カテゴリ:●病院
「夏」イコール「病院の怪談」というわけじゃないけれど、「おお!やっと来たか!」という期待を持たせてくれたことが一度だけあった。僕のような人間は、たとえオバケなるものを見てしまっても、疲れた脳の回路が混線して姿が見えるのだろうとか、そういった人間の脳の不思議の方向に興味がいってしまう。これは昔読んだブルーバックスの「怪談の科学」を読んだことが影響している。といってすべてが科学的に解明されるのも、イマイチつまらないというか浪漫がないので、子供の頃、近所に住んでいたAさんという除霊を行うおばちゃんのことも信じている。子供の頃から怖い話しは好きで、テレビでも昔は夏といえば怪談というのが風物詩であった。そんな子供も成長していくと、怖いという感情から不思議という疑問に焦点が移り、これまた興味を持つにはおもしろいジャンルとなった。以前、「病院の怪談」みたいな本を読んでいて、そういった現象もあるだろうなと知識として脳には蓄えてある。
さて、実際に自分が入院して間もない頃、夜中にトイレへ行った時の話である。時間にしたら、ちょうど夜中の2時頃で丑三つ時。普段は飲まない薬を何種類も飲まされていたので、利尿剤によって膀胱に尿が溜まっていたので夜中に目が覚めた。ベッドから起き上がると、目がチカチカしていて立ち上がるとちょっとフラフラしている。その時は顔もまだすさまじく浮腫んでいたので、横になって寝たため浮腫みが片寄り片目が開かない状態であった。病室を出て廊下に出ると廊下の照明が赤っぽく見えて、これは薬のせいなのだろうなと思った。フラフラしながらトイレに行き、医師から言われているように容器に尿を採り、それを自分の名前が書かれた大きな容器に溜めていく。棚の横には同じような容器が並べられていて、他人の容器に間違って入れたらヤバイなぁとしっかりと確認。トイレの洗面台で手を荒い、鏡を見ると、四谷怪談のお岩さんのように浮腫んで片目が細くなった自分の顔がちょっと変。それにまだ目がチカチカしていて、トイレ内も赤っぽい照明に照らされたように見える。部屋に戻ろうと廊下に出て、なんとなく後ろを振り返ったら、自分よりも背が高いひょろっとした男の姿が見えた。「ああ、自分と同じようにトイレに入っていたのかな…」と思い、挨拶しようと再び振り返ると姿はなかった。不思議と思ったが、「おお!もしかしたらこれが病院の怪談の正体かもしれない」と、しっかりとそのことは記憶したのだった。 特に霊感というものがない自分がそういったモノを見るというのは、始めての入院生活に本人はリフレッシュ気分でいるが心のどこか不安があったのだろうということが原因の一つ。二つ目は慣れない薬による幻影。三つ目は左右バランスが崩れた視界による錯覚。などが原因ではないかと自分なりに謎解きしたのだった。その日から、特に確かめたいわけではないが真夜中の2時になるとトイレに行くのが習慣となってしまった。病院は9時消灯と早いので、タイミング的にもちょうど尿が膀胱に溜まる時間だからだ。あの時、赤っぽく見えた照明も普通に見え、廊下は明るく、当然トイレも明るくきれいであった。そしてトイレの鏡に映る自分の変な顔も普通に戻ってきたのだった。 これには後日談があり、同じ内科病棟で隣の部屋へ移動することとなった。その病室で会った人が、あの時のひょろっとした男の姿そのもので、「なーんだ^^」というオチでした。ではなぜあの夜、その人は急に現れ、消えてしまったように思えたのか?それはたぶん、僕がトイレを出た時に廊下の左右を確かめずに病室へ向かい人の気配がして振り返ってその姿を見て、再び振り返った時にはその人はトイレに入ったのだろうと今では考えている。それにトイレの重い扉は音をたてずにスムーズに閉めることができるのだった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
Aug 31, 2010 12:05:57 AM
コメント(0) | コメントを書く
[●病院] カテゴリの最新記事
|
|