カテゴリ:●デザイン
若き頃、銀座の伊東屋へ撮影のバックに使う和紙を買いに行った時にケースに飾ってあった紙人形に心を奪われた。それが入谷愛子さんの和紙を使った紙人形で、ケースに食らいついて夢中になった。和紙の質感に、これほどまで感動したのは初めてのことだった。折り目は柔らかく質量もある。片方の肩を下げる姿には色気があり、初めて見る和の世界だった。惚れてしまうと少しでもその魅力の秘密を知りたくなるもので、早速、「愛の彩 愛・紙人形 入谷愛子・師範作品集」という本を購入し研究した。「和」という日本のデザイン感は日本人でも改めて感動してしまうことが多くある。日本人なら当たり前のことだけれど、日本の歴史が好きだった。だから浪人時代から何十回も古都・京都ばかりに行っていた。きっとそれは「和」を発見し感動する刺激を求めていたのかもしれない。僕が住んでいる横須賀から車で30分走れば鎌倉に行けるが京都とはまったく違う。やはり京都の言葉に日本的なものを感じるからだろう。 昨夜、和裁士だった伯母の話しを母から聞いた。母とは10歳も離れている姉だ。すでに他界している。昔、伯母は鎌倉の鶴岡八幡宮の近くに住んでいて、そこで和裁を教えていた。母もそこに習いに行き和裁を教えてもらったらしい。だから妹の成人式の振袖は、母が仮縫いし、伯母が仕上げたという姉妹の合作。昨夜も伯母が「男仕立て」という、あぐらを組んで足の指まで使う和裁スタイルの話しが出てきた。伯母が修行時代に東京で師匠から伝授された技術らしい。先日、京都の和裁士あかねさんのブログで「男仕立て」のことを訊いてみたらご存知で、和裁の伝統の技は受け継がれているのだなと羨ましく思った。高校時代、建築科だった頃は日本建築の伝統的な様式や、複雑なほぞ組みなどの知恵や技術に感動した。授業では日本建築の製図の書き起こし、実習では墨つぼを使ったほぞ組み加工までやり、技のすばらしさを学び実感した。では、今の自分のようなGデザイナーの伝統の技ってナンだろう?アナログ時代は、筆やカラス口、ガラス棒を箸のように持ち溝引きによる直線、レタリングが書けて、カンプをうまく完成させるなど技術の部分が必要だったけれど、今はマウス片手にパソコンで最初から印刷データができてしまう時代。そういったGデザイナーならではの職人技が無くなってしまったのが寂しい。技術を要する手作りは、温もりがあって、その人の人柄まで感じることができるから好きだな。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
[●デザイン] カテゴリの最新記事
|
|