政治、現代史、進化生物学、人類学・考古学、旅行、映画、メディアなどのブログ

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  ＮＴＴ株、政府が３分の１以上保有は今はナンセンス、完全民営化に向けた動きで買い場に

  ​　アメリカ国債のフィッチによる格下げの影響を受け、日本株式は週央から軟調に推移している。７月１日から株式を２５分割したＮＴＴもまた、一時の人気沸騰の後、冴えない展開になっている。先週末の終値は１５８．５円で、ずっと下げ基調となっている（図）。​　理由は需給悪化の懸念、である。​◎萩生田発言がきっかけ​　ちなみに２５分割の結果、ＮＴＴ株は１株１６０円近辺になった。単元株制のもとで１００株単位でないと売買できないが、それでも手数料無しだと１万６０００円近辺で買える。ネット証券なら、たいてい手数料は無料だから、サラリーパースンも小遣い程度で買える「お手頃」株だ。​　本来なら、人気が沸いてもおかしくないのだが、低迷しているのは、自民党の萩生田政調会長（写真）の７月２５日の発言がきっかけだった。党の会合で、財源確保策として、ＮＴＴ株の政府保有義務をやめ、保有株を売却し、完全民営化を目指すという構想を披露したのだ。​◎政府の３分の１以上保有は今はナンセンス​　ＮＴＴ法は、政府が同社の発行済み株式の３分の１以上保有することを定めている。　保有義務は、通信という基幹中の基幹産業を民営化して外国人に買い占められ、乗っ取られないようにという国家安全保障上の配慮があったものと見られる。　しかし、当時は通信はＮＴＴの独占事業だったが、民営化と共に、通信の民間参入が認められ、今ではＫＤＤＩ、ソフトバンク、さらには楽天も参入した。ＮＴＴの外国支配の懸念は、無意味になった。　だから３分の１以上の政府保有の義務は、今ではナンセンスである。むしろＮＴＴにしてみれば、経営の自由度を縛られる３分の１以上の政府保有は窮屈に感じているだろう。重要なことは、その都度、総務省におうかがいをたてなければならないのだ。​◎ＧＡＦＡＭの一角になり得ていたかも​　だから完全民営化は、その縛りを解くことになり、ＮＴＴにも同社への投資家も歓迎すべき転機になり得る。　思えばＮＴＴが民営化された直後から数年は、株式市場はＮＴＴフィーバーで湧いた。ＮＴＴの時価総額も、世界でトップクラスに位置した。　もし経営の自由度を得ていたら、高株価を巧みに利用し、世界の有望なＩＴ関連株を買収し、巨大なＩＴ企業に生まれ変わっていたはずだ。　民営化当時、現在、アメリカ株式市場を席巻するＧＡＦＡＭ（「G＝Google」、「A＝Amazon」、「F＝Facebook（現Meta）」、「A＝Apple」、「M＝Microsoft」）は存在しないか、まだ小さかった。​◎今こそ買い場、買い出動へ​　もし１９８０年代にＮＴＴが完全民営化されていれば、お役所気質を一新させ、ＧＡＦＡＭの一角に名を連ねていた可能性さえあり得た。　いわばＮＴＴは政府に縛られて自由に飛び立てず、狭い日本国内の通信事業という土俵の中での勝負に制限されていたのだ。　その縛りを解く可能性のある萩生田政調会長の構想は、歓迎こそすれ、「売り」で反応するのは何とも解せない。　今は絶好の買い場かもしれない。今週から安く指し値し、買い出動することにしよう。​昨年の今日の日記：「エチオピア紀行（１６３）：塩砂漠の一角に塩湖を遠望」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202208060000/​

  2023.08.06

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  札幌の旅(15)：天狗山の展望台に到達、眼下の小樽市街と小樽港を一望、ややもやがかかり暑寒別岳などは見えず

  ​　小樽、天狗山登山で、ロープウエーの山頂駅に出た。◎天狗山山頂は森の中　ここからは、小樽市街と小樽港が一望のもとに眺められて眺望はいい。ただ、２年前と比べて薄くもやがかかっている。前回遠望できた暑寒別岳などの増毛連山は見えない（写真）。​​　ところで実は、ここが天狗山の山頂ではない。天狗山山頂までは、ここから森林浴コースという所を入って、緩やかな坂道を１０分ほど歩くのだが、「山頂」と言っても周りは樹林に囲まれて全く視界が開けない。２年前に、そこまで歩いて行って失望した経験がある（写真）。​​◎最も眺望の良い「小樽市重要眺望地点」​　だから今回は、そこまで行かなかった。​　標高差はさほどないので、最も眺望の良い第２展望台に来たことをもって天狗山登頂としたい（写真）。ここは１９９６年、「小樽市重要眺望地点」に指定されている。​　ただ山頂駅から、ほんの１００メートルほど歩くので、ロープウエーで登って来た客は、ほとんど来ない。もったいないことである。　時間は１０時だった。​◎いざ下山へ、怠けてロープウエーで​　北国だから木陰に入れば涼しいのだが、とてもロングラインコースを経て、地蔵コースを抜けて下りる気はしない。　怠けてロープウエーで下山することにした。　その後は、山頂駅のそばのバス停から小樽駅に戻り、さらに札幌に戻る。　次にどこに行くか、もう決めていた。（この項続く）​昨年の今日の日記：「世界のウクライナ系コミュニティー、アメリカ、そしてロシア侵略の今」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202208050000/​

  2023.08.05

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  札幌の旅(14)：小樽、天狗山登山で快適な森の中の地蔵コースと出会った極彩色の仏像群

  ​　小樽の天狗山の登山路、地蔵コースは、原始林と思われる森の中だ。所々、沢の水が流れ、しかも鬱蒼とした原始林に覆われ、涼しい（写真）。​◎涼しく快適な地蔵コース​　ただし立ち止まると、ブーンという、あの嫌な蚊の羽音を聞くことになる。　道はさほど険しくなく、直登コースの「ロングラインコース」のバイパスだ。涼しく、快適な山行だ。​　地蔵コースが天狗山への古くからの登山道だったことは、おそらく明治頃に設置されたと思われる朽ちたお地蔵さんの石像から分かる（写真）。ここもまた、藻岩山、円山、函館山、恵山のように、古くからお地蔵さんが奉納されていたのだ。「地蔵コース」は、そこからの命名だった。​◎所どころ倒木が道を塞ぐ​​　天狗山の地蔵コース登山道が、前記の登山道のお地蔵さんなどと違うのは、１時間ばかり登った所の森の中の平らな敷地が切り開かれて、極彩色に色塗りした大日如来像や愛染明王像などが設置されている（写真）。朽ちた古いお地蔵さんと、年代も意味も違うようだ。　ここに立てられているコース案内に、山頂まで１．３キロとある。​　歩きやすい地蔵コースで難儀なのは、所どころ、倒木が道を塞いでいることだ。​　そこを過ぎると、ロングラインコースとの合流点に至る。​◎合流点から山頂駅まではさほどでなかったのが幸い​　ここからが、辛い。地蔵コースと違って、直登なので、傾斜がきつく、何よりも日射を遮ってくれる樹林がない！　ただ幸いだったのは、坂の向こうに鉄塔が見えたことだ。その先がロープウエー山頂駅に違いない。　ここからロープウエー山頂駅まで、１５分ばかりだった。​　しかしここまで来ると、眼下に小樽市街と小樽港が見える（写真）。​​　けっこうバテて、山頂駅に着いた。その手前に、昨年登た丸山（塩谷丸山）へ行くコース案内があった（写真）。尾根伝いに行くので、体力的にはちょっと難しい。​　展望は、晴れているので、素晴らしかった。（この項続く）昨年の今日の日記：「エチオピア紀行（１６２）：自然が彩色した極彩色の景観にただ感銘」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202208040000/​

  2023.08.04

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  札幌の旅(13)：小樽、天狗山登頂記、登山道の地蔵コースを選ぶ

  　札幌の旅３日目の７月５日、目覚めれば晴れ、である。この旅は、好天に恵まれている。　この日は、２年前にロープウエーで登った小樽の天狗山を目指すことにした。​◎朝のラッシュ時だったので満員​　また天狗山に行こうとしているのは、２年前は脚を少しばかり怪我していたため、この時はロープウエーで登下山したからだ。今度は、脚で登ると決めていた。　勝手は知っている。小樽まで行き、駅前の中央バスの路線別バス停から天狗山ロープウエー線で終点まで乗ればよい。　熱くならないうちにと、朝の７時すぎにホテルを出発した。しかしその時間帯は、早い通勤・通学時間帯であった。　まずＪＲの小樽行きに乗ったが、適切な乗車口に並び損ね、立って行く羽目になった。　しかし幸いにも、手前の手稲で、高校生の集団（たぶん道立札幌手稲高校）が降り、その女生徒の座っていた座席に座れた。立ちん坊だったら、天狗山に登るのに難儀したことだろう。​◎小樽駅からのバスも高校生でいっぱい​　小樽駅で降りると、ここでも高校生の一団の長蛇の列だった。幸いにも無事に乗れ、しかも座れた（ただ途中で病院に行くらしい脚の不自由そうな老人女性が乗ってきたから、座席を譲った）。　この一団の生徒は、終点に近い小樽未来創造高校前というバス停で一斉に降りた。　終点は、この２つ先だった。　降りたのは、ロープウエーの売店で働いているような感じの女性と僕だけだった。​◎木の無い直登の坂​　ちょうど９時頃だ。​　ロープウエーの駅前で、登山靴に履き替えた。標高は５３２メートルあるから、たぶん標高差は４００メートルはある。スニーカーでは無理、と見定めた。この判断は、正しく、けっこうな急登もあったし、難路もあった（写真＝スタート地点。山の上に、お土産屋やレストランなどの施設が見える）。　まずは標識に従い、ロープウエーの走る坂から直角に進むと、すぐに登山口という標識があった。​　これが木が切り倒された直登の坂だ（写真＝しばらくは木のない坂）。頭上から、朝の太陽が厳しい日光を照りつけてくる。こんな所を行けば、すぐにバテてしまう。​◎途中から森の中の「地蔵コース」に​​　天狗山には、途中で２通りのコースに別れる（写真）。木も全く無い、ひたすら登りの「ロングラインコース」と脇にそれて森の中に入っていく「地蔵コース」だ。冬はスキー場になるのだろう。​　僕は、途中で右に折れる地蔵コースに入っていくことにした。なぜこのコースが「地蔵コース」と呼ばれるのか、じきに分かった。（この項続く）​昨年の今日の日記：「スターリニスト中国の若者、学生の激しい就職難、それでもデモ１つすら起こらない専制国家の怪」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202208030000/​

  2023.08.03

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  仙台、泉ヶ岳を目指して（下）：巨岩が立ちふさがり、胎内くぐりまで行き着けずに撤退の無念

  　仙台近郊・泉ヶ岳山頂を目指す。薬師水を通り過ぎると、次第に坂が急になり、さらに進むと道に大きな石ころがゴロゴロして、巨岩も現れるようになった。◎表コースでは誰にも会わず​　ここからは、岩を相手に登ることになる。時計を見ると、１２時半を過ぎていた。登山口からまだ１時間もたっていない。　それにしても、平日のせいか、登りも下りも誰とも会わない。それとも、３５℃にもなりそうな猛暑なので、敬遠しているのか。　座るのに適した岩を見つけ、そこで腰を下ろして、昼食にした。　一休みして、登山を再開した。しかし岩はますます多くなり、坂の角度も増す。登山ガイドによると、巨岩が小さな隙間を残して道を塞ぎ、登山者はそこを通り抜ける「胎内くぐり」という所があるらしいが、そこから先にはさらに鎖場を含めた急登があるようだ。​◎暑さに撤退決める​　どこまで行けるか、と思いながらも、先に進む。しかし当然ながら、岩場は途切れない。​​　木の間隠れに下界が見えた（下の写真の上）。そして目の前に急登の道と岩（下の写真の下）。​　表コース登山口を見つけられず、コンクリート道を無駄に歩いたツケが現れてきた。　無理をできない。まだ樹林帯の中で直射日光の照りつけを免れていても、山頂まで上がれない恐れがある。そうなったら、引き返すのも困難になる。　僕は、撤退を決めた。​◎ヤマユリの強い芳香​　軽登山を始めて途中撤退は初めてだ。　元の「泉ヶ岳表コース入山口」の看板が出ているところまでは、すぐだった。　それからは、例のコンクリート道を歩く。右側、つまり山側に沿って下山すると、あちこちに泉から流れ出てきたと思われる水流が見られた。入山口にほど近い沢には、樋も２つ備わっていて、そこから水が流れている。触れてみると、冷たい。　そばにコップが無いので、飲めるかどうか分からないので、飲むのはやめたが、樋から流れ落ちる水で顔を洗った。冷たくて気持ちよかった。​　自然ふれあい館バス停までの道は、途中で気づかなかった様々な花に出合った。時折、強い芳香に気づくと、ヤマユリが咲いていたりする（写真）。​​◎クサギという芳香の花も​​　また別の、ジャスミンに似た強い芳香がする。見ると、白い花が満開の木だ。調べると「クサギ」というらしい（写真）。漢字で書くと「臭木」と言うらしいが、それとはおよそ縁遠い芳香だ。​　さらに名は分からないが、満開の真っ赤な花をつけた木も（写真）、疲れた体に癒やしを与えてくれる。​　こうした山の花に出会えただけでも、泉ヶ岳に来た甲斐があった。　山頂からの絶景という苦しい登山にとって最高の報酬は得られなかったが、こうした花に出会えたのは幸運だった。　ただし、自然ふれあい館バス停に戻り、その間、バスを待つ間、付近をウロチョロしている時にストックをどこかに忘れてきてしまったのは大いなる失策だった。これまで２度、なくしたが、そのつど回収できたけれど、今回の亡失に気がついたのは仙台のホテルにチェックインして、部屋でほっと一息ついた時だったから、もう諦めるしかない。昨年の今日の日記：「香港で投機筋との間に激しい通貨戦争、帰趨は？」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202208020000/​

  2023.08.02

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  スターリニスト中国の外相・秦剛の突然の解任の異形

  ​　スターリニスト中国の秦剛（写真）の外相解任は、西側報道機関と政府に、この国の異形ぶりをあらためて認識させた。解任の理由も、いまだに発表されていない。民主国家ではとうてい想定できない異様さである。​◎６月２５日以来、消息絶つ​　かつてスターリン時代のソ連では、政府と党の要人が突然失脚したことを、党機関紙の『プラウダ』や政府機関紙『イズベスチア』での序列の異動や言及されないことで知った。２１世紀の今日、世界経済大国２位で、国連安保理常任理事国の外相の、理由不明の突然の解任は、スターリン時代のソ連を思わせるようだ。　秦剛の身に重大な異変が生じたことを西側が察知したのは、今年６月２５日に北京でロシア高官らと会談して以降、ふっつりと動静が絶えたことだ。３週間以上もたった７月中旬、インドネシアで開催されたＡＳＥＡＮ関連会合いにも欠席し、代理として外交トップの当時前外相だった王毅が出席し、西側は一斉に注目した。この時、スターリニスト中国外務省の報道官１１日の定例記者会見で、秦剛の欠席について「身体的理由」とだけ明らかにしたが、その発表を公式サイトに掲載せず、国内の主要メディアも一切報じてなかった。​◎記者会見で秦剛関連の質問が続出​　その後、台湾の報道機関が香港テレビ局の女性ジャーナリストとのスキャンダルを報道、さらに別の台湾の大手紙が西側の一部に秦剛が駐米大使時代に機密を漏らした疑いがあると報道されるなど、「身体的理由」などではない、「他の何か」があって、失脚したことはほぼ確実になった。　そうした中、７月２５日になってやっと、全人代常務委が秦剛の外相解任を発表、後任に前外相で政治局員の王毅の復帰した。　１夜明けた２６日、外務省の定例記者会見では次々と秦剛の解任について質問が出た。３０近くあった質問のうち秦剛関連の質問は２０問を超えた。​　むろんスターリニスト中国が素直に答えるはずはない。その２０問超の質問に対し、副報道局長の毛寧（写真）は、すべて「提供できる情報はない」の一点張りで通した。​​◎ＮＨＫの海外放送ニュースもスターリニスト中国では遮断​　むろん質問した記者たちもバカではない。素直に答えるはずがないのは百も承知だが、それでも質問の矢を射かけ続ければ、ぽろりと本音の一部が出てくるのではないか、と考えたのだ。しかしさすが鉄の女のスターリニスト毛寧は、全く揺るがなかった。　スターリニスト中国が秦剛解任にナーバスになっているのは確かだ。外務省のホームページでトップ画面にあった秦剛関連の記載はすべて削除されている。　２５日の夜のＮＨＫ海外放送のニュース番組で、スターリニスト中国で秦剛解任の報道が流れると、１分半も放送を途切れさせた。この様子は、当のＮＨＫのニュース番組でも放送された。秦剛解任の報は、よほど国内でも知られたくないようだ。​◎異例のスピード出世の背後に習近平​　秦剛失脚の真の理由は、まだ分からない。　確実なのは、その失脚が習近平の意向であっただろうということだ。そもそも秦剛の出世も異例のスピードだった。昨年１２月末、５６歳で外相に就任したが、これは故周恩来に次ぐ若さだった。　そして３月には副首相級の国務委員も兼任した。　外相就任１年半前の２０２１年７月２８日には、世界１の超大国アメリカへの駐在大使に起用されている。　こうした異例の出世に、習近平の意向があったのは間違いない。　それだけに外務省内には、ジェラシーと反発が渦巻いていたことだろう。足を引っ張ろうとする輩は多かったに違いない。　たぶんそのうちの誰かか、駐米大使時代の不祥事を習近平にチクったに違いない。習近平のコネで異例の大出世したのだから、習近平の信任を失えば転落も早い。　外相就任たった半年で解任を命令できるのは、習近平しかいないのだ。　ただそれで、習近平もメンツに傷ついたのは間違いない。　げに恐ろしいのは、周囲のジェラシーというわけだ。​昨年の今日の日記：「高機動ロケット砲システム『ハイマース』などの活躍でヘルソン市孤立などロシア侵略軍の狂いっぱなしの侵略計画https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202208010000/​

