函館の旅(27):コースを間違え断崖を俯瞰する場に出た、我が山人生最悪の危機に遭遇
恵山から下山にかかる。 登りもさほどの急登はなかったので、火口原駐車場から先は大変だが、それまでは下山も大したことはない、と思った。ルートには鎖もロープも無いのだ。◎道を間違えた! 下山を始めてしばらくは、割と楽なコースを歩いた。登山路は、恵山の斜面を巻くようにつくられているので、時には太平洋岸(下の写真の上)を、また時には津軽海峡(下の写真の下)を遠望できる。その景観は、美しかった。 その油断が、災いした。 途中で、あれ、こんな道を来たっけ?、と思う難路になった。しかし踏み分け道は出来ている。 思えば、それに気づいた段階で引き返すべきだった。 気がつけば、断崖絶壁の前に来ていた。さすがに途中まで引き返した。しかし、いつまで行っても、正規ルートに出られない。 道に迷ったら、それこそ大変だ。◎足がかり、手がかりもない断崖絶壁の前に 戻って、断崖絶壁の前に立った。切り立つ崖で、上から覗き込む限り、足がかり、手がかりとなる岩の突起やくぼみは見られない。 下には猫の額ほどのテラスがあり、それまで5メートルはありそうだ。遠くに登りで見えたガンコウランの谷筋が見えた。その手前には、歩いてきた登山路があるはずだ。 覚悟を決めた。ともかくも崖を伝ってテラスに下りよう。 慎重に慎重を期した。何とか足がかりを探り、岩を握ってそこに体重を預け、少しでも下に下りる。最初はほとんど横歩きである。 もし体を預ける岩が崩れるか、足を踏み外したら、転落だ。死にはしないだろうが、大けがをしそうだ。へたをすると、骨折する。中低山の山登りを始めてから、我が山人生の最大の危機だ。 悪いことに、スマホは圏外だ。けがをして動けなくなっても、助けを呼べない。◎なんとか下りて崖を見返してゾッとして 僕は、日頃の不信心を捨て、神に祈りながら、横ばいしながらも少しずつ高度を下げた。 日頃、フィットネスクラブでマシーン相手に体を絞っていたのが幸いした。もしフィットネスクラブに通っていなければ、自分の体重を腕が支えられなかったと思う。 ようやく、あと1メートル弱というところまで来た。下にはガンコウランの群落が広がる。飛び降りても、クッションとして受け止めてくれるだろう。 そのとおりになった。ガンコウランの枝を傷めたが、幸いどこも痛くはなかった。 あらためて降りてきた崖を見返した(写真)。ゾッとする高さだ。よくもこんな所を下りてきた、と思った。◎火口原駐車場が分ける登山路の天国と地獄 しかし、下りたテラスからも、さらに行く手に急角度の岩の連なりが続く(写真)。それも、下りて行かなければならないが、あの崖に比べれば、ずっと楽だった。 10分以上は、この崖と岩場に悪戦苦闘していたのではないか。 それでも正規の登山路ルートに立てた時は、快哉を叫びたい気持ちだった。山行体験の最大の危機を脱したのだ。 火口原駐車場には、予想より時間がかかった。 ここから、再び登ってきた時の難儀なコンクリート舗装道路となる。それでもやはり登りよりは少しは楽だった。 何とか恵山登山口バス停にたどり着けた。バス停そばには、さすが道立自然公園である、山から下りてきた乗客が休めるようにベンチが設えられた小屋があり、時間直前までそこで休めたのはありがたかった。◎朝落としたストック、見つかる 函館駅に戻り、駅係員に朝、登山用ストックを落としたかもしれない、と申告した。 色と特徴を言うと、係員は奥にとって返し、すぐに紛れもない僕のストックを手にして戻ってきた。やはり、駅で走って、リュックから飛び出して落としたのだ。 山行に僕がずっと頼りにしていたストックだった。肝心の恵山には持参できなかったが、それでもすぐに見つかり、次に使える。ちゃんと保管してくれたJR北海道の係員に感謝した。(この項、続く)昨年の今日の日記:休載