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病棟には「特別療養環境室」簡単にいうと特別室というものがあって、その部屋は僕のいる病室の向かい側にあった。同室のTさんはすごく気になっていたらしい。入院のご案内パンフレットにも載っているが、室内レイアウト等の詳しい情報は書かれていない。特別室なんていうと、例えば品の良いおばあさまが入院していて息子、娘たちとお孫さんが大勢お見舞いに来るイメージと、悪さがバレてしまった政治家がたいした病気でもないのに隠れるために使っているといったイメージもある。部屋の大体の様子は、想像できるが実際に見ておいて損は無い。ということで、ある日、その特別室にいた人が退院した後、ドアが開いていたことがあった。すかさずTさんと目で合図して、その特別室なる部屋に忍び込むことにした。早くしないと清掃会社の人たちが来て、作業をし、ドアを閉めてしまうからだ。廊下に出ると看護師さんたちの姿も見えないので二人で忍び込む。部屋は南側で、広さは僕らがいる4人部屋と同じようだ。ドアの横には椅子と簡単な流しがあり、ここで家族などが花瓶に水を入れたり果物の皮をむくシーンを思い浮かべた。簡単なキッチンの奥にはソファ・セットが置かれていてリビング空間になっていた。ここでおばあさまを心配してお見舞いに来た家族の登場となる。「おばあさま、だいじょうぶ?」などと心配する孫のかわいい声まで聞こえてきそうだ。リビングの右にはベッドが置かれていて、僕らの4人部屋と同じテレビ付の背の高いキャビネットが傍に置いてあるが、違うのはその他にクローゼットが設置されていて、贅沢な雰囲気になっている。ここで品の良い白髪がきれいなおばあさまの登場となる。さらにベッドの足元の壁には洗面台があり、その横のドアを開けると浴室であった。おお!さすが特別室という感じである。あまり長くいてスタッフに見つかると、また怒られそうなので一通り調べた後は素早く自室へ退却した。
この後、Tさんが部屋に来た看護師さんに特別室のことを話すと。「入っちゃったんですか?」と、しかたがないなぁといった顔で言われたが、二人が忍び込んだことを楽しそうに話しているものだから、彼女も話しにのってくれて、料金などのことを説明してくれたのだった。開かずの扉の向こう側を見てしまった感じで、興奮気味の二人は清掃のおばちゃんが来た時も、忍び込んだことを得意げに話したのだった。特別室の清掃は、普段見かけない男5人くらいの業者が来て大掃除をして去っていくから、掃除のおばちゃんも入ることがないのだろう。僕ら庶民派4人部屋組としては、毎日ベッド回りを清掃してくれるおばちゃんに親しみ感謝を感じているから、おばちゃんが掃除中も毎日おしゃべりをしている。なんて言ってられるのは、循環器科フロアで僕らの部屋くらいなもので、他の病室の前には必ずポータブル・トイレが置かれていて、70~80代のご老人が入院していた。ある晩など、夜中にトイレから帰ってきてベッドの寝ころがったら、廊下からジャバジャバと水が垂れる音が聞こえてきて、しばらくして看護師さんの悲鳴が聞こえてきた。翌日そのことを看護師さんに話したら、想像したとおりご老人が廊下で小便をしてしまったらしい。そういったご老人の多いフロアなので、あまり世話のかからない僕らの部屋で、看護師さん、看護助手さん、清掃係さんがおしゃべりしてリラックスしていたのかもしれない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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