  2023.08.01

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  仙台、泉ヶ岳を目指して（上）：かんかん照りの猛暑のコンクリート道を歩き、登山道入口を探しあぐねる

  　仙台郊外の泉ヶ岳（標高１１７５メートル）の登頂を目指した。翌日、仙台で知人の結婚式があったため、１日早く出て、仙台市民に愛されているという泉ヶ岳を登ろうと計画したのだ。​◎この日仙台は３５℃近くに​　７月２８日、早朝、自宅を立ち、東京駅から新幹線に乗って仙台に行き、そこから地下鉄に乗り換えて「泉中央」まで行き、バスで終点の泉岳自然ふれあい館に降りた。自宅を出発したのは６時ちょっと過ぎだったのに、自然ふれあい館バス停を降りた時は、もう１０時４０分になっていた。ここから歩いて、「表コース」の登山口を目指す。　ふだんならどうということもないだろうが、自然条件が悪すぎた。好天で、そのうえこの日の仙台の最高気温は３５℃に近く、郊外では３８℃近くになった所もある。自然ふれあい館バス停もかんかん照りで木陰もなく、１１時近くなっていたので、体感的には４０℃を超えていた。　しかも、ここからコンクリート道を歩く。ちょうど函館・恵山の道と同じだ。​◎かんかん照りのコンクリート道​​　バスもここまで来ないから、歩くしかない。遠くにパラグライダーの人が気持ちよさそうに飛行を楽しんでいる（写真）。この上に、パラグライダーの乗り場があるようだ。　照り返しがきつく、できるだけ木陰を拾って歩いたが、これでかなり体力を消耗した。　初めての道なので、これでいいのか確信が持てない。一切の案内表示が無いのだ。かれこれコンクリート道を４０分も歩き、しかも道は緩やかな下り坂に変わっていた。　これは、間違えたと思い、引き返した。道を尋ねたくても、民家もないし、徒歩通行人もいない。　もう仕方がない、と半ば諦めて、元のバス停への道を戻ろうと思い、１０分ばかり引き返した。​◎登山道入口は全く目立たず、初めての登山者は気がつかない​​　すると往路では気づかなかったが、最初は車の転回点と思った所が、１０台近く駐められる駐車場で、その奥まった所に「泉ヶ岳表コース入山口」と標識がある（写真）！​　これでは、初めての登山者が自然ふれあい館バス停から登って来た時に気がつかず見逃してしまう。仙台市民にはとうに分かっているのだろうが、他県から訪れる登山者にはかなり不親切だ。せめて道の左端の目立つ所に標識を立ててほしいと思った。　登山口から森の中に入ると、ヒンヤリと涼しい。しかし立ち止まれない。すぐにヤブ蚊が襲ってきた。真夏の山は、ある程度の標高に達するまで、ヤブ蚊の襲来に遭う。​　早足で登って行った。１０数分登ると、「薬師水」という標識と水の流れていない沢跡があった（写真）。​◎泉が豊かだったから「泉ヶ岳」と呼ばれた​　「泉ヶ岳」は、あちこちに泉が湧いていることから名付けられたという。薬師水も、泉として登山者ばかりか地元の人にありがたがられていたのだろう。しかし、このところの晴天続きで、泉も枯れたようだ。​　薬師水を過ぎると、やがて急登になってくる。登山道の石ころはやがて巨岩がゴロゴロあるような困難な道になる（写真）。​　登れるだろうか、と不安が兆してきた。​（この項、続く）昨年の今日の日記：「フローレ原人の倍ほどもあるフローレス島の絶滅巨大コウノトリは空を飛べた」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202207310000/​

  2023.07.31

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  昔の海を支配した体長１５メートル巨大ザメ「メガロドン」は、局所的内温動物で世界中の海に進出し繁栄できたが、脆かった

  ​　現在の海のギャングと言えば、映画『ジョーズ』の主人公であるホホジロザメである（写真）。肉食で獰猛で、出血した状態で海で出会ったら、血の臭いをかいであっという間に集まってきて、鋸のような鋭利な歯で食いちぎられる。​　そのホホジロザメでも体長が５メートルを超えるものはない。​◎モササウルス亡き後の海を支配したメガロドン​　しかし太古、アフリカでやっと早期ヒト族であるアウストラロピテクス属やアルディピテクス属が現れた頃に地球の海洋から姿を消したメガロドンは、もっと大きかった（はずである）。​　サメは軟骨魚類なので、骨が残らない。残るのは硬い歯とせいぜい椎骨だけだ。その歯で、大きめのお握りサイズの歯がメガロドンの唯一の痕跡とも言えるものだが（写真＝右はホホジロザメの歯）、それから推計した体長は最大で１５メートル、白亜紀末に恐竜と共に絶滅した海の帝王の「モササウルス」亡き後の海の支配者だった（モササウルスについては、２３年４月２３日付日記：「白亜紀末の海を支配した凶暴な肉食の王者モササウルスとは」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202304230000/を参照、またメガロドンについては、２０１２年３月２８日付日記：「海のＴレックス＝巨大ザメ『メガロドン』が生き残れなかったわけ（後）」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/201203280000/、及び２０１２年３月２７日付日記：「海のＴレックス＝巨大ザメ『メガロドン』が生き残れなかったわけ（前）」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/201203270000/を参照）。​◎歯の酸素同位体比を解析​　モササウルス絶滅後の世界の海を約２０００万年間にわたって支配したメガロドンは、３６０万年前頃に突如として姿を消した。　その理由は、今もはっきりしない。僕は、前期の日記で、肉食動物であるメガロドンは、とどのつまりは餌不足に陥り、絶滅したのではないか、と予想したが、２３年６月２６日付「アメリカ科学アカデミー紀要（ＰＮＡＳ）」に、アメリカ、ウィリアム・パターソン大学の生物学者マイケル・グリフィス博士らの研究チームが発表した論文で、最新の地球化学的分析結果を基に、競合種との生存競争に敗れるかなどして、餌不足で絶滅に至ったのではないか、と結論づけた。　研究チームは、メガロドンの歯の酸素同位体を分析した。歯には、メガロドンが生きた時代に食べた食物と飲んだ水から体内に吸収・蓄積された元素が反映される。その中の特に酸素同位体比から、その生物の体温を知ることができる。研究チームは、メガロドンだけでなく、比較のために他の古代ザメや現生種、メガロドンと同じ環境にいた海洋哺乳類や魚類の化石についても、こうした同位体の地球化学的痕跡を調べた。​◎高い体温で冷たい海にも進出​　その結果、メガロドンは、体の一部分だけ体温が高い「局所的内温動物」だったらしいことが分かった。一部でも体温が高ければその海生動物は、他の捕食者よりも速く泳げ、恒温動物であるクジラなどの哺乳類の獲物を追って、世界中に生息域を拡大できる。変温動物（外温動物）が入れない冷たい海にも入って行けるのだ。　研究チームは、その動物の暮らした海水温の推定値を出し、メガロドンやその他の動物の体温と比較した。するとメガロドンは現生の近縁種よりも体温がかなり高かったことが分かった。周囲の海水温と比較しても、７℃ほど高かった。ただし、古代のクジラやアザラシの仲間ほどではなかった。この体温の範囲からすると、メガロドンは全身が温かかったわけではなく、体の一部分だけ体温が高かった、と研究チームは推定した。​◎高速で泳ぎ、貪欲に捕食​　現生のサメの多くは、はっきりとした恒温動物でもなければ、変温動物でもない。オナガザメやアオザメ、ホホジロザメは全て、体の一部の体温が周囲の海水温よりも少しだけ高い。古生物学者たちは、メガロドンも似たような体質だったのではないかとみていた。　現生種でも、ホホジロザメなどは体で生成された熱で、筋肉、目、脳など高い体温を必要とする部分を温められる。メガロドンも、似たような機能を持っていた可能性がある。体温が高い魚は、環境によって体温が変化する魚よりも泳ぎが速く、獲物を求めて遠くまで泳ぐことができる。おそらくメガロドンは、広範囲に分布する強力で貪欲な捕食者だったのだろう。​◎局所的内温性で高カロリーのクジラやアザラシを捕食​　ところで海棲の脊椎動物は、体が極端に大きくなると、代謝が遅く、濾過摂でプランクトンなどを大量に摂取することで、巨大な体を維持している。例えばシロナガスクジラなどのヒゲクジラ類やジンベイザメなどだ。​　しかし、獲物を捕食するサメが、高温で大きな体を維持するためには、より活発に動く必要がある。祖先から局所的内温を受け継いだメガロドンが、脂肪分の多いクジラやアザラシをたくさん捕食できるようになったために（想像図）、これほどまでに大きくなったのでは、と古生物学者たちは考えている。​　だが高い体温を維持するには、高いコストがかかる。高カロリーの餌を大量に摂取し、頻繁に食べる必要がある。メガロドンが繁栄していた時代は、脂肪分が多く、カロリーの高いクジラやアザラシが豊富にいたために、メガロドンが食べ物に困ることはなかった。​◎海の環境変わり、競合種も現れて餌不足に​　ところがメガロドンの時代が終わりに近づく頃、海の環境は変わり、気候が変動した。すると、ヒゲクジラ類が食べる小さなエサが少なくなり、ヒゲクジラの数が減った。または、進化によって、体が小さいホホジロザメのようにメガロドンと競合するサメが出てきたため、十分な大きさのエサを見つけるのが困難になったのかもしれない。　巨大な体になりすぎた動物は、ヒゲクジラ類やジンベイザメのようにプランクトンを一挙に、大量に食べられる動物でない限り、わずかな海洋生物相の変化に脆い。餌の減少は、その一撃になった可能性が大きいだろう、と研究チームのグリフィス博士は語っている。​昨年の今日の日記：「株式投資の隠れた魅力、株主優待制度あれこれ」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202207300000/​

  2023.07.30

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  札幌の旅(12)：晩飯に食べたホッケとニシン、そして銀ザケの美味かったこと

  　札幌に行って、いつも楽しみにするのは、大きなホッケやサケの塩焼きだ。　ウニは、高級寿司店に行けば食べられるから、特に安くもない札幌の寿司屋では食べない。海鮮丼も捨てがたいが、今回の札幌では食べる機会がなかった。​◎札幌では脂ののったホッケが１３００円以上​　東京で、僕はホッケを食べない。それは、ホッケという魚の属性が関係している。　どういうことかと言うと、ホッケは高級魚ではない。だから一流和食レストランでは、そもそもメニューに無い。一般の居酒屋に行けば、置いてあることもあるが、値段を大衆向けに抑えるためか、小さくて脂ものっておらず、ケソケソ。つまり美味くない。​　だから、東京では食べないのだ。しかし北海道に来たら、一般の店でも、脂ののったホッケが食べられる。ただし値段は、１３００円を超す。僕の行った札幌都心の店では、一品料理としてはこれが一番高かった。その代わり、脂がのり、とても美味い（写真）。大きいから、これでかなりお腹も満たせる。　さらに超厚切りの銀ザケの塩焼き（写真）。これも、美味かった。​　もう至福の時だ。​◎大きなニシンの塩焼き​　この店には、翌日も行った。さすがにこの時は、別のメニューにした。​　東京ではめったに食べられないニシンの塩焼きだ（写真）。ニシンと言えば、小骨が多いが、注意深く食べれば、気にはならない。​　このニシンも大きく、しかも脂がのっている。　ニシンは、かつて昭和の初め頃までは、北海道の最大の漁獲量を誇った魚だった。　江戸時代には、出稼ぎの「ヤンシュウ」が、江差や積丹の網元屋敷に集まり、それこそザルで掬うように産卵のために浜辺に押し寄せてきたニシンを獲った。浜辺は、ニシンのオスの放精で白く濁った（こうしたニシンの大群の到来を「群来（くき）」と言った）。​◎開拓の村で観たニシン御殿​​　網元は、豪華なニシン御殿を建てた。例えば札幌郊外の「開拓の村」に行くと、「旧青山家漁家住宅」が復元されている（写真）。青山家は、小樽の祝津にあった三大網元の住居で、その広壮さには目を見張る。​　また最大の漁場の１つだった江差のニシン漁の繁栄ぶりを指して、「江差の春は江戸にもない」と言われた。江戸時代、ここで漁獲されたニシンは身欠きニシンという干物に加工して、北前船で関西に運ばれた。にしんそばは、当時の高級料理だった。　また小さい個体は、肥料にされた。ニシンの肥料は、とても貴重なものとして珍重された。　しかし乱獲と海流の変化で、北海道日本海岸から一時、ニシンは消えた。​◎復活しつつあるニシン​　それが１９８０年頃から、北海道の水産関係者の育苗放流の努力が実り、ニシンが戻ってくるようになった。時には、「群来」も見られる。　その大きなニシンの塩焼き。これは、ホッケよりも美味かった気がする。（この項続く）注　所用のため明日の日記は休載します。​昨年の今日の日記：「ワン株買付の手数料無料という魅力」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202207280000/​​昨年の明日の日記：「新規感染者世界１となった武漢炎パンデミック「ＢＡ．５」亜型第７波、ただこれまでとは違う現実」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202207290000/​

  2023.07.28

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  札幌の旅(11)：夕方の北海道庁の庭園の池でカルガモ夫婦を観る

  ​　北大植物園のバラ園に向かった（写真）。ただ、ここも咲いてはいるが、灌木園のように百花繚乱の趣とは遠かった。​◎百花繚乱を誇る民間パラ園などと違う​　ここで初めて僕は、そうか、ここは「植物園」なのだ、と思い知った。商業的なバラ園や花園が咲き誇る花の量感を誇示するのと違い、ここは生きた植物を展示する「博物館」なのだ。だから、一輪でも花が咲いていれば植物園の使命は果たしたことになる。　開花はしていたが、灌木園が１株ずつで量感に欠けたのも、仕方がないのだ。​　そう思い直して、カナディアンロックガーデンと高山植物園を回った。ここは、何度も訪れているので、開花した高山植物を２、３枚撮影しただけで（写真）、ほとんどスルーに近い。​​◎３０℃近くのはずなのに木陰では暑さ感じず​　２時間ほど滞在しただろうか。　まだ陽は高かったが、シャワーを浴びて一休みしたくて、北大植物園を出て、５分ほどかけてホテルに戻った。　北の街の夏は、湿度が低く、強い日射で、気温も３０℃近くに上がっているはずなのに、木陰に移ればほとんど暑さを感じない。この清涼さは、９年前の７月に行ったバルト３国の夏と似ている。　また札幌は、２００万都市なのに、主要施設は市街地に集中している。東京と違って、地下鉄で移動する必要性はほとんどない。疲れを厭わなければ、便利であることはこの上ない。​◎夕方の北海道庁の池を観る​　札幌の緯度は北緯４３度なので、夏はいつまでも陽が高い。５時を過ぎても、昼のようだ。僕は、ホテルを出て、食事に出た。　途中、北海道庁を通り抜けた。道庁も札幌市街地の４ブロックを占めていて広い。構内の東側は、地下水を湛水した広い池があり、ここは道庁職員だけでなく、観光客や市民の憩いの場となっている。　前にＮＨＫ－ＢＳで、北大の総合博物館前のローンに立つ大きなエルム（ハルニレ）の木の洞で子育てをするオシドリ母子の１年を追った番組を観たが（２０年９月１２日付日記：「北の２００万都市・札幌市街地の北大、道庁などで営巣・育雛するオシドリたち：ＮＨＫ－ＢＳ番組で観て」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202009120000/を参照）、道庁の池でも別のオシドリが子育てしていた。​◎オシドリ母子はおらず、カルガモの番だけ​​　そこで、オシドリ母子がいるかなと思って観たが、見当たらない。その代わり、子育てをしなかったのか、あるいは卒業したのか、カルガモの番（つがい）がいた（写真）。人を恐れない。​　ちなみに北大キャンパスには最終日に訪れたが、探したが、ここにもオシドリ母子は見当たらなかった。​（この項続く）昨年の今日の日記：「太陽の暗かった時代、なぜ初期地球は凍結からまぬがれた？　一酸化二窒素の温室効果」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202207270000/​

  2023.07.27

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  札幌の旅(10)：北大植物園の博物館に「無造作に置かれている」エゾオオカミと樺太犬タロの剥製

