ないと思う。
これは自分にとっても貴重な体験なので、どんなものか書いてみた。 肺の中にあれだけの量の水が溜まっていたのは驚きだったが、それよりも輪切り写真の自分の肺を見て「肺は厚みもけっこうあるものだな」と認識したのが勉強になった。だから、肺の中にあんなに水が溜まっていても「なるほどなあ」という感想。最初、肺を正面から撮ったレントゲン写真をモニターで見せてもらったが下半分が白くなっていて、水が溜まっていることは確認していた。その時、主治医は利尿剤(薬)で水を抜くことを薦めてくれたが、「もっと手っ取り早く、注射を刺して抜くことはできないんですか?」と提案したのは実は僕であった。主治医の答えは、「なるべく体を傷つけないように抜きたい」というものだった。それを聞いて、内科というものはそういうものなのかなあと思ったが、結局は太い注射器で水を抜くこととなった。 注射器を体のどこから刺して肺の水を抜くのか興味があったので、背中からとわかった時は、あの輪切り写真を頭に思い浮かべたのだった。水抜きはまさか病室でやるとは思っていなかった。つまりは、医師からしたら大したことではないようだ。ベットとセットになっているキャスター付の細長いテーブルに両腕を組み、そこにあごを乗せてリラックス体勢になると、主治医がベッドの上に乗って準備している。こちらは、その間、運ばれている医療器具を乗せたワゴンを観察すると、なんかいろいろと器具があり興味津々。ワゴンもスチール製といった感じで、医療器具との雰囲気がすごく良い。主治医の助手として看護師さんも二人、器具などを手渡す役で待機している。「じゃあ、麻酔注射いきます」と背中にプスリ。しばらくして、次は太い注射刺すからねと、グゥーと針が刺さってきて、この時は「うっ」という声を飲み込んだが体がビクッと反応した。刺してしまえばあとは、水を抜くだけなので痛くもない。看護師さんに「僕を実験台だと思って、勉強しておくといいよ」なんて冗談まで言える。マスクをしている看護師さんの目が笑っているので、「仕事で医療も関係してたんだよ」と言うと、「えっ、なんで?」と主治医が質問してきた。医療関係の組合や治験のパンフレットも作ったことがあることを話すと主治医が「なるほどね。そんな仕事までやってるんだ?」と水を抜きながら聞いてくるので、横須賀の某病院のパンフレットも僕がデザインしたんですと、ちょっと自慢。「あとで見ておこう」と主治医がうれしいことを言ってくれた。 獣医が象用に使うような太い注射器と抜いた水を溜めてある大きな容器を見ると、「おお!透明感のある黄色だ!」とこれまた発見。「タバコを吸っているので、真っ黒い水かと思っていた」と感想を言うと「肺の中はわからないけどね」と主治医。肺から抜いた水は、途中何度かサンプルを採る作業を見て、子供の頃、理科の実験が好きだった自分もやってみたいなあとうらやましい。水を抜き終わると、急に咳が出てきた。「抜いた時は咳が出るけど、おさまるから」と経験豊富による言葉に、さすがプロだと安心する。それにしても「先生、かわいいのをポケットに入れてるなあ」と主治医のポケットのゆるキャラのフィギュア付筆記用具を見ながらからかうと「癒しが必要なのよ」という答え。そう、主治医は女優の萬田久子をスリムにした感じの女医さんだったのです。女医さんと助手の看護師二人が、働くプロの女性といった感じの絵画を見ているようで、とても雰囲気が良い。それにしても若い看護師さんたちも、かわいいキャラのグッズが好きなようで、ほとんどの人が何かしら白衣に着けている。大変な仕事だからやっぱり「癒し」が必要なんだろうな。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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