カテゴリ:●病院
最初に入院した内科病棟の点滴用スタンドは、キャスター付の脚が5本や6本に分かれたものであった。脚には色が塗装されていていて、脚が多いので手で握って移動する時も安定性がよかった。ところが循環器科病棟へ移ると、そのスタンドは数が少なく、十字型の脚のものを多く見かけるようになった。十字脚のものは、塗装はなくいかにもスチールといった感じで、こちらは安定が悪くてスタンドを引っ張りながらトイレに行こうとすると、倒れそうになることもあった。十字型のほうは、昔から使っている年代ものだと思っていた。ある日、庶民派4人部屋組のTさんが検査前に点滴をやることになり、その時に看護師さんが引っ張ってきたスタンドはポール部分が2カ所ひしゃげていて、ポールが高く伸びないものだった。その背の低いいびつな姿を見て「すごいスタンドだなあ^^;ボコボコじゃん」と僕が大笑いすると、「これしかなかったのよ」と看護師さんは点滴の用意を始めた。点滴に神経質になっているTさんの腕に針を刺し、背が低いスタンドに点滴袋を吊るした姿を見ると何か変で、Tさんも「これでは、低くすぎて立ち歩くこともできない^^;」と嫌な顔をしている。すると、看護師さんが「そうだ!」と思いついた感じで、短い点滴スタンドを脚からはずしてベットのフレームの穴に差し込んだ。「こっちのほうが少し高くなったかな^^」。このアイデアにも「トイレに行く時はスタンドを手に持っていかなきゃ」と僕はまた大笑い。当然、Tさんは納得いかない様子。看護師が去っていった後も、点滴のチューブを手に持って高くかかげたり、早く点滴液を落とそうと試している。点滴といえばTさんがこの病室に入院して2回目に点滴をした時、液が落ちないで止まってしまうという災難にあったから神経質になっていたのだ。この時は気の毒に思い、僕が看護師さんを呼びに行き調べてもらうと、Tさんの腕がプクーと膨れたりして、うまく血管に刺さっていないことが判明した。連日、点滴をする場合は4日間くらいは点滴針を刺したままなので、寝ている間でもズレてしまうことがあるのだろう。Tさんの点滴が始まってしばらくすると、「見つけたよ^^」と看護師さんが脚が多く安定したきれいなスタンドを持ってきてくれたのでした。
で、ここで謎が一つ残ったわけだが、なぜ、この循環器科の病棟には十字型の脚のスタンドが多いのかということ。その謎が解けたのはカテーテル治療の時だった。十字型の脚のスタンドは、車椅子に腰掛けた患者が点滴スタンドを持って移動する時に都合が良く作られていたのだった。車椅子で左右の足を乗せる部分の隙間に十字型の脚をはめて、顔の正面にスタンドを持つと移動時に安定感が出て、患者も安心、車椅子を押すほうも安心ということがわかったのだった。さらに、循環器科の患者は一泊コースのカテーテル検査の人が多い。検査室までは車椅子で移動するのでその十字型の脚を持つスタンドがたまっていき多かったのである。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[●病院] カテゴリの最新記事
|
|