  　北大植物園の見学を続ける。　ただ午前中の藻岩山登山の疲れが、ここに来て顕著になった。​◎超貴重な絶滅動物エゾオオカミの剥製が無造作に​　園内に意外に少ないベンチに座った。南ローンを前にして、重要文化財群を遠望した。​　美しい緑のローンとマツ科の巨木、そして白いバチェラー記念館と博物館の景観は、見事だ。疲れを忘れる美しさの前に、しばし見とれる（写真）。​　ただ、その博物館に入ると、前回もそうだったが、興ざめする。展示が旧態依然で、何よりも展示標本がおよそ古い、見えにくいケースに納められているだけだ。「無造作に置かれている」という感じなのだ。今時、こんな自然史博物館は、どこにも無いのではないか。　例えば、今では超貴重品であるエゾオオカミの剥製標本だ。日本でエゾオオカミの剥製が残っているのは、この雌雄２体だけという。​◎エゾオオカミの剥製はここだけなのだが​　それなのに、博物館の狭い展示室に雑然と置かれたケースに、しかも来館者の目の下に置かれているだけだ。しかも展示ケースの縦と横の桟が観察に邪魔だ。こんな超貴重な標本なら、来館者が正面から観察できるように、展示ケースをもっと上に上げ、しかも桟無しの防弾ガラスケースで展示すべきだろう（写真）。　剥製は、手前のメスが１８８１（明治１４）年に札幌の現豊平区で、奥のオスは１８７９（明治１２）年に同現白石区で捕獲されたものだ。道内で、生息や捕獲の記録が残っているのは明治２０年代までなので、この雌雄２体は最後のエゾオオカミに属する。　この頃、北海道では広大な放牧地や農場で、ヒツジや乳牛を飼うようになっていたので、家畜を襲うオオカミは、駆除の対象となっていた。​​◎オオカミの生態系に占める意義が理解されずに絶滅まで放置​​　剥製がこの２体だけ、他に頭蓋が１体、残されているだけというから、生態系に占めるオオカミの意義が知られるずっと前に、害獣として駆除され、しかも生態系におけるオオカミの大切さが誰にも認知されずに、したがって保護されることもなく、個体数減少のままに放置され、明治２０年代末までに絶滅してしまったということだろう。　例えば本州のニホンオオカミもそうだが、エゾオオカミが現代まで生き延びていたら、エゾシカが増えすぎて農作物や森林の食害に悩まされずに済んだだろう。　なおエゾオオカミは、本州のニホンオオカミの別亜種だが、いずれも大陸のハイイロオオカミ（タイリクオオカミ）と同一種だ。​　僕は、２０１８年に南樺太に行った時、ユジノサハリンスクのサハリン州立郷土博物館で、精悍なタイリクオオカミの剥製標本を観た（写真）。樺太では、オオカミは北海道よりもう少し後の２０世紀初頭まで生き延びていたようだが、今では樺太全島で絶滅している（１８年７月２７日付日記：「樺太紀行（８）；雨の一日、郷土博物館の動物剥製は迫力；１世紀前、南樺太にもオオカミがいた」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/201807270000/を参照）。​◎南極の厳冬を生き延びた樺太犬タロの剥製も無造作に​　貴重な標本が展示と呼べないほど無造作に並べられているのは、他の標本でも同じだ。例えば、ここには樺太犬タロの剥製も展示されている。　タロとその兄弟のジロは、映画『南極物語』で日本中に感動を生んだ南極観測隊第一次越冬隊の犬橇用として南極大陸に連れて行かれた樺太犬だ。悪天候のために厳冬の南極大陸に放置されながらも、２頭は奇跡的に生き延びて、日本に連れ帰られた。　そのタロの標本が、目立たない形で、エゾオオカミの標本と同じように、放置されたように床に置かれて展示されている（写真）。撮影が下手なのは十分に承知しているが、日本列島に感動の渦を巻き起こしたあのタロが、こんな扱いであるのは悲しい。​◎道立北海道博物館か北大総合博物館に移すべき​　所管の問題だろうが、エゾオオカミも樺太犬タロも、道立北海道博物館に移して展示するのが最良だし、道立博物館に移管するのが難しいなら、展示方法がずっと洗練されている北海道大学総合博物館に移すべきではなかろうか。植物園だけに、哺乳動物が軽視されていると思いたくない。（この項続く）​昨年の今日の日記：「太陽電池パネルは今やスターリニスト中国の独占状況、日本初のペロブスカイト型太電池も」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202207260000/​

  2023.07.26

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  札幌の旅(９)：大都会高層建築の中の別世界、北大植物園の緑の中を歩く

  ​　北大植物園に入った。ハルニレ（エルム）などの高い樹木が茂り、周りの高層建築から隔離された別世界の趣だ（写真）。​◎１株ずつなので、花は満開でもちょっと冴えない灌木園​　僕は、入口で渡された案内チラシを見て、まっすぐ花の見頃という灌木園に向かった。途中で、池とも川ともつかない水を湛えた所を渡った。​​​　ただ、期待に反して、見栄えはしない。１株ずつ植えられているので、花が満開でも、灌木だから冴えないのだ（写真＝上はハコネウツギ、下はホザキナナカマド）。ちょっとガッカリして、僕は次に進んだ。​◎開園以来１世紀半近くも人の手の加えられない自然林​​　ただ、園内の巨木の量感は圧倒的だ。ハルニレの木など、樹齢は優に１世紀を超えるだろう（写真）。​　しかし、北ローンを通り抜けて、中央やや西にある自然林の一角に足を踏み入れて、感動した。北大植物園は、１８８６（明治１９）年に開園した。説明板によると、開園以来、ほとんど人の手が加わっていないとある（写真）。​　つまり開拓前の自然が、そのまま保存されているのだ。　眼前の原始林は、多くの来園者と研究者を見守ってきたことになる。園内の巨木も、そのような古い樹齢を誇るのだろう。​◎サクシュコトニ川の分水の水辺に擦文時代の竪穴跡も​　ところで園内には、池や川もある。ただ川は、流れているようには見えない。しかし枯れていないのだから、地下水から供給されているのだろう。ＪＲの高架線を挟んで、ここよりやや北にある北大キャンパスにもたくさんの水辺や池があるが、あれはサクシュコトニ川という地下水を供給源とする小河川である。　すると、ここもサクシュコトニ川の一分水なのだろうか。　今では想像もできないが、サクシュコトニ川にはサケも遡上してきたという。擦文時代、川辺に集落が形成されていた。　北大植物園内にも擦文時代の遺跡があり、園内でも竪穴住居跡のくぼみが３基残っているというが、位置が図示されていないので分からなかった。（この項続く）昨年の今日の日記：「金（gold）先物の安値は将来のインフレ、物価高の恐れが遠のいていることを予示しているか」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202207250000/​

  2023.07.25

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  札幌の旅(８)：大通公園の木陰のベンチで昼食後、北大植物園に向かう

  　大通公園の木陰のベンチで昼食を済ませて、さて、どこへ行こうかと考えた。​◎都市中心部の貴重な緑地帯​　これを書いている今なら、中島公園に行けばよかったと後悔しているが、この時は北海道大学植物園に行こうと考えた。テレビ塔下からあまり遠くないうえ、疲れたらホテルに戻れる距離に位置するからだ。　北大植物園は、南北は北３条から北５条まで、東西は西８丁目から西１０丁目と、碁盤目に区画された札幌市街地の９つの碁盤目を占め、広さ１３．３ヘクタールの広大な緑地だ。北大キャンパスもそうだが、開拓初期から植物園用地を確保できたから、市街地ど真ん中でこれだけの緑地となっている。　このすぐ西には北海道知事公館（２条×２丁目）が、東には北海道庁の一部の広大な公園もある。知事公館は、未だ訪れる機会が無い。旅行者や市民に開放されている（無料）のに、だ。次に絶対に訪れようと思った。　北大キャンパスと大通公園も含めれば、都市の中心部の貴重な緑地帯、オアシスだ。​◎分かりやすいはずが広大なためにウロウロしてやっと到着​　藻岩山に登った後なので、足が重い。​　大通公園をまず西に向けて歩く。花壇を手前にテレビ塔を撮る（写真）。　札幌の街中は、碁盤目状に区画されているから分かりやすいのだが、広大なためにウロウロすることが多かった。途中で、市民が植えたのか、美しい花が咲いていた（写真）。​​　やっと入り口前に着いた（写真）。入場料４２０円のチケットを自販機で買い、係員に手渡す。​　昨年も訪れたが、園内は広大だ。惜しむらくは、腰を下ろせるベンチが少ない。​　まずは入口でもらったチラシで紹介されている花が見頃という灌木園に向かった。灌木園は植物園の北東端にある（図）。​（この項続く）​昨年の今日の日記：「巨大ヒグマが本州にいた時代（下）：１４万年前頃に北海道から渡来し、氷河期末に絶滅」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202207240000/​

  2023.07.24

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  アファーマティブアクション（積極的差別是正措置）で米最高裁に憲法違反を突きつけられたハーヴァード大などの欺瞞

  ​​​　先月２９日、アメリカ最高裁は、ハーヴァード大学とノースウエスタン大学の積極的差別是正処置（アファーマティブアクション）を違憲、とする決定を行った（写真＝上はハーヴァード大、下はノースウエスタン大）。日本でもこのニュースは、アメリカ最高裁の保守化のもう１つの現れとして報道された。​​​​◎黒人とヒスパニックを入試で優遇​　民主党・バイデン政権は決定を厳しく批判し、さらにはそのやり玉に挙げられた形の東部の最高峰大学であるアイビーリーグ８大学の学長もの遺憾の意を表明した。日本でも、進歩的メディアを中心に批判的論陣が展開された。　ただ僕は、最高裁の決定にも、批判派の論陣にも、強い違和感を感じた。　アファーマティブアクションは、黒人の公民権運動の高まりで全米の主要大学で導入されている措置だ。早く言えば、社会的に差別されている黒人とヒスパニックに入試で下駄を履かせ、優先的に入学を認めるというものだ。これに対して、この措置の対象外の白人とアジア系は、人種逆差別として早くから批判の声を挙げ、一部が提訴に踏み切ったわけだ。特に勤勉とされるアジア系にとって怒りの声は大きい。​◎実は恩恵に浴すのは富裕層​　しかし声明を出したアイビーリーグ８大学やアファーマティブアクションを採用する大学は、偽善的とも言える。なぜなら人種間の差別是正措置であって、人種内の格差是正措置では全くなく、格差は放置したままだからだ。　例えば前記アイビーリーグ８大学の学生は６．８万人ほどだ。一方、大学在籍者に相当する全米の１８歳～２４歳の若者は３１００万人もいる。すなちわアイビーリーグ学生は０．２％ほどの特権階層なのだ。　そしてこれらの大学の学費は、近年の値上げに次ぐ値上げで天文学的に高くなっている。１年間の学費は、日本円にして１０００万円を超す。奨学金制度があるとはいえ、これは中産階級以下の層には、事実上の締め出しに近い。　したがって、アファーマティブアクションの恩恵に与れるのは、黒人とヒスパニックの富裕層である。　これって、全然、アファーマティブアクションの理念に反していないのか？​◎スポーツ推薦の恩恵の多くは白人富裕層の子弟​　しかもハーヴァード大などアイビーリーグの名門大学には、様々な優先入学枠がある。スポーツ、レガシー、学長、教職員の子弟の４つだ。ハーヴァード大の入学者の実に４３％は、これら４つからの推薦者でという。日本なら、マスコミからさんざん叩かれるだろう。　例えばハーヴァード大学は、スポーツでも全米有数の強さを誇る。ボート、ラクロス、セーリング、バスケ、アイスホッケーなどは強豪校だ。　かつてオリンピックに出る選手の多くがハーヴァードの学生だったという時代もあった。これまでにオリンピックで同大生が獲得したメダルの数は１００を超えるという。　こうした種目で実績を挙げられるのは、富裕層の子弟だけだ。実際、スポーツ推薦で入学するバスケの選手の６５％は白人だ。プロバスケットチームのレギュラーの大半が黒人で占められているように世間一般のバスケの優秀選手は黒人、という見方と大きく異なる。​◎トランプ前大統領の娘婿の父はハーヴァードに２５０万ドルもの巨額寄付​　２番目のレガシー推薦とは、要するに有力卒業生の子弟の推薦入学である。エリート再生産の最たる例だが、むろんこの推薦も白人が圧倒的だ。​　３番目の学長推薦とは、大学に多額の寄付をした人の子どものことだ。有名なその一例が、トランプ前大統領の娘婿のジャレッド・クシュナー氏だ（写真＝妻のイヴァンカさんと）。父のチャールズ・クシュナー氏はハーヴァード大に２５０万ドル（約３億５０００万円）もの寄付をした。だからハーヴァード大は、世界１財政豊かな大学で、同大のファンドの寄金額は５３０億ドル（約７兆４０００億円）にものぼる。​　むろんこの学長推薦の対象になれるのも、ジャレッド・クシュナー氏のように富裕な白人の子弟である。​◎極めつき、教職員子弟推薦、つまりコネ入学​　４番目の教職員の子弟推薦枠も、エリート再生産の典型で、こちらも富裕な白人が圧倒的だ。呼称はいいが、つまりはコネ入学ということになる。日本なら、マスコミの好餌になる不正入試だ。　つまり、ハーヴァード大の、そして東部の名門アイビーリーグも、アファーマティブアクションとは、ただの目くらまし、もっと言えば二枚舌のようにしか思えない。世間的にかっこよく見せているが、その実は富裕層のための優先措置を何重にも設けている。　ならば、アファーマティブアクションなどやめて、優秀で勤勉なアジア系が成績に見合ってもっと多数入学できるようにした方がよほど平等である。​昨年の今日の日記：「巨大ヒグマが本州にいた時代（上）：２～３万年前の化石のヒグマは北海道の現ヒグマよりずっと大きく肉食性」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202207230000/​

  2023.07.23

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  札幌の旅(７)：ウン十年ぶりに登った札幌テレビ塔、コスパは良くなく

  　バスで円山公園駅に戻った。　さて時刻は、まだ１１時半頃だ。久しぶりに札幌テレビ塔に登ろうと、大通駅まで行くことにした。​◎料金は１０００円、高さに劣るＪＲタワーよりも高額​　札幌テレビ塔は、もうずいぶん昔、まだ札幌市街地に超高層ビルが建ち並ぶ前、１度だけ登ったことがある。それからウン十年ぶりだ。　最近では、ＪＲタワーに２度、登ったことがある。同タワーの展望室は地上３８階で、高さは１６０メートルだ。それに比べて、かつては札幌１の眺望を誇った札幌テレビ塔展望室は、９０メートルしかない。　それなのに料金は１０００円。対してそれより高く見晴らしの良いＪＲタワーは７４０円だ。　それを上回れるのか、懸念したが、果たしてその通りだった。展望室は、ＪＲタワーの展望室より狭く、しかも周囲を超高層ビルがついたてのように立ちはだかり、眺望はＪＲタワーよりも劣る。　これでどうして料金が１０００円なのか、と疑問に思った。​◎大通公園を一望​　それでも下の大通公園には、修学旅行中の中学生が大勢群れていて（禁止されているのか、さすがにタワーに登らないが）、また外国人観光客や若いカップルがけっこういる。​　唯一、売り物にできると言えば、西の大通公園の俯瞰である（写真）。大通公園は、西１３丁目まであり、その間、記念塔など以外は建造物はない。西端まで、一望のもとにできる。これだけはＪＲタワーも、まねができない。​　緑の大通公園の先に、こちらを睨むように建っているのが、札幌市資料館である。​◎手稲山も遠望​​　北西方向を望むと、先ほど登下山したばかりの藻岩山が見える（写真）。​​　また北北東に視線をずらすと、晴天のおかげで遠くに山稜が見える（写真）。その一番高いのが、当初は登るつもりだった手稲山だ。手稲山へは、もう少し準備をして来年の登頂を目指したい。​​　西の直下の道路には、観光バスが駐まっている（写真）。大通公園と近くにある札幌時計台は観光地なので、団体客のバスが駐まる。しかし、これでも武漢肺炎の流行前よりは少ない。あの時は、数十台がずらっと並んでいたのだ。スターリニスト中国からの団体客が、共産党の意向（日本に対しての敵視意識からだろう）で解禁されていないからだ。​　札幌市民の意向は、「来ない方がいい」というものが圧倒的だ。彼らのマナーの悪さは、武漢肺炎パンデミック以前の行状で知れ渡っているからだ。​◎コストパーフォーマンスは悪い​　滞在時間は、１０分ほど。コストパーフォーマンスの悪い観光であった。​　下に降りると、１２時近くだった。大通公園の木陰のベンチに座り、眼前にテレビ塔を見ながら（写真）、本来は藻岩山山頂で食べるつもりだった、朝、コンビニで買ったお握りを食べた。​　札幌２日目にして、まだラーメンを食べられていない。（この項続く）​昨年の今日の日記：「世界がスターリニスト中国の歴史の改ざんを許して香港の民主主義が終わった」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202207220000/​

  2023.07.22

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  スターリニスト中国にデフレの影

  　武漢肺炎のパンデミックを上海などのロックダウン都市封鎖で強引に抑え込んだスターリニスト中国の経済回復がはかばかしくない。　最近の経済動向を見ると、スターリニスト中国もかつてバブル崩壊後の日本のように、デフレに突入しつつあるのではないか、という観がしてきた。​◎不動産価格、下落​　まず不動産価格の下落が始まっている。　６月の主要７０都市のマンション新築価格は、前月比０．１％の下落　上海や北京のような「１級都市」でも前月比横ばいだ。​　マンション価格がはかばかしくないから、売れ行きも鈍い。不動産シンクタンクの調査では、６月の主要５０都市の新築取引面積は、前年同月比２１％減だ（写真＝販売不振で建設が一時中断されたマンション）。　スターリニスト中国の不動産業は、ＧＤＰの３割を占めるとされる。不動産価格が下落し、売れなければ、それに伴って買い換えられる家電製品や家具など耐久消費財も売れない。　６月の消費者物価指数（ＣＰＩ）は、家具や家電の価格は１．８％の下落で、自動車やバイクは４．３％も下げた。家賃は、昨年５月からずっとマイナスになっている。　前年同月比は０％と横ばいで、欧米各国が連続利上げまでしてインフレ対策に血道を挙げているのと異質な状況だ。中国経済は貿易依存度が高く、食料もエネルギーも輸入に頼る割合が高い。これらが上がっているのに、ＣＰＩが横ばいなのは、もし世界インフレが収まれば、ＣＰＩもマイナスに転じ、デフレ経済に陥ることになる。​◎ＧＤＰの伸び率は大きく減速​　さらに経済の伸びそのものが減速感を強めている。　１７日発表された２３年４月～６月期のＧＤＰは、前年同期比６．３％だった。一見、高成長に見えるが、これは前年同期が武漢肺炎パンデミックで上海などの都市ロックダウンのためマイナス成長になったからで、いわば低い水準からの伸びで、下駄を履かされたようなもの。前期の１月～３月期と比べると、増加率はたった０．８％だ。年率に直すと、３．２％。スターリニスト中国の党と政府が目標にする５％前後という低い目標すら下回る。​　経済がふるわないから、失業率も高止まりし、２３年４月の若者（１６〜２４歳）の失業率は２０．４％と、過去最高となった。実に５人に１人が失業している（写真＝職探しをする若者たち）。６月末には大学生の卒業シーズンを迎え、彼らが労働市場に参入してくるから、さらに失業率は高まるだろう。​​◎株価も不振​　むろん「経済の体温計」である株価もふるわない。上海総合指数は、３２００当たりで行ったり来たりで、日本の１９９０年のバブル崩壊のようなつるべ落としの急落になっていないが、投資家も中国経済の未来に明るい展望を持っていないことを示している。　スターリニスト中国の人口は、昨年２２年に「大躍進政策」の災禍による飢餓で人口減に見舞われた１９６１年以来６１年ぶりとなった。大躍進政策が中止され、推進した毛沢東が事実上失脚した後、中国人口はまた激しく増え、共産党は国民に「一人っ子政策」を強制するしかなかった。​◎日本の２０年前の後追い​　そして今、スターリニスト中国は構造的な人口減少社会に入る。　日本は２００８年に人口減少社会に入った。バブル崩壊後の回復もかなわぬまま、厳しいデフレ経済に入ったのと軌を一にしている。　スターリニスト中国は、アベノミクスまで続いた日本のような悪性デフレ社会に突入していくことになろう。​昨年の今日の日記：「札幌周遊記２０２２⑱＝最終回：北海道初期の米作と開拓民の超粗末な掘っ立て小屋」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202207210000/​

  2023.07.21

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  奥日光、霧降高原の遭難（後）：親切な男性に救われ、救急車で日光駅まで

  　僕は、さらに２０分ほど、大山山頂の東屋で休んだ。　東武日光駅に向かう最終バスの時間には、もう間に合わない。その時点では、来る時と同様に暢気に駅まで歩けばよい、と楽観していた。​◎大山からの下山はもうフラフラ​　僕も、下山にかかった。　木柵を通り抜け、下りの山道に入ると、しばらくすると舗装路に出た。おそらく放牧していた時代に使っていた道路だろう。それが、下山路になっていた。　この舗装路がきつかった。滑落した時に岩に打ったらしい右の肋骨辺りが痛い。右側に負担をかけられないので、左側に体重をかける形で歩く。すると、次第に左の腰辺りが痛み出した。　１時間ばかり歩いたろうか。フラフラになりながら、目の前に車両が入れないようにした鉄製の扉が現れた。歩行者は、右脇に抜け出る通路があった。すぐ右に、霧降川が流れている。​◎男性に助けられ路上に横になり、男性は助けを呼びに行く​　隠れ三滝に近いそこで、僕は３０代後半と思しき男性から、この上には何があるんですか、と声をかけられた。大山に行きます、と答えた時に、僕はついに体力の限界に達し、その男性の前で不覚にもふらついて膝をついてしまった。　男性は驚いて、横になった方がいいですよ、と言ってくれた。僕は、石の縁取りの上に横になった。　男性は、救急車を呼びます、と言ってくれたが、ここも圏外だった。「待っていてください。電波が入る所に行って、救急車を呼びますから」と言い、なんと親切にも、僕が来た方向と逆方向、つまり下流側に彼は走って行った。　どうやらもう１つ、下流側の向こうに鉄製の扉があるらしい。彼は、その手前で車を駐めて、好奇心からここまで歩いてきて、僕を認めたようだ。​◎電波の届く所まで走り、スマホで救急車を呼んでくれる​　完全にグロッキーになった僕は、扉の鍵を開けて入ってこれる緊急車両に託すしかない、と判断したのだ。　僕は、横たわって２０分ほど待った。その間ほど、心細かったことはない。例えば、その男性が車の所まで戻って、そのまま何食わぬ顔をして立ち去っても仕方がないことだった。とうに日光駅に行くバスはなくなっているから、ここで野宿するしかない。背中から腰まで、あちこち痛むから、眠ることもできないだろう。　その心細さを、先の男性は救ってくれた。戻ってきて、僕の傍らに座り、間もなく救急車が来ます、と励ましてくれる。僕は、礼を言いつつ、そろそろ暮れてきたから、どうぞお帰りになってください、と男性に何度も注意喚起した。しかし彼は、律儀にも「救急車が来るまで」と言って、腰を上げようとしなかった。​◎助けてくれた男性の名前も聞かず仕舞い​　そしてその約１０分後、サイレンが聞こえ、道の向こうから救急車が現れた。　僕はストレッチャーに乗せられた。　男性は、安心して立ち去ろうとする。僕は、立ち上がって、彼に深くお礼を述べた。名前も住所も聞いていなかったことを、その時、気がついた。彼は、手を振って道の向こうに立ち去っていった。　あとは、ストレッチャーごと車内に載せられ、すぐに体温、血圧などを測られた。そして、痛くはないか、と言われながら、全身を触診された。　右の胸が痛かった。ひょっとすると、肋骨にヒビが入ったかもしれない。　さらに左腰の筋肉が猛烈に痛い。背中もあちこちが痛む。​◎救急病院搬送を固辞​　僕は、救急車の消防士さんに、礼を言いつつ、どこかタクシーに乗れる適当な所でおろしてほしい、と懇願した。予約した宿にも遅れることを連絡せねばならず、それも消防士に頼んだ。　しかし彼らは、再三、どこか救急病院に運び込むと言う。それだけは、嫌だった。運ばれたら、あちこちのエックス線写真を撮られ、しかも即入院、となるだろう。　見知らぬ日光で入院となったら、仕事にも差し支えるし、不自由きわまりない。様子を見て、明日、ひどかったら自宅近くの病院に行きますから、と車中、ずっと押し問答の繰り返しだった。　とうとう根負けした主任らしい消防士が、書類を出してきて、署名を求められた。自分の意思で病院に行かないという趣旨の書類だった。後になって、なぜ救急病院に運ばなかった、と家族などから責任追及されるケースが多いのだろう。​◎野宿は免れた幸運​　救急車は、東武日光駅の手前で駐めてくれた。僕は、やっと起き上がり、できるだけしゃきっとした姿を見せて、小用を足すために駅のトイレに向かった。　駅から出てくると、救急車はまだ駐まっていた。どうやら僕がぶじに出てくるのを確かめようとしていたのだろう。　僕はタクシー乗り場に向かい、そこから救急車に最敬礼をした。　無事を確かめた後、救急車は僕の横を通り過ぎて消防本部に戻っていった。あたりは暗くなりつつあった。　僕の奥日光行は、２人の男性と救急隊員に助けられた。思えば救急車に乗るなど、初めてのことだった。　誰か１人でもいなかったら、僕は奥日光の山中で、痛みと寒さと空腹に耐えながら一夜を明かしたのだろう。人生で初めて「遭難」を実感した時だった。​（写真は、昨年の５月と１０月に奥日光の高山と半月山に登った時の写真）​​昨年の今日の日記：「札幌周遊記２０２２⑰：駅逓馬車に乗って開拓時代の野外博物館、北海道開拓の村の農村群を観る」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202207200000/​

  2023.07.20

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  奥日光、霧降高原の遭難（前）：霧降高原から大山への森の中の道を歩いて転落、スマホが水没して壊れた！

  　夏山シーズン到来で、滑落事故も増えている。先の３連休でも、何人かの登山者が滑落で死亡した。　他人事ではない。僕も５月に奥日光のハイキングで小規模な滑落事故を起こし、あわや野宿、という憂き目を見た。「札幌の旅」シリーズで、藻岩山登山を終えたのを機に、この事故の顛末を綴りたい。　その事故で痛めた背中と腰の後遺症が癒えたのは、１カ月近くもたってからだった。​◎電気の走るような強烈な痛み​　６月１４日付の日記で、４月２５日に函館東郊の恵山登山で、絶体絶命の断崖岩下りを敢行し、何とか無事に降りられたことを述べた（６月１４日付日記：「函館の旅（２７）：コースを間違え断崖を俯瞰する場に出た、我が山人生最悪の危機に遭遇」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202306140000/を参照）。　実は、その約１カ月後の５月１７日に、奥日光でとんでもない事故を起こし、危うく命拾いした。　命拾いはしたが、背中と右胸を岩に打ち、下山途中で左下半身に歩行を委ねた加重負担のため、翌日は全身が痛く、左半身にちょっと負担をかけると腰に電気が走るような強烈な痛みを感じ、打ち身を抱えた右上半身の痛みでベッドの横臥もままならなかった。右肋骨の１つに軽いヒビが入っていたのかもしれない。　まず下半身の筋肉痛が癒えたのが約１０日後、その後も背中と右胸の痛みは続き、ようやくその痛みもやわらぎ、寝起きに不自由しなくなったのは約１カ月後のことだった。​◎霧降高原山中のヤマツツジなどは綺麗だったが​​　それは、霧降高原から大山へと向かう山道を歩いている時だった。新緑とヤマツツジ、トウゴクミツバツツジ、シロヤシオの満開の花が、とてもきれいだった（写真）。​​　霧降高原レストハウスの係員に、道を尋ねた折、注意された「ヤマビルに気をつけて」が耳に残り、それに意識がいき、足下をおろそかにした。また山道に入る前に、キスゲ平園地のレストハウスから小丸山展望台まで、木造階段「天空回廊」１４４５段（高低差２４０メートル＝写真）を上り下りした疲れもあったのかもしれない。　大山の途中、足を滑らせて滑落したのだ。幸い、絶壁ではなく、２メートルほど下が水たまりだった。　２メートルほど転落する間に、体が何回転かし、その間、あちこちを強打した。転落する一瞬は記憶にあった。ああ、とんでもないことになっている、とだけは思え、そこまでは意識があった。​◎スマホ水没で使えなくなった！​　しかしその後は気を失った。気がついたのは、水たまりに漬かって、下半身はびしょ濡れになっていた時だ。時間は分からないが、数分間、失神していたのかもしれない。　気がついた時、ここはどこで、自分は何をしているのか分からなかった。ズボンのポケットに収めていたスマホを見れば、何か分かるだろうと取り出したが、嗚呼、水に漬かったスマホは黒い画面のままだった。　少しずつ記憶を取り戻した。そうだ、霧降高原から大山に向かっていたのだ、と。　水たまりから体を起こして、外に出た。持っていた文庫本、山行の本のコピーも水に濡れていた。とりあえず岩の上で広げて、乾かした。　悲惨だったのは、スマホが水没し、全く使えなくなったことだ。現在地も分からないし、誰にも連絡できない。​◎通りかかった中年男性に救われる​　問題は、体のあちこちが痛いことだった。ただ幸いにも、骨折はしていないらしいことは判断できた。しかし２メートル上の山道まで、登って戻れるのか心許なかった。　そこに、天の助けだ。１人の中年男性が僕が転落した山道を、通りかかった。僕は、大声を出して助けを求めた。幸い、その男性はすくに下りてきて、僕の腕を持ち、上に引っ張り上げてくれた。　その男性と、大山まで同行した。途中も、満開のヤマツツジがきれいだった。　ふいに、森が切れ、草原になった。大山の中腹から山頂まで、霧降牧場だった。ただ、今はウシは飼われていない。牧場跡であることは、木柵がぐるりと中腹を取り巻いていることだ。　山頂には、小休止できる東屋があった。そこから振り返ると、霧降高原までの緑が美しかった。​◎それまで撮った写真はパーかも​　スマホが使えないので、一切、写真は撮れない。最近、写真はもっぱらスマホで、デジカメを持たない。おそらく霧降高原で小丸山展望台まで登った１４４５段、２４０メートルの木の階段の途中で撮した写真も、山道の中で撮った真っ赤なヤマツツジ、ピンクのトウゴクミツバツツジ、白いシロヤシオの群落の写真も、アウトだろう（翌日、ショップに持って行ったら、果たして当日撮った写真は全部消えていた）。　東屋で、その男性と１０分ほど休憩した。先を急いでいるようなので、どうぞお先に行ってください、と促し、ありがとうございました、と礼を述べた。　男性は、人間だけ通れる狭い木柵の間から、道を下りて行った。（この項続く）​昨年の今日の日記：「革命のスリランカ、脱スターリニスト中国の道はなお遠い」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202207190000/​

  2023.07.19

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  札幌の旅(６)：藻岩山から下山、すれ違う登山者への挨拶は「おはようございます」から「こんにちは」へ

  ​　藻岩山山頂の展望所で３６０度のパノラマ景観を堪能し（写真）、すこし休憩して下山にかかる。時間を見ると、急げば慈恵会前に停まるバスに間に合う。​◎馬の背で高齢グループが小休止​​　下山路入口の右に、藻岩山頂の標識と国土地理院の三等三角点がある（写真）。写真に収めた。　勝手知ったる下山路だ。足取りは軽く、山を下る。　さすがにこの時間になると、登ってくる市民と頻繁に出会う。登る時は、まだ朝だったので、早朝登山して下りてくる人たちには「おはようございます」と挨拶したが、もう１０時近くになると、さすがに「こんにちは」だ。　途中、馬の背で４～５人の高齢男女の登山グループが一休みしていた。ちゃんと登山用の服を着て登山靴を履いている。慣れたグループのようだ。​◎慈恵会前バス停に急ぐ​　馬の背で、右の下山路を取ると、元来たルートで、慈恵会前に着く。前２回は、右に行かず、直進して旭山公園口のコースをとったが、このバス時刻は調べていなかった。バスは１時間にやっと１本なので、時刻の分かっている来たルートの慈恵会コースをとる。　さすがに防柵の浮いた所は、緊張する。下り方向に見て左は、深い谷になっている。藻岩山には、鎖場の鎖もロープもないので、ここが一番の難所になる。補修が必要なのではないか、と思う。　スキーリフト跡地を右に見ると、もう間もなくだ。​◎駐車場は満車、お寺の前の道路の両側にずらり路駐​　原始林のフィトンチッドを浴びて、登山口入口に着いた。　驚いた。登った時は、駐車場にまだ少し空きがあったのに、満車になっていて、それどころか観音寺というお寺前とその先まで、両側に車がずらっと駐められている。　車で来れば、１時間に１本程度のバスの時間に煩わされずにすみ、帰りも楽ちんだが、僕には登山者とマイカーとが、どうにもマッチしないのだ。（この項続く）​昨年の今日の日記：「超希少な『歌うイヌ』の生き残り、再発見；オオカミから家畜化された初期の系統の生き残り」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202207180000/​

  2023.07.18

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  札幌の旅(５)：よく晴れた藻岩山の山頂から札幌市街地や真駒内、恵庭岳などを遠望

  　山頂は、ロープウエーの下山駅があり、まだ早いせいか、ゴンドラは動いていない。それどころか店舗もまだだ。だから中に入れない。ここで食料か飲み物を補給しようと思った人には、とんだ当て外れだが、登山するのはたいてい練達の市民登山者だ。当てが外れたような感じの人はいなかった。　札幌市街地は、山頂から何度俯瞰しただろうか。いくら見ても、その景観は美しいと思う。　ただかつて雨の日に登山した時は何も見えなかったことがあったから、展望回数は登山回数より少ない。​◎超高層ビルの林立する市街地に緑の区画は北大キャンパス​​　山頂からは３６０度見渡せるが、やはり目を引くのは、札幌市街地が一望できる北方面だ。ＪＲ札幌駅を中心に、すっかり超高層ビル群が大きく広がっている。その超高層ビル群の左、方角にして北西に広がる緑は、北海道大学のキャンパスだ（写真）。　北大キャンパスは、全国の大学では珍しく、教養課程から専門課程までを１つのキャンパス内で学べる（函館に学部のある水産学部だけは、教養課程はここ、そして専門課程になって函館に移る）。総合大学でありながら、たこ足大学でないのは、北大だけではなかろうか。これも、創設期から広大な農場をキャンパスに取り込んだ歴史の所産だ。その代わり、学部や研究施設の増設のたびに農場は削られたが。　中心街には、北大付属植物園と北海道知事公館の緑も見られるはずだが、超高層ビル群に飲まれて判別できない。​◎石狩湾、そして真駒内​​　それをずっと北の方向にクローズアップすると、石狩湾も見える（写真）。海沿いに何本も林立するのは、風力発電の風車だ。ずっと手前のこんもりした緑は、円山だ。​　市街地から離れて、南東に目を移すと、１９７２年の札幌冬季五輪のメイン会場になった真駒内が見える（写真）。中央の白いドーム状建物は、真駒内アイスアリーナだ。今は、「セキスイハイム」の冠が付くらしい。その手前のベルト状の緑地帯の内側には、ここでは見えないが豊平川が流れている。豊平川は、半世紀以上前からの市民の努力で、秋にはサケが遡上する。　その北の方に目を転じると、緑の塊とその上のグリーンベルトが見える（写真）。緑の塊が中島公園で、国指定重要文化財の豊平館（ほうへいかん）がわずかに見える。グリーンベルトは、上述の豊平川だ。​​◎はるか遠くに恵庭岳、風不死岳、樽前山​​　それから視線の方向を南に転じると、今日は恵庭岳がよく見える（写真）。写真の中央やや左の美しい山容を見せているのが、恵庭岳（標高１３２０メートル）だ。その左に見えるのが、風不死岳（ふっぷしだけ＝標高１１０３メートル）だ。もちろんこの写真には見えないが、恵庭岳と風不死岳に挟まれて、これも美しい支笏湖がある。​　風不死岳のすぐ左隣には、樽前山（たるまえさん＝標高１０４１メートル）が聳える。​（この項続く）昨年の今日の日記：「札幌周遊記２０２２⑯：帰路の途中、北海道開拓の村に寄る」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202207170000/​

  2023.07.17

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  札幌の旅(４)：藻岩山登山で馬の背から山頂まで

  ​　藻岩山登山で次に目指すは、「馬の背」だ。慈恵会前から登ってくると、正面で出合う。ただその手前で藻岩山最大の難所（と言っても鎖場やロープがあるわけではない）があり、一部が崖に切り落ちている細くやや急な道となっている。滑落を防ぐ木柵は、一部が宙に浮いていて、役に立たない。その手前で目を慰めてくれた野生のアジサイが綺麗だった（写真）。​◎馬の背で小休止​　さて、馬の背である。右からは旭山登山口からの道が合流し、すぐ左には小林峠方面からの登山口が合流する。　馬の背は、いわば小休止場で、木製ベンチも２つ設置されている。ここで僕は、初めて休憩を取り、コンビニで買ってきたペットボトルのお茶で舌を湿らせた。　ここから藻岩山頂まで１．１キロで、息を整えるのにちょうど良い。　ところで藻岩山でも、途中で「第○○番」と石に彫られたお地蔵さんをたくさん見た。円山、函館の函館山、恵山でもあったから、昔の人は主だった山にお地蔵さんを奉納したのだろう（翌日登る天狗山にも、中には朽ちた古いお地蔵さんはたくさん据えられていた）。​　馬の背にもお地蔵様があり、ここは「第十八番」なのだ（写真）。​​◎岩がゴロゴロの坂道​　馬の背を出発すると、ほどなく岩がゴロゴロある坂道となる。藻岩山登山というと、ここくらいがやや疲れる道か。　時折出合う、「第○○番」と書かれたお地蔵さんのナンバーが増えていくのが、励みになる。詳しく調べなかったが、四十番以上はあったかもしれない。​◎最高の眺望​​　さて、ようやく登り切ると、国土地理院の三等三角点のある藻岩山山頂である（写真＝山頂の標識と三等三角点）。　朝早く登った人が下山してくるのを途中で何人も迎えたが、ここにもすでに３、４人が札幌市街地を遠望したり、ベントで休んでいたりしていた。​　藻岩山登山は、はっきり覚えていないが、これで４～５度目だと思うが、今までで１番天気が良く、それだけに眺望は良かった（写真）。​​昨年の今日の日記：「札幌周遊記２０２２⑮：下山では登りで気がつかなかったチシマフウロやチシマザサの穂」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202207160000/​

  2023.07.16

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  大学は４年制が妥当なのか、文系は３年制に短縮を提言

  　文科省のまとめによると、２７年後の２０５０年の国内の大学入学者数は４９万人になるという。昨年の２２年より１３万人も下回る。​◎少子化で将来は全入、なお定員が埋まらない事態に​　これで予測されるのは、あふれるばかりの大学、特にＦランク私立大の淘汰だ。文科省の予測でも、現状の入学定員を維持すると２割分が埋まらないという。　日本の大学は、欧米の大学に比べて、入学はしにくいが卒業ははるかに楽、と言われている。その入学がしにくいことも、これでかなり変わるかもしれない。事実上の全入が実現する。​　しかし旧７帝大、そして一橋や東工大・医科歯科大など、さらに早慶・上智クラスは、難易度はあまり変わらないだろう（写真＝上から東大、北海道大、東北大、慶応義塾大日吉キャンパス）。中間以下が、今よりずっと入学しやすくなる、場合によっては事実上無試験で。　ところで、日本の大学、特に文科系は、入学してからパラダイス化する。卒業に必要な最低単位が１２４単位だからだ。１学年で３１単位ずつ取っていけば、卒業できる。　これは、いくら何でも楽過ぎはしないだろうか。​◎私大の経営に大打撃だから実現は難しいか​　だから現行の大学４年制が必要なのか、という疑問が出てきてもおかしくない。いち早く改革に動いたドイツでは学士号取得にかかる期間、すなわち大学卒業までを４年から３年に縮めた。　卒業までの在学年数短縮は、早く社会に出て生産活動に参加したいと願っている学生や一部保護者からは希望は多いだろう。しかし大学３年制になると、文系大学の財政が大きく損なわれる。授業料が一挙に２５％も減るからだ。　私大はこぞって反対するから、実現は難しいかもしれない。​◎最低取得単位は３年間で容易に取れる​　一方で、大学３年制は物理的に可能なのかを考えてみる。　現行の１２４単位のままなら、１年間に４２単位を取れば、クリアできる。半期で２１単位だ。１日３コマ（これで６単位）の授業を、週４日間受講すれば可能だ（３年間で１４４単位）。文系なら、さほど難しくはないだろう。　しかし理科系は、３年制は困難だ。　参考までに、私事ながら国立大理系（薬学部）を卒業した僕の体験を以下に語ろう。　２年後期から学部に入った僕たちは、いきなり朝８時４５分から、切れ目のない授業漬けに放り込まれた。​◎「ブラック職場」さながらだった大学３年生の青春​　３年になったらいっそう悲惨で、朝から午前中は、１講の穴もない授業漬けだ。午後は、毎日、実験・実習となる。有機化学系の実験の中には３時間ほどで終わったものもあったが、生物化学系になると、反応が進まない場合、夜中までかかった。　４年生では、授業から解放されたが、各講座に配属され、主任教授からテーマを渡され、そのための実験を毎日、行う。週１回、その報告と論文講読の講座会議があった。　総じて、「ブラック職場」さながらの毎日だった。　それでいて、部活をし、人並みにデートもし、たまには学外にデモに出かけた。４年生の時は、読書に没頭し、月に１０冊は読了した。　以上のカリキュラムが、今も続いているかは分からないか、大変わりしていないとすれは、３年制など全く無理だ。それどころか薬学部の場合、今では薬剤師取得コースでは６年制になっている。​◎大学３年制、理科系は無理でも文科系なら十分可能​　状況は、医学部はもっと酷いかもしれない。医学部の場合、卒後研修などもあるから、事実上、６年制は空文化している。　しかし、それとは全くの別天地が一部の文系である。そこなら、前述の試算のように３年制も可能だ。　入学時に学生に３年制か４年制を選べる選択制をとってもいい。１日も早く社会に出て活躍したいという学生の他に、ゆっくりと部活や勉強に取り組みたいという学生がいてもいい。​昨年の今日の日記：「札幌周遊記２０２２⑭：晴れた塩谷丸山山頂から絶景を展望」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202207150000/​

  2023.07.15

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  スウェーデンのＮＡＴＯ加盟が大きく前進、Ｇ７、ウクライナの安全は長期保障へ

  　２世紀にわたって軍事的中立を貫いたスウェーデンが、いよいよＮＡＴＯに加盟する運びとなった。​◎スウェーデン加盟でＮＡＴＯは３２カ国に拡大​​　昨年５月、フィンランドと共にＮＡＴＯへの同時加盟を目指したが、トルコの独裁者エルドアンの横やりで、フィンランドだけこの４月に加盟を果たし、スウェーデンだけは店ざらしにされていた。トルコの反体制独立派のクルド系組織がスウェーデンで保護されているなどと難癖をつけ、さらにはアメリカにＦ１６戦闘機の売却を容認させ、ＥＵへのアクセスも容易になるように条件闘争を行い、ある程度、その目途がたったからだ（写真＝１０日、リトアニアの首都ビリニュスで握手するトルコのエルドアンとスウェーデンのクリステション首相。中央はＮＡＴＯのストルテンベルグ事務総長）。　スウェーデンが加盟を果たせば、ＮＡＴＯは３２カ国に拡大する（図）。発足時、１２カ国から出発したのに、ソ連崩壊を経て、旧東欧とバルト３国も加盟し、さらに解体された旧ユーゴスラビア諸国も、セルビアを除いて加わった。​​◎ウクライナの加盟は見送り、安全を長期的に保障する枠組み創設​　これで北欧諸国は、すべてＮＡＴＯ加盟国となる。テロ国家ロシアのプーチンは、ＮＡＴＯの東方拡大を脅威に感じ、ウクライナも加盟に動いて、その加盟を阻止しようとして、ウクライナ侵略戦争に踏み切った。　ウクライナはもちろんＮＡＴＯ加盟を希望し、ゼレンスキー大統領も１１日、１２日にリトアニア、ビリニュスで開かれたＮＡＴＯ首脳会議に参加し、加盟を訴えた。　ただＮＡＴＯは、ウクライナの加盟プロセスを加速させることを決めただけだった。ウクライナはもちろん即時加盟を希望しているが、今、ウクライナがＮＡＴＯ加盟国になると、集団的安全保障条項から、アメリカと西欧は対ロシア防衛戦争に加わることになり、それは非現実的として、即時加盟は認められなかったのだ。​　その代わり、Ｇ７はウクライナの安全を長期的に保障する枠組みを創設、ＮＡＴＯ加盟国とウクライナが２国間協定を結び、ウクライナの安全を高める（写真＝Ｇ７首脳との会談に加わるゼレンスキー大統領）。​​◎プーチンの対ウクライナ侵略戦争は戦略的に失敗が明確化​　しかしそれでも、プーチンはＮＡＴＯの圧力をさらに身近に感じることになった。それどころか、フィンランドとスウェーデンもＮＡＴＯに加わり、事実上、全ヨーロッパを敵に回すことになった。戦略的な大きな失敗、である。　考えてみれば、昨年２月にプーチンが始めたウクライナ侵略戦争は、最初から誤算・失敗続きだった。取り巻きどもの甘い見通しのもと、３日間で首都キーウを占領し、ゼレンスキー大統領ら首脳部を逮捕し、傀儡政権を樹立し、その傀儡政権と軍事的同盟を結んで、ＮＡＴＯに対向しようとしていた。​◎テロ国家ロシアの後退、少しずつだが​　ところがウクライナ側の防衛戦争への志気の高まりとＮＡＴＯ諸国の軍事援助で、今や占領地から１寸ずつ交代させられている。しかも、膨大な戦死者・負傷者を出して。　６月下旬には、バフムト攻略の原動力となった民間軍事会社ワグネルの反乱まで招来した。穴の開いたバフムトは、ウクライナによる奪還が堅実のものとなりつつある。　ロシア侵略軍は今や完全に守りに入り、それもどこまでもつか、という話になってきた。　プーチンの悩みは尽きない。​昨年の今日の日記：「札幌周遊記２０２２⑬：なだらかな土道の先に岩だらけの険しい道；安倍元首相の葬儀に多数」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202207140000/​

  2023.07.14

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  人類が地球を変質させた新しい時代「人新世」が決まる、指標地にカナダのクロフォード湖堆積物

  　世界の地質学者の集まる国際学会「国際地質科学連合（ＩＵＧＳ）」の作業部会は１１日、人類活動が地球環境に大きな影響を与えた時代「人新世」を２０世紀半ばからの新たな地質時代とし、その指標地としてカナダ東部のクロフォード湖の堆積物を選んだと発表した。​◎１万１７００年前のヤンガー・ドリアスの終わりをもって始まった完新世​　今後、上部組織での審議を経て、２０２４年にも最終決定する。​　これによって、１９５０年頃からの新しい地質時代「人新世」が始まることになった。現在、我々の生きる地質時代完新世は、１万１７００年前の氷河期最後の寒の戻り「ヤンガー・ドリアス」（写真＝ヤンガー・ドリアスの命名の由来となったドリアス＝チョウノスケソウ）の終了をもって始まったが、それがついに終わり、人新世の時代に衣替えする。​​　地質時代は、生物相が大きく、一挙に変貌したことをもって、定められる。完新世の前の更新世には、マンモス（写真）、マストドン、ケサイ、オオナマケモノ、ナウマンゾウ、ヘラジカ、スミロドン（犬歯ネコ）などの大型獣が地上を闊歩していたが、氷河期の終焉をもって一斉に姿を消した。それと共に、石器を発展させ、やがて農耕牧畜を始めるホモ・サピエンスが地球の主役となった。​◎人類活動の活発化の痕跡を残したクロフォード湖堆積物​　ところがそのホモ・サピエンスが、いよいよ地球の支配を強め、気候も変え、様々な人工物質を排出するようになり、地質にも変化を及ぼすようになった。完新世に代わって「人新世」を規定するのは、その象徴でもある。　イスラエルのワイツマン科学研究所は２０２０年、人工物の総量が全生物の量に匹敵するまでになったと報告している。今なら、全生物量を上回っているだろう。　ただ地質時代を新たに定めるには、それを代表する指標層（模式層）を定めなければならない。日本の別府湾を含めて、世界で１２の候補地が提出され、作業部会が選定を進めていた。​　完新世の終わりを１９５０年頃とし、それ以降の人新世の始まりを最も良く示す地層として選ばれたのが、クロフォード湖（写真）の湖底の堆積層だ。化石燃料を高温で燃やした時だけに発生する「球状炭化粒子」が１９５０年代に入って急増していることがボウリング調査で抽出した堆積層ではっきりと示された。​​◎日本の別府湾は落選​​　カナダのクロフォード湖は、五大湖の近くに位置し、面積は約２．４ヘクタールと湖としては小さいが、最も深い場所で水深２４メートルに達する。大型の魚類などがおらず、地層が攪乱されることもなく、安定している。湖底から採取したボウリング・コアもはっきりしていた（写真＝コアを採取する研究チーム）。​　候補地の１つとなった大分県別府湾は落選した。愛媛大学などの研究グループが、別府湾海底から採取したコアに、１９５０年頃から核実験によるごく微量のプルトニウムや、プラスチックゴミが砕かれて生成されたマイクロプラスチックなどを見つけ、人新世の指標地としてＩＵＧＳに提案していたが、別府湾の地層に過去の地震などで堆積物が攪乱された層があることが指摘され、落選となった模様だ。​◎最後の地質時代とならないことを願う​　もし１９５０年頃をもって人新世の始まりと確定すれば、間もなく４分の３四半世紀となる。人新世がいつまで続くか分からないが、最後の地質時代とならないことを願うばかりだ。人類が滅んでしまっては、新たなその地質時代を命名する者がいなくなってしまう。​昨年の今日の日記：「デジタル選挙を駆使した参院の新顔『参政党』とワンイッシュー党の『ＮＨＫ党』」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202207130000/​

  2023.07.13

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  札幌の旅(３)：朝、藻岩山登山を決める、慈恵会登山口から藻岩原始林の中を歩く

  　札幌２日目の７月４日は、さんざん迷った末、藻岩山登山と決めた。一時は手稲山登山を目指したが、どこから登ったらよいか踏ん切りがつかず、結局、これまで４～５回の登山歴のある藻岩山（標高５３１メートル）に、その日の朝に決めたのだ。​◎始発バス乗り場で登校の高校生の行列にかち合う​　ホテルのすぐ近くにコンビニがあるので、ペットボトルのお茶とお握りなどの食料を買い込み、地下鉄で円山公園駅に着いた。　２番乗り場と聞いていたので、そこに向かうと、高校生の長蛇の列。午前７時４０分頃で、高校生の登校時間に当たったようだ。蛇がとぐろを巻くように、何重にも折り重なる形で列を作っている。その列は秩序正しく、高校生たちもダラダラしていない。　この長い列の後ろに並ぶのか、と絶望的になったが、高校生の列の脇に、高齢者たちが別に並んでいる。聞くと、一般者の列で、高校生より優先して乗れるのだという。​◎市立旭丘高校生と一緒​　この高校生はどこの高校なのか、と僕の前のおじいさんに聞くと、旭丘高校だという。市立旭丘高校か、道理でダラダラすることなくきちんと整列しているはずだと納得した。市立旭丘高校は、札幌市内でも札幌南、札幌西、札幌北に次ぐ、有数の進学校なのだ。　高校生たちで満員の前のバスが発車して、ほどなく次のバスが来た。僕たち一般客は、彼らより優先して乗れ、その次に高校生の列が次々と乗り込んできた。　目的地は、慈恵会前バス停で、午前８時ちょっと前にバス停に着くと、高校生たちも全員がここで下りた。​◎巨木の茂る原始林の間を歩く​　藻岩山登山者は僕だけのようで、そこから慈恵会という社会福祉施設を左に見つつ坂を登っていくと、３分ほどで登山口入口に着く。入口の左に水飲み場とトイレが設置されている。ちなみに藻岩山で山頂のロープウエー駅まで、途中に水場もトイレもない。必要なら、ここで用を足すしかない。　一方、登山口の右に駐車場があり、朝８時だというのに、すでにほぼ満車だ。どうやら登山者はみんなマイカーで来るようなのだ。​​​　登山口から登って行くと、すぐに周りは深い藻岩山原始林である。ハリギリ、カツラ、ミズナラ、ホウノキ、ボダイジュなどの大木がびっしりと生えている（下の写真の上）。カツラの木だろうか、巨木がからまってオブジェのようになっている（下の写真の下）。　これらの古木は、開拓使が置かれる前の明治前の原野の札幌を見下ろしていたに違いない（写真＝北海道開拓の村に復元された開拓使庁舎）。​​　この自然林を歩くだけでも、藻岩山に登る価値はある。​◎「日本初のスキーリフト跡地」の遺構に​　なおこの自然林は、円山（標高２２６メートル）の自然林ともつながっていて、大正１１年（１９２２年）の国指定天然記念物に指定されて以来、ずっと保護されている。だから北海道開拓以前からの樹齢２００年クラスの木もたくさんある。​　森を登ってくと、２０分ほどで「日本初のスキーリフト跡地」の看板と遺構にたどり着く（写真）。ほぼ３分の１を来た勘定だ。昨年の今日の日記：「２０２２年参院選で見た２つの党の消長と課題」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202207120000/​

  2023.07.12

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  札幌の旅(２)：幌見峠のラベンダー園に一直線、ラベンダーの香りに包まれ、札幌市街地も俯瞰

  　第１回は、３泊４日の旅の総覧だったが、これからは旅で見たことを深堀していく。　７月３日午前１１時頃、僕の乗ったエア・ドゥ機は、評判のように定刻に（いや５分ほど早かったかもしれない）新千歳空港にランディングした。外をちらっと見ると、雲が厚い。これは、無理かな、と思った。​​◎円山動物園前まで歩き、タクシーに乗る　新千歳空港からＪＲ北海道の快速「エアポート」に乗る。これは、札幌まで４０分前後と速い。途中、北広島駅を通る。駅を出ると左側に、今年オープンした日本ハムの本拠地エスコンフィールドが見えた。車窓から写真を撮った（写真）。　札幌に到着したら、まず駅近のホテルに小型スーツケースを預けて、地下鉄を乗り継いで円山公園駅に向かうつもりだった。あいにく幌見峠近くまで行くバスは、出てしまった後で、２時間はない。幌見峠のラベンダー園は、前日に電話して開花状況を聞いていた。まだつぼみの品種もあるが、早い品種は咲いているという。　歩くか、と決意を定め、円山公園の緑の中を突っ切って、円山動物園前まで行くと、動物園前には何台もタクシーが客待ちしていた。歩くとたぶん１時間弱かかる。時間が惜しいし、明日は山に登る予定なので、タクシーに乗ることにした。この頃には、青空が広がっていた。​◎標高３２０メートルの幌見峠へ​　たぶん、それは正解だった。帰りは、幌見峠から歩いたが、坂はけっこうきつかったからだ。傾斜角度とは１０度くらいあったのではないか。何しろ幌見峠だって、標高は３２０メートルあるのだ。稀だが、ヒグマが出たという報道も出る。　タクシーは、１０分ほどでラベンダー園入口に着いた。ちょうどタクシー降り場に中年女性１人がタクシー待ちをしていた。その女性は、待つことなく僕の乗ってきたタクシーに乗れ、タクシーも空車で丸山駅まで戻ることなく、客を乗せられる。両方に運が良かった。​◎紫の絨毯に香しい香り​​　ラベンダー園は、一面、紫の絨毯を敷いたようだった。ただ入口のラベンダー畑の花は、まだつぼみだった。しかしそこからさらに上に歩くと、満開の畑も広がる。品種によって、開花期が違うようだ。辺り一面は、香しい香りに包まれる（写真）。​　やや興をそぐ標識が、あちこちの畑に設置されていた。簡体字で、中に入るな、という標識である（写真）。これで見ると、大陸から来た中国人の中には畑の中に平気で入っていく輩がいるのだろう。​　スターリニスト中国は、自国民の日本への団体旅行を解禁していない。だから家族連れの個人旅行が多いのだろう。実際、僕がラベンダーを観賞していた時も、畑のあちこちで中国人ファミリーの声が聞こえた。​◎札幌市街地と円山も眼下に​​　ここは標高もまずまずということで、ラベンダー畑超しに札幌市街地も望める（写真）。夜なら、夜景も素晴らしいのだろう。​　眼前に広がる札幌市街地の手前左に、こんもりした緑の丘が見えるが（写真）、これは僕も何度か登った円山だ。円山の標高は２２５メートルなので、確かに眼下に見る形になる。ちなみに円山には普通のスニーカーでも登れ、しかも往復１時間ちょっとなので、誰でも手軽に札幌市街地を望める好スポットである。​　３０分くらい、ラベンダー園を散策し、下山にかかった。最初から、脚で下りると決めていたが、前述のように意外と傾斜がきつい。　きつい坂道をほぼ下りきって住宅街が広がる三叉路で、「円山西町神社前」というバス停と待合室を見つけた。時刻表を見ると、１０分後くらいに１時間に１本のバスが来る。それに乗ることに決め、バスを待つことにした。明日に備えて、ムダに消耗したくはなかった。​昨年の今日の日記：「２０２２年参院選、自民大勝利と安倍元首相の非業の死後の自民党」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202207110000/​

  2023.07.11

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  鳴り物入りで発足した大学１０兆円ファンドの初年度は大赤字、シロウトの運用か！？

  　素人が運用しているのではないか、という目を疑う報道だった。​　科学技術振興機構（ＪＳＴ＝写真）の７日発表の「大学１０兆円ファンド」が初の決算である２０２２年度の運用成績が６０４億円の赤字、０．６％のマイナスだったという報である。​​◎利上げの年に債券を買うバカ​　同ファンドは巨額助成で世界トップの大学をつくるため政府が創設したファンドだ。それが利益を生むどころか、マイナスとは……。　理由は、債券に運用の比重を置きすぎたことだ。　２３年３月末時点の運用資産の比率は、ファンド過半の「グローバル債券」が５５％も占めた。アメリカを先頭にした世界的な利上げブームで、債券価格は大きく下落したはずだ。　債券による損失は、１２６３億円にもなった。半面、株式の運用比重は小さかったから、日本株などの株高に乗れなかった。株式の運用益は６５５億円あったが、低比重だったのでファンドの規模にしては小さく、全体の運用実績は大赤字となった。​◎損失では大学に支援できない、ちなみに世界１のハーヴァード大では​　２０２２年に世界で相次いだ利上げの動きは、素人でも経済感覚があれば、容易に把握・予測できたはずだ。それが、「初年度は財政基盤の安定性を優先するためにリスクの高い資産の比率を低く抑えた」から、大赤字となった。ドグマに縛られ、「債券比率低減、株式比率高め」と機動的に運用比率を変えないなど、アホか、と言いたくなる。　ＪＳＴによると、助成財源はファンドの財務状況や当期損益なども踏まえて決める。文部科学省によると、「運用益の範囲内で助成をするため、成果が出なければ支援が難しくなる」としている。　大学ファンドは、はや羊頭狗肉の趣となった。​　ちなみにアメリカのハーヴァード大学（写真）は、基金で不動産や未公開株などのオルタナティブ投資を進め、２０１８年に収入の約３５％にあたる２０００億円超もの運用益を得た。利益の一部もファンドに組み入れているから、約３０年前に８０００億円程度だった基金は２０１９年では４．５兆円という巨額寄金に膨らんでいる。​◎ＧＰＩＦの年金ファンドは１．５％と低利回りだがともかく運用益を確保​　一方、同日発表された同じ公的ファンドである公的年金を運用する年金積立金管理運用独立行政法人（ＧＰＩＦ）の方は、ほずかだがきっちりと運用益を出した。２０２２年度の運用益は、２兆９５３６億円だった。３兆円弱というと巨額に見えるが、運用資産残高は２００兆円もある。利回りは１．５％ほどだから、「わずか」と言うのも的を射ている。　この運用益の大半は、資金の約２５％を振り向けている国内株式で、それが２兆７２８８億円もあった。単純に１００％を国内株式で運用していたら、１０兆円を超える運用益になった計算だが、公的年金が資金だから、ほぼ４分の１ずつ、外国株式、国内債券、外国債券とバランスをとった運用をするのも仕方がない。　ちなみに外国株式は１兆１３２７億円のプラスだったが、やはり債券は国内・外国ともマイナスで、国内は８５１７億円、外国は５６２億円の損失となった。​◎大学ファンドは抜本改革を​　利回り１．５％と、わずかではあってもＧＰＩＦは黒字を出した。それなのに、大学ファンドが１年目でこれだけの損失を出したのは、やはりシロウトの運用と断じるしかない。　大学ファンドの目的は、「世界と伍する研究大学の実現に向け、必要となる支援を長期的・安定的に行うための財源を確保すること」だが、これほどお寒い初年度では、助成できるだけの財源が確保できるか危うい、と言うしかない。抜本的な改革が必要だ。​昨年の今日の日記：「僕の出した翻訳書が大学入試問題に採用されていた！」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202207100000/​

  2023.07.10

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  ＳＤＧｓ、理想化された幻想：旧石器人＝自然人は時に膨大なムダをし、時には共食いもした

  　昨今、はやりのＳＤＧｓ（持続可能な開発目標）、聞こえが良いせいか、企業、大学、研究所などで高く目標に掲げられる。​◎厳しい自然人の生活、文明との接触は大きな悲劇を生んだ​　それ自体、いいことだから、文句のつけようがないが、中には自然状態で暮らしてきた先史人を理想化した言い方が、僕には気になる。もし先史人が、冒頭のＳＤＧｓを言い立てる人たちに何か言えるとしたら、「とんでもない」、「買いかぶりもいいとこ」と言い切るだろう。　自然状態で暮らしていくことは厳しく、実際に先史時代さながらの生活をしていた自然民族が文明社会と接触すると、時には文明社会から暴力的に攻撃され、あるいは文明社会のもたらした伝染病に感染し（野生人は免疫を持たない）、大きく人口を減らしたり絶滅したりしたが、辛うじて生き残った人たちは、文明社会に取り込まれて暮らすようになる。ただ、文明社会で生きていく術の教育も技術も持たないから、ほとんど「保護」されて生きることになるが。​◎「獲り過ぎない」、「余すところなく使う」は本当か​　最近、ある文で、野生人が「食糧資源を獲り過ぎない」、「得た食物は余すところなく使う」と理想化されて書かれていたが、書いた人は民族誌や生態人類学、考古学を知らない人なのだろう。　現代世界には、氷河期を生きた多様な大型動物（マンモス、マストドン、ケサイ、オオツノジカ、オオナマケモノなどなど）は悉く絶滅して見られない。イエローストーン国立公園を中心にバイソンが生き残っているが、旧石器時代には、さらにこれとし別に大型２種のバイソンもいた。　これらは、氷河期末の環境変動が原因の１つと考えられるが、この頃、北米大平原に姿を現した人類＝クロヴィスハンターが絶滅に追いやったというのが、最も有力な仮説だ。​◎北米のあちこちに大量のバイソンを追い落とした遺跡​​　北米大平原には、群れで爆走するバイソンの生態を利用し、先史インディアンが断崖上からバイソンを追い落とした遺跡がいくつもある。例えば、世界遺産にもなっているカナダ・アルバータ州の「ヘッド・スマッシュト・イン・バッファロー・ジャンプ」（写真）は有名だ。崖から追い落とされたバイソンは、脚を折ったりしてほとんど助からなかった。　あまりに大量のバイソンを一挙に捕獲する「追い落とし」作戦では、多くの肉は利用されず、腐敗するにまかされるか、オオカミ、コヨーテなどの死肉動物漁り屋の食物になった。​◎ウマの追い落とし猟、旧石器フランスのソリュートレ遺跡​　こうした追い落とし猟は、フランスでも２万年前頃のソリュートレ遺跡（ソリュートレ文化のタイプサイト）でも行われた。ここでの標的はウマで、群れを追い落としたため、累々とした骨が残された（想像図）。​　その数から、ソリュートレ人が資源を無駄なく使い切ったとはとうてい思われない。ちなみにウマは、北米では氷河期末の大型動物大絶滅期に、ユーラシアでももう少し後に大半が絶滅し、現生のウマは、その中から家畜化されて辛うじて生き残った個体の子孫である。　かつての平原インディアンのように、狩ったバイソンの肉を「ペミカン」という保存食に利用した例はあるが、それはずっと後世の話だ。​◎エピオルニス、モアを絶滅させた島に渡来した人類​　さらに、これもずっと後世の話だが、マダガスカル島にかつて棲んだ巨鳥エピオルニス（走鳥類）も、１５００年前にボルネオ島南部から渡ってきた人類集団が島に植民すると、瞬く間に絶滅した。巨大なキツネザルも、同じ運命をたどった（１７年１０月８日付日記：「絶滅した巨鳥の悲哀(上)；史上最大の鳥、その名も象鳥、マダガスカル島のエピオルニスは巨鳥ゆえに滅ぶ」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/201710080000/を参照）。　ニュージーランドの別の巨鳥モア（走鳥類）も、やって来た最初の植民者のマオリによって絶滅させられた。マオリは、そこにいた多種多様のモアを狩り、彼らが到来した７００年前頃から１５０年から２００年で悉く狩り尽くして絶滅させた（１７年１０月９日付日記：「絶滅した巨鳥の悲哀(下)；ニュージーランドの巨大モア、観たのは剥製のみ；生きたジャイアントモアを観たかった」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/201710090000/を参照；写真と絵。写真は南島クイーンズタウン、ワカティプ湖畔に建つモアの像）。​​​◎飢餓に瀕すれば人肉嗜食も​　そもそも旧石器人や後世の自然人は、環境収容力の範囲でしか人口を増やせなかった。それ以上増えれば、あぶれた者たちは新天地に向けで出て行くか、嬰児を殺して人口調節が行われた。　それでも、時には獲物が捕れず、飢饉に瀕したこともある。アメリカ中西部、Mancos Valley に暮らしていた９００年頃の先史インディアンのアナサジ文化人は、飢餓の時にカニバリズム（人肉嗜食）を行っていた。遺跡から出る２０数体分の人骨は、他の獣骨と同じような割られ方をしていた。　つい最近も、科学誌で１４５万年前のヒト族が人肉嗜食をしていた痕の検出が報告された（７月７日付日記：「人類が人間を食べた最古の痕跡確認、半世紀以上前にトゥルカナ湖東岸で発見のオコテ層出土ヒト族脛骨で」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202307070000/）。​◎自然人には絶対になりたくない！​　ちなみにＳＤＧｓで理想化される自然人と僕が暮らすか、と問われたら、「絶対に嫌！」と拒否する。文明社会の怠惰な生活に慣れきってしまっているから、狩猟採集で生計を得るなんて、とうてい無理と確信するからだ。​昨年の今日の日記：「追悼、安倍元首相の急逝を心から悼んで」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202207090000/​

  2023.07.09

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  札幌の旅(１)：武漢肺炎の不安消え、観光地のあちこちに外国人観光客がいっぱい

  　今や恒例となったが、この７月３日～６日まで、３泊４日で札幌に行ってきた。　おおむね好天に恵まれ、行きたい所に行けた上々の旅だった。​◎久々のテレビ塔からの眺めは超高層ビルに囲まれてイマイチ​​　最初の日は、着いたら札幌の宿に荷物を預け（早すぎてチェックインできない）、幌見峠のラベンダー園に行った。２年前に訪れたのは６月２０日だったのでやや早すぎ、まだ咲いていなかったが、今回は早咲きの品種は満開に近かった（写真）。標高３２０メートルの峠にあるので、ここからは札幌市街地も遠望できる。​​　２日目の４日は、好天を利して朝、藻岩山（５３１メートル）に登った。藻岩山には、これで４～５回、登っているが、今までで一番天気が良く、それだけに山頂からの札幌市街地の遠望は最高だった（写真）。　昼前には下山し、ほぼ何十年ぶりかでテレビ塔に登った。こちらはエレベーターなので、料金１０００円が要った。しかし何十年前と異なり、周囲に超高層のビルが建ち並び、眺望は良くない（写真＝唯一、大通公園には高層建築はないので、見晴らしは抜群）。これならＪＲタワーの方が眺望がいいし、しかも料金は安い。​　その後、大通公園で小休止し、北大植物園に行った。都心の中の緑の一角だが、花が淋しく、博物館も旧式の展示で展示物の写真が撮りにくい。​◎小樽の天狗山にも脚で登る​​　３日目の５日は、小樽に行って、天狗山（５３２メートル）に登る。天狗山には、やはり２年前に訪れているが、この時は脚をケガしていたためロープウエーで登ったが、今回は、登山口から地蔵コースを通って脚で登った。ロープウエー駅のある展望所で小樽市街地を遠望したが、やや霞んでいて、前回見えた増毛連山などは見えなかった（写真）。　午後は札幌に戻って、国営滝野すずらん丘陵公園に行った。ここは広さ４００ヘクタールと広大で、疲れていない朝から行けば、見応えがある所なのだろうが、天狗山登山の疲労がたまっていて、あちこちを訪れられなかった。少し悔いを残した。ただラベンダー園は満開に近く、若いカップルの前撮りのシーンに出合った（写真）。​​​◎最終日は雨を受けてみずみずしい緑の北大キャンパスを散策​​　最終日の６日は、午後に飛行機で帰らねばならないうえに、起床時に外を見ると天気予報どおり雨。だがその雨も７時前にはやみ、チェックアウトして荷物を預け、ホテルに近い北海道大学キャンパスまで散策に出た。雨を受けて、深い緑はみずみずしさを増していた（写真）。１０時からの総合博物館オープンに合わせて入場し、参観。以前に見ていたので、さほどの感銘はない。　１０時４５分にはホテルに戻り、スーツを受け取って、ＪＲに乗り、新千歳空港に向かった。​◎滝野すずらん丘陵公園など外国人観光客でいっぱい​　武漢肺炎懸念が薄れ、インバウンド旅行者が北海道にも押し寄せている。　北大植物園、滝野すずらん丘陵公園、北大キャンパスでは特に目立った。ただし、幌見峠のラベンダー園には、簡体字で中に入るなという表示が出ていて、マナーの悪い中国人（大陸）が踏み荒らすことがあるのは、痛いだろう。僕が訪れた時も、あちこちで中国語が聞こえた。　滝野すずらん丘陵公園では、子ども連れの外国人観光客が多く、ひょっとすると日本人来訪者より多かったのではないか、という印象だ。　一番驚いたのは、滝野すずらん丘陵公園の手前の滝野峠バス停で、行きに２組７～８人（１組は白人、もう１組は東洋系）が降車し、帰りには５人の外国人観光客が乗ってきたことだ。全員若者で、日本人は１人も降車・乗車はなかった。​◎外国人観光客の人気スポットになっていた滝野霊園​​　同バス停の前には、僕にはグロテスクにしか見えないのだが、巨大なモアイ像を林立させ、さらに頭だけ出した頭大仏、そしてストーンヘンジの模造を飾った真駒内滝野霊園が広がる（写真＝写真に撮れなかったのでネットから借用）。以前に、知人の両親の墓参りで訪れたことがある。​　頭大仏は分かるが、霊園になぜモアイ像やストーンヘンジの模造があるのか分からない。しかし今や、それが観光スポットになっているようなのだ。日本人の若者も来るのだろうが、若い外国人観光客がこれだけやって来るのは、海外の旅行ガイドに紹介があるのだろう。　彼らには、札幌らしい、滝野すずらん丘陵公園や北大植物園、北大キャンパスをもっと訪れてほしいと思う（けっこう外国人観光客はいたけれど）​昨年の今日の日記：「札幌周遊記２０２２⑫：快晴の朝、さあ塩谷丸山のリベンジ登山に」​https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202207080000/​​

  2023.07.08

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  人類が人間を食べた最古の痕跡確認、半世紀以上前にトゥルカナ湖東岸で発見のオコテ層出土ヒト族脛骨で

  　ケニア、トゥルカナ湖東岸で１９７０年にメアリー・リーキーに発見され、詳しい研究がなされないままケニア国立博物館に眠っていた約１４５万年前のヒトの左脛骨骨幹部 （ＫＮＭ－ＥＲ７４１）に、アメリカの女性研究者らが石器のカットマーク（切り傷）を検出し、この頃のヒト族に人肉食が行われていたことが分かった。　研究結果は、２０２３年６月２６日付で科学誌「Scientific Reports」に発表された。​◎約１４５万年前のＫＮＭ－ＥＲ７４１脛骨​​　スミソニアン国立自然史博物館の古人類学者ブリアナ・ポビナー博士（写真）は、２０１７年、ナイロビのケニア国立博物館を訪れ、そこに収蔵されている数十点のヒト族の骨を調査した。ポビナー博士が探していたのは、骨に残る肉食動物の噛み痕だった。それが見つかれば、初期人類がハイエナやライオンなどのネコ科などの捕食動物に食べられていたことの証明になるからだ。　ところが、そうした噛み痕は全く見当たらなかった。その代わり、ヒト族の左脛骨骨幹部１点（ＫＮＭ－ＥＲ７４１）に石器の切り痕のようなものがついているのを見つけた。メアリー・リーキーが、半世紀以上前にトゥルカナ湖東岸で発見した骨だった。骨は、クービ・フォラ層群のオコテ層の出土だから、年代は約１４５万年前となる。　似たような傷は、トゥルカナ湖西岸から見つかっていた同時代のアンテロープなどの下顎、橈骨、肩甲骨化石にも見られた。おそらく初期人類が得た草食獣の死体から、石器で肉を切り取った痕だ。​◎傷を正確に型取りし、８９８点の対照例と比較​　ヒト族左脛骨の傷が、石器のカットマークだとすれば、ヒト族が人肉食をしていたことの決定的証拠になる。なおヒトの骨のカットマークは、これまでスペイン、グラン・ドリナ洞窟ＴＤ６層（約７８万年前）を初め、ネアンデルタール人骨やホモ・サピエンス人骨でも多数の確認例がある。オコテ層のＫＮＭ－ＥＲ７４１の傷が石器のカットマークと確認されれば、人肉食の歴史は１４５万年前まで遡ることになる。　ポビナー博士は、歯科医が歯型を取るのに使う材料で傷痕の型を取り、共同研究者のコロラド州立大学の古人類学者マイケル・パンテ博士に送った。　パンテ博士は、パデュー大学の博士課程で人類学を研究するトレバー・キービル研究員と共には、傷痕の３Ｄスキャンを作成、実験で動物骨につけられた石器による切り痕、動物による噛み痕、踏みつけ痕など合計８９８点と比較した。この分析により、ＫＮＭ－ＥＲ７４１の１１カ所の傷のうち少なくとも９例が石器によって付けられたものであることが判明した。​◎ホモ・エレクトスが支配的になっていた東アフリカだが他種ヒト族も残存​　カットマークの被害者の属性は分からないし、カットマークを付けたヒト族も分からない。しかし１４５万年前頃のトゥルカナ湖東岸からは、ホモ・エレクトス化石が大量に見つかっており、彼らはアシュール・インダストリーの石器文化を発展させていた。　一方で、まだこの頃、ホモ・ハビリスとパラントロプス・ボイセイが残存しており、加害者も被害者も、その可能性は残る。　しかし東アフリカではホモ・エレクトスが支配的なヒト族の地位を固めていたので、カットマークを付けて人肉食をしたのはホモ・エレクトスと考えた方が適切だ。　もしＫＮＭ－ＥＲ７４１もホモ・エレクトスだったとすれば、同一種間のカニバリズムとなる。しかしホモ・ハビリスかパラントロプス・ボイセイだったとすれば、ホモ・エレクトスは明らかに異種動物と認識していただろうから、普通の獲物の肉と思って食べたのかもしれない。　いずれにしろ人類の人肉食の歴史は、１４５万年前まで遡ることになった。​​​​　下の写真は上からヒト族の左脛骨に付けられた傷、中央は動物化石の石器のカットマークでａ）はアンテロープの下顎、ｂ）アンテロープの橈骨、ｃ）は大型哺乳類の肩甲骨、下は石器で肉を切り取られたと見られる左脛骨と切り傷の拡大部。切り傷はすべて同じ方向を向いており、石器を扱う手が、握りを変えることなくすべての痕を連続してつけたことを示している。​​​​昨年の今日の日記：「札幌周遊記２０２２⑪：お昼寝中だったヒグマ、キミはどの系統？　３系統ある北海道のヒグマ」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202207070000/​

  2023.07.07

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  本で読んでいたがまさか実見できるとは思ってみなかったメテオ・クレーター（バリンジャー隕石孔）の思い出

  　アメリカ、アリゾナ州の荒野に「メテオ・クレーター」という太古のミニ小惑星が衝突した痕がある。「バリンジャー・クレーター」、「バリンジャー隕石孔」とも言う。​◎アリゾナの荒野を走ってたまたま見かけた標識に誘われ​　それは、全くの偶然だった。数十年前、運転が超達者な友人とアリゾナの国道４０号を、東の「ペトリファイド・フォレスト（化石の森）国立公園」（６月２７日付日記：「赤褐色の砂漠の中の「化石化した木」の森の公園、ペトリファイド・フォレストの思い出」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202306270000/​を参照）を目指し、フラッグスタッフの街を抜けて５０キロほど行った時、不意に「Meteor Crater」の標識を目にしたのだ（写真＝当時見たものとは違っている）。​　昔、本で読んだあのバリンジャー隕石孔ではないか、と友人に頼んで国道４０号を外れて標識の示す脇道に入った（地図：画面中央やや左の青い丸）。​　緩やかな丘を登っていくと、そのクレーターがあった（１９年６月１４日付日記：「探査機『はやぶさ２』の造ったクレーターのささやかさを痛感させる小惑星大衝突の形成した巨大クレーター」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/201906140000/を参照）。​◎３５ミリレンズ内に収まらない広がり​​　展望台から観て、深い感動に包まれた。そこには写真でしか知らなかった、紛れもないあの「バリンジャー隕石孔」が広がっていたのだ（下の写真の下はランドサットから見たバリンジャー隕石孔）。まさか自分の目で見られるとは、思ってもみなかった後景だ。​　直径１．２キロ、深さ１８０メートル。約５万年前に直径５０メートルくらいの超ミニ小惑星が衝突した痕だ。​　クレーターの中心の底には、何か施設らしいものが見えたが（写真）、降りていくのは躊躇われ、結局、クレーターの縁をうろついて写真を撮っただけだった。もっとも展望台はもちろん、どの縁から見ても、僕の持っていた３５ミリレンズではクレーター全体は収まらなかった。広角レンズを持って行かなかったことを悔やんだ。​​◎５万年前のカタストロフ​　超ミニ小惑星が衝突した５万年前、アメリカ大陸にはまだ人類は到達していない。したがってこの激しい衝突を見たのは、周囲に群れていた夥しいバイソンだけだっただろう。　しかしそのバイソンたちも、衝突の瞬間に死滅したはずだ。　衝突の瞬間、３～４キロの範囲の物はすべて蒸発した。その後、衝突によって発生した巨大な火の玉によって半径１０キロ以内のあらゆる物質は焼け焦げ、時速２０００キロに及んだ衝撃波は半径４０キロ以内のサボテンなどをなぎ倒しただろう。　その結果、半径１４キロから２２キロまでのすべては、何もない荒野に変わった。　周辺からは３０トンもの隕鉄の破片が発見されたから、鉄金属超ミニ小惑星だったのだろう。２０世紀初頭、クレーターに名を残すダニエル・バリンジャーが、大量の鉄とニッケルがクレーターの底に埋まっていると考え、掘削を開始したが、ほとんど何も見つからなかったと言われる。超ミニ小惑星本体の大半は、激しい衝突エネルギーで蒸発してしまったのだ。​◎チャリャービンスクの「火球」はさらに小さかった​　２０１３年２月１５日に落ちたロシア、チャリャービンスクの「火球」は、直径２０メートルくらいの超ミニ小惑星が衝突したと考えられている。ラブルパイル小惑星だったのか、はるか高空でいくつかの小塊に分裂し、その一部が地表に衝突したから、大惨事は免れたが、それでも衝撃波で負傷者約１０００人の大きな被害を出した。　３月２７日付日記：「相次いで超ミニ小惑星が通過、２３年後には極微の可能性ながら地球衝突の注意報の出されたものも」（https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202303270000/を参照）の日記で記したように、この程度の超ミニ小惑星は、毎年何個も地球近傍をかすめている。今なら、チャリャービンスク並みの超ミニ小惑星も、事前に発見されているだろう。​昨年の今日の日記​：「ロシア侵略軍によるミサイル無差別テロ攻撃に耐える中、ウクライナに希望の光明＝ズメイヌイ島を奪還」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202207030000/​注　小旅行に出かけるため４日ほど休載します。​

  2023.07.03

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  人間の味覚を高めた太古の植物毒を回避する仕組みの舌の「苦み」受容体

  　朝のいれたてのコーヒーが好きだ。わずかに残った眠気を一掃させるような、あのさわやかな苦みは最高だ。​​　またたとえば、先日、食べたタラの芽の天ぷら（下の写真の上）の苦み。あれも、天ぷらの旨みを引き立てる。フキノトウ（下の写真の下）も、いい。​​◎舌の受容体​　ところでヒトは、どうして苦みを旨く感じるのだろうか。　タラの芽やフキノトウのように、我々が食べるのは萌え出たばかりの若い芽だが、植物はこの時、様々なアルカロイドを産生している。昆虫の幼虫に食べられないように、ヒトに苦いと感じられる毒素を出しているのだ。それを、ヒトは美味いと感じる。　おそらく祖先の人類も、苦いものを毒として避けていたのだろう。何か分からないが、口にして、それが苦いと感じて吐き出し、毒に当たることを避けたのだ。　人間の舌には、味覚受容体がある。甘みと旨みを感じる受容体は、それぞれ１つずつある。旨みの主体のアミノ酸も、１つの受容体で美味いと知覚する。​◎苦みの受容体は２６種類も​​　ところが苦みの受容体は、実に２６種類もある。それだけヒトは、毒素を避ける仕組みを作っていたのだ。ところが実は、すべて自然の物を食べていた人類祖先は、もっと苦み受容体を発達させていたかもしれない。というのは、ヒトに最も近いチンパンジー（写真）は２８もの苦み受容体がある。現代人に至って、少なくとも２つの受容体を失っていたのだ。​　しかし、それも過渡期かもしれない。今のように、毒素をもともと食品から排除している現代人ホモ・サピエンスでは、苦み受容体を持つ意義は薄れているからだ。　例えば毒素を作る植物を食べない肉食のネコ科では、苦み受容体は霊長類の約３分の１と少なくなっているし、海に棲む鯨類に至ってはゼロ、となっている。​◎農耕を始めて不要になったはずの舌の受容体が思わぬ効用​　このように、次第に自然の毒素を避けられるように進化をした人類は、農耕を始めた新石器時代に至って、自然の植物の産生する毒素から無縁になって、残った苦み受容体で、例えばタラの芽やフキノトウの天ぷら、コーヒーを美味い、と賞味するようになったわけだ。　思わぬ受容体の効用で、我々の味覚はなんと豊かになったことか。​昨年の今日の日記：「札幌周遊記２０２２⑦：円山原始林の登山路で森林浴しながら快適な登山」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202207020000/​

  2023.07.02

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  ワグネルのプリゴジンは副司令官のスロビキンと通謀か、テロ国家ロシアに民間軍事会社が３７社も乱立

  　ワグネルの武装反乱の背後には、やはりロシア軍幹部の影があった。​　昨年１０月から今年１月まで、ウクライナ侵略の軍事作戦を率いていた現副司令官のセルゲイ・スロビキンが、反乱を事前に把握していたようだ（写真＝プーチンと一緒に写真に収まるスロビキン、２０１７年）。​　ワグネルの部隊がロシア正規軍のさしたる抵抗も受けずに、モスクワの南２００キロまで進出できたのは、親ワグネルのスロビキンらの指示があったのだ。​◎１月に副司令官に降格されていたスロビキン​　スロビキンは、中東シリアに派遣されて以来、ワグネルのプリゴジンと昵懇で、スロビキンが総司令官就任に当たっては、侵略戦場で共に戦っていたプリゴジンの強力な推薦があった。そのためスロビキンが総司令官を務めていた時は、ワグネルとの協同がスムーズに行っていた。　ところが１月にスロビキンは突然、副司令官に格下げされ、後任にワグネル部隊とプリゴジンとしっくりいかない参謀総長ゲラシーモフが総司令官に就いた（１月１３日付日記：「笑止！　されど不当で差別的なスターリニスト中国のビザ新規発給停止に強く抗議、我々はなめられている」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202301130000/　追記：総司令官にゲラシーモフ」を参照）。​◎スロビキンはワグネルの秘密ＶＩＰメンバー​​　その後、プリゴジンはゲラシーモフと国防相のショイグに装備が不足しているなどと不満を並べ、反乱直前には「弾薬はどこだ！？」と両者を名指しで激しく攻撃までしていた（写真：ショイグ＝右＝とゲラシーモフ）。​　当然、副司令官に降格されたスロビキンも、ゲラシーモフやショイグに不満を持っていただろう。　ＣＮＮが３０日朝伝えたところによると、スロビキンはワグネルの秘密のＶＩＰメンバーであったことが、ワグネルの文書から明らかになったという。スロビキンは、ワグネルの個人登録番号も持っていた。それ以外にも、少なくとも３０人のロシア侵略軍や情報当局の高官らもワグネルのリストに掲載されていて、こうした高官らもワグネルのＶＩＰメンバーだとしている。​◎事前にスロビキンと打ち合わせたが、思惑は頓挫​​　そのスロビキンは、２４日夜のワグネルの武装反乱の停止後は姿を見せていない（写真）。２８日夜、ロシアのメディアは国防省に近い複数の情報筋から、スロビキンは拘束されていると伝えた。別のロシアのジャーナリストは、スロビキンは「この３日間、家族と連絡を取っていないし、警護役とも連絡が取れない」と言う。​　アメリカの複数の政府当局者はスロビキンがワグネルの「武装蜂起に共感していた」と述べた、とロイター通信は伝える。　プリゴジンは、事前にスロビキンと詳細な打ち合わせを行い、ロシア軍の支援を期待し、ゲラシーモフとショイグの失脚を狙っていたらしいことがはっきりした。蜂起後に１日で矛を収めたのは、プーチンの思わぬ強い警告とスロビキンの拘束があったからなのだろう。　ロシア侵略軍も一枚岩でないことは、これではっきりした。ウクライナ防衛軍の反攻に拍車がかかった時、ロシア侵略軍は崩壊する可能性も出てきた。​◎民間軍事会社３７社が乱立​　ところで、テロ国家ロシアには、ワグネルの他に、多数の民間軍事会社が乱立しているという。国際情報会社によると、その数は３７社もあり、うち２５社は正規軍の兵力を補うためにウクライナ侵略戦争に加わっているという。また３７社の約３割の１１社は、ウクライナ侵略開始後に急造されたようだ。　西側自由主義国では、正規軍以外に、戦車まで装備する武装集団が多数活動しているというのは、とうてい理解できない。　ワグネルが最も古く、最大規模だったが、それも今は解体寸前だ。しかし、それを補う民間軍事会社がこれほど多数作られているのは驚きだ。中には国営天然ガス企業のガスプロムやオルガリヒが作った会社もある。​◎ガスプロムの民間軍事会社はワグネルと軋轢​　ガスプロムの作った「ファケル」、「ボストーク」といった軍事会社は、バフムト攻略作戦にも参加していて、主体となっていたワグネルと軋轢が生じていたという。　プーチンやショイグら侵略軍幹部は、ロシア正規軍の別働隊、補完勢力として、民間軍事会社を利用している。しかしワグネルの反乱で、彼らも民間軍事会社を利用するリスクには気がついたに違いない。　今後のウクライナ侵略戦争に影響を及ぼすのは必至だ。​昨年の今日の日記：「札幌周遊記２０２２⑥：曇天の塩谷から戻り、塩谷丸山から札幌の円山登山に変更」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202207010000/​

  2023.07.01

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  ＴＯＢという明暗；東芝は損失、ＪＳＲは利益だが、これはずっと持ち続けたかった

  　「貯株」を投資方針にする僕は、買った株をめったに売らない（１７年１０月２２日付日記：「『貯株』の思想＝コツコツ買い貯め、決して売らないのが極意、配当金・分配金で再投資の好循環」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/201710220000/を参照）。​◎届く配当金は再投資に​　だから最少単元の１００株の株を含めて、多くの銘柄を持っている。今、３月期末の会社の期末配当が続々と届いていて、それがまた楽しみでもある。　届いた配当金は、使わない。貯めておいて、ある程度まとまったら、新たな株に再投資する。それが、銘柄が増える理由でもあるのだが。　さて株の発行企業が、市場に流通しているまとまった株を、一定のプレミアムをつけて買い募集するのがＴＯＢ（株式公開買い付け）だが、今年は２銘柄も該当してしまった。　ＴＯＢに該当するなど、本来は隕石に当たるほどレアケースなのだから、１年に２銘柄、というのも珍しい。昨年も、１銘柄、当たってしまったから（たった１００株＝１単元だが、その結果、代理人の証券会社に持っている株を移管するなど、手続きが面倒だった）、２年連続でもある。​◎東芝のＴＯＢ、大幅な損失​​​​　通常、ＴＯＢは時価に対して３０％程度のプレミアムをつけるから、多くは儲かるのだが、今回の２銘柄、具体的には東芝とＪＳＲでは明暗が分かれた（写真＝上は東芝が本社を置く浜松町ビル、下はＪＳＲが本社を置く汐留住友ビル）。​​　東芝は、実は高い時に買っていたから、含み損を挽回できないままでＴＯＢとなる。ＴＯＢ価格４６２０円では大幅な損失になる。不服だからと言って応じなければ、「スクイーズアウト」と言って、強制的に買い取られてしまう。　やむなし、である。ＴＯＢに応じれば手数料無しで４６２０円で買い取ってもらえるから、応募するしかない。大きな実現損は、他の株の利益で相殺することになろう。​◎ＪＳＲは大幅な利益だが、「ありがたくない」ＴＯＢ​　一方のＪＳＲは多額の含み益を強制的に実現益にされてしまう。ＴＯＢ価格は、４３５０円である。　だからといって、「ありがたい」かと問われれば、「ありがたくない」。どちらかというと迷惑でもある。　と言うのも、ＪＳＲは価格が９００円くらいの時に買っていたから、それを分母とすれば分子の配当の配当利回りが高く、ずっとホールドするつもりだったのだ。　売却益は、一次的だ。しかしインカムゲインは、無配にならない限り、半永久的だ。　その機会を奪われてしまう。​◎ダイナミックに変身し続ける姿に共感したが​　ＪＳＲは、僕が購入した時は「日本合成ゴム」という社名だった。日本の合成ゴム製造の草創期を開いた会社でトップメーカーでもあった。　しかしその後、液晶部材、半導体部材などに進出し、近年はライフサイエンス部門にも注力している。数年前には、なんと祖業である合成ゴム部門を他社に売却してしまった。　この会社の、時代に先駆けるようにダイナミックに変身していく姿に共感を覚え、「応援したい」と購入したのだった。その「応援団」の地位からも追われる。　残念である。​昨年の今日の日記：「生態を変え、２００年以上も孤立して生き延びているグリーンランド東南部のホッキョクグマ」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202206300000/​

  2023.06.30

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  ＴＯＢという明暗；東芝は損失、ＪＳＲは利益だが、これはずっと持ち続けたかった

  　「貯株」を投資方針にする僕は、買った株をめったに売らない（１７年１０月２２日付日記：「『貯株』の思想＝コツコツ買い貯め、決して売らないのが極意、配当金・分配金で再投資の好循環」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/201710220000/を参照）。​◎届く配当金は再投資に​　だから最少単元の１００株の株を含めて、多くの銘柄を持っている。今、３月期末の会社の期末配当が続々と届いていて、それがまた楽しみでもある。　届いた配当金は、使わない。貯めておいて、ある程度まとまったら、新たな株に再投資する。それが、銘柄が増える理由でもあるのだが。　さて株の発行企業が、市場に流通しているまとまった株を、一定のプレミアムをつけて買い募集するのがＴＯＢ（株式公開買い付け）だが、今年は２銘柄も該当してしまった。　ＴＯＢに該当するなど、本来は隕石に当たるほどレアケースなのだから、１年に２銘柄、というのも珍しい。昨年も、１銘柄、当たってしまったから（たった１００株＝１単元だが、その結果、代理人の証券会社に持っている株を移管するなど、手続きが面倒だった）、２年連続でもある。​◎東芝のＴＯＢ、大幅な損失​​​​　通常、ＴＯＢは時価に対して３０％程度のプレミアムをつけるから、多くは儲かるのだが、今回の２銘柄、具体的には東芝とＪＳＲでは明暗が分かれた（写真＝上は東芝が本社を置く浜松町ビル、下はＪＳＲが本社を置く汐留住友ビル）。​​　東芝は、実は高い時に買っていたから、含み損を挽回できないままでＴＯＢとなる。ＴＯＢ価格４６２０円では大幅な損失になる。不服だからと言って応じなければ、「スクイーズアウト」と言って、強制的に買い取られてしまう。　やむなし、である。ＴＯＢに応じれば手数料無しで４６２０円で買い取ってもらえるから、応募するしかない。大きな実現損は、他の株の利益で相殺することになろう。​◎ＪＳＲは大幅な利益だが、「ありがたくない」ＴＯＢ​　一方のＪＳＲは多額の含み益を強制的に実現益にされてしまう。ＴＯＢ価格は、４３５０円である。　だからといって、「ありがたい」かと問われれば、「ありがたくない」。どちらかというと迷惑でもある。　と言うのも、ＪＳＲは価格が９００円くらいの時に買っていたから、それを分母とすれば分子の配当の配当利回りが高く、ずっとホールドするつもりだったのだ。　売却益は、一次的だ。しかしインカムゲインは、無配にならない限り、半永久的だ。　その機会を奪われてしまう。​◎ダイナミックに変身し続ける姿に共感したが​　ＪＳＲは、僕が購入した時は「日本合成ゴム」という社名だった。日本の合成ゴム製造の草創期を開いた会社でトップメーカーでもあった。　しかしその後、液晶部材、半導体部材などに進出し、近年はライフサイエンス部門にも注力している。数年前には、なんと祖業である合成ゴム部門を他社に売却してしまった。　この会社の、時代に先駆けるようにダイナミックに変身していく姿に共感を覚え、「応援したい」と購入したのだった。その「応援団」の地位からも追われる。　残念である。​昨年の今日の日記：「生態を変え、２００年以上も孤立して生き延びているグリーンランド東南部のホッキョクグマ」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202206300000/​

  2023.06.30

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  ＮＴＴ株、２５分割へ、一挙に増える株式数と株主数

  ​　ＮＴＴ（写真）は７月１日付で、自社株１株を一挙に２５株に分割する。​　これによりＮＴＴ株は９０５億株になり、東証上場企業としてトヨタの１６３億株を抜いて、ダントツの発行済み株式数となる。​◎誰でも小遣い程度でＮＴＴ株が買える​　分割それ自体は、企業価値に影響はない。したがって株価も２５分の１になるので、従来の１００株＝１単元で最低投資額４０万円だったものが、１万６０００円くらいに下がる。　子どもやサラリーパースンの小遣いでも、１単元買えることになる。　高成長企業の場合、株式分割で例えば１株を２株に分割した場合、当初は株価は半分に下がるが、その後次第にじり高歩調となり、数年後には元の株価に回復することが多い。だから株式分割は「買い」なのだが、高成長企業とは言えない巨大企業のＮＴＴ株の場合、とてもそれほどの高パフォーマンスは得られないだろう。​◎ドルコスト法で平均投資金額の平準化も可能​　個人株主の場合、今回の分割は、大きな意味を持つ。最低投資単位が大幅に下がるから、買いやすいのは前述のとおりだ。　例えば、毎月月給日に１単元＝１００株買うと決め、そのとおりに投資していけば、長期的に株価が平準化される「ドルコスト法」になる。今までは４０万円ちょっととまとまった資金がなければ買えなかったから、ドルコスト法は使えなかった。高値の時に買ってしまえば、高値づかみになる。　ＮＩＳＡ（来年からは新ＮＩＳＡ）で、毎月、給料日に１００株ずつ買うとすれば買いやすくなるし、合理的な投資法ともなる。株主数は、増えるだろう。​◎端株が単元株に​　またＮＴＴは、これまで何度も株式分割を繰り返してきた。だから個人株主の場合、単元株では手放しても、市場では売れない端株を持っている人は多いに違いない。　個人的には、僕もＮＴＴ株の端株を１６株持っている。　かつて政府保有株の売り出しがあった時、購入した名残だ。けっきょく株価は、売り出し価格を上回らず、ずるずると下げた。数年後に見切りを付けて、損切りした。僕が、お上が売り出す政府保有株は一般国民から巻き上げる御用金だと思いを強くしたのは、その個人的体験がある。実際、その後、日本郵政株などで、同じことが繰り返された。　しかし損切りしても、手元には市場売却できない端株が４株残り、その後、さらに分割があって、結局、端株は１６株に増えた。　今回の２５分割で、保有株は一気に４００株に増える。つまり４単元になる。​◎ｄポイントの優遇は魅力的​　これで、市場でいつでも売却できることになる。売っても、せいぜい５～６万円の小遣い程度だが、それでも株主として議決権を持てる（端株では議決権はない）。今後、株主総会のたびに、議決権の行使の案内が来るだろう。　僕のように、思わぬ形でＮＴＴの正式株主になる人も多いに違いない。​　ちなみに今回の分割で、株主優待の条件は据え置かれた。優待は、２年以上にわたり１単元１００株以上を保有する株主に対し、「ｄポイント」が１５００～３０００ポイント付与される（写真）。​　僕も、分割後もＮＴＴ株を保有し続ければ、２年後に最低の１５００ポイントがもらえる。これも、ちょっとした楽しみかもしれない。​昨年の今日の日記：「スターリニスト中国、対ロシア経済制裁の抜け駆けで割安化したロシア産原油の輸入を増やす」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202206290000/​

  2023.06.29

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  ワグネル反乱はロストフナドヌー市民に歓迎される一方、ロシア空軍は多大な損害、プリゴジンの運命は？

  　２３日夜、プーチン政権の軍部に反乱を起こした民間軍事会社ワグネルと創設者のプリゴジンは、１日で反乱の矛を収めたが、その過程で興味深い事象が目撃された。​◎ワグネル、ロストフナドヌーで市民と交歓​​　まずワグネルが、ロシア国民の間で人気が高いことだ。ワグネルが進駐したロストフ州の州都ロストフナドヌーでは２４日、ワグネルの旗を持った市民から歓迎のエールが送られ、抱擁し合ったり、一緒に写真を撮ったりする様子があちこちで展開された（写真）。　ワグネルは、その後、首都モスクワまで２００キロに迫る地点まで北上したが、その間、ロシア正規軍に制止されることはなかった。プリゴジンの元に戻るという指令で、自発的に引き返した。​　このことから、ロシア正規軍にも反ワグネルの気運は乏しかったと見られる。ただし、その途中で、ロシア空軍のヘリ７機を破壊、またイリューシン２２機も撃墜され（写真）、パイロットなど１３人以上の兵士が死亡した模様だ。空軍は昨年２月のウクライナ侵略以来、１日としては最大の損害を出した。​◎プリゴジンは身柄拘束中か​　プーチンは２４日夜、緊急のテレビ演説で「内部の裏切りを含め、あらゆる脅威から国家と国民を守る。我々が直面しているのはまさに裏切りだ」と、激しくワグネルを非難した（写真）。プリゴジンが「流血を避けるため」として部隊を撤収させたのは、この「裏切り」断罪以後だ。おそらくプリゴジンは、標的は国防相ショイグと参謀総長ゲラシーモフであって、行動を起こしてもある程度、プーチンの理解を得られると思っていたのかもしれない。　そのプリゴジンだが、２４日夜以降、ＳＮＳの声明は途絶えたが、２６日、居所を明らかにしないままＳＮＳで弁明の声明を出した。　憶測だが、約束されたベラルーシの亡命の前に、身柄を拘束されているのだろう。したがってベラルーシに本当に亡命できるか、分からない。​◎プーチン、ルカシェンコと談合、プリゴジンの処置を打ち合わせか​　プーチンにとっては、ワグネルの反乱は自分の盤石な統治に対し、世界に向けて疑いを投げかける行為で、メンツは丸潰れだ。「裏切り」という最大限の非難も重い。　たとえプリゴジンがベラルーシに身柄を移されても、自由にはさせられず、いずれ刺客に暗殺されるだろう。　事実、ロシアの独立系メディアは、ロシア軍の参謀本部に近い情報筋の話としてプーチンが治安部隊に「プリゴジン氏の始末」を命じたと伝えた。「始末」が何を意味するか、言わずとも明白だろう。　２４日、２５日と２度もプーチンはベラルーシのルカシェンコと電話会談をしている。プリゴジンの処置を相談したに違いない。​　なおプリゴジン本人が乗っていたかどうか未確認だが、ベラルーシの独立系軍事情報監視団体「ベラルーシ・ガユン」は２７日、プリゴジンの所有するプライベートジェット１機が同日朝、ベラルーシのマチュリシ空軍基地に着陸したと伝えた（写真＝２４日、ロストフナドヌーで地元住民の自撮り写真に一緒に収まるプリゴジン）。​昨年の今日の日記：「札幌周遊記２０２２⑤：過疎地さながらのローカル列車で小樽の先の塩谷へ」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202206280000/​

  2023.06.28

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  赤褐色の砂漠の中の「化石化した木」の森の公園、ペトリファイド・フォレストの思い出

  　ペトリファイド・フォレスト（Petrified Forest）、つまり「化石化された森」と名付けられた国立公園が、アリゾナ州にある。​　僕は、かつて前にも述べたＡ級ライセンスを持つと言われる運転好きの友人とレンタカーでアリゾナの「ペインテッド砂漠」と呼ばれる、様々な色調の赤褐色の絵の具で塗られたような荒野（写真）をばく進し、そこを訪れたことがある。そして息を飲むほど驚いた。​​◎巨大丸太は瑪瑙化していた！​　国立公園の入り口で入園料を払う際、園内での珪化木破片の採取は禁止、と言い渡される。　しかし入園すると、すぐそんな気も起きなくなる。​​　草もまばらな砂漠に、珪化して瑪瑙のように美しく輝く巨木の化石が、あちこちでゴロゴロと転がっているのだ。太さは１メートル前後もあり、割れ口には年輪も残るから、これがかつて樹木であったことが分かる。ただ１本が、まるまる保存されている物は稀で、ほとんどはその後の地質作用と風化で、スパッと切られたような「丸太」になっている（写真）。​​　木っ端のような破片を拾って観察すると、やはり化石の瑪瑙片であり、木片ではない。​◎割れ口は美しい宝石のよう​　化石化した木は、三畳紀のナンヨウスギの仲間で、今では北半球で絶滅し、南半球に残る。ナンヨウスギの仲間は、そのずっと後の２０１８年に行ったニュージーランド南島の深い森で見た。　三畳紀は、今から２億数千万年前。倒れた倒木が、一瞬の大洪水などで埋められ、その間、地中の水の作用でゆっくりと木質部がケイ素と入れ替わって化石になった。その後の地質作用で、宝石のように美しくなった。​　割れ口は、美しいの一語に尽きる（写真）。​◎リンテルや丸木橋のような例も​​　公園内をブラブラ歩く。巨大な丸太が、まるでストーンヘンジ（イギリス）のリンテル（まぐさ石）のように岩の柱の上に載っている（写真）。珪化木が、浸食によって残った岩の一部に辛うじて載っているのだ。​​　また「アゲート（Agate）・ブリッジ」が、浸食された枯れ谷を渡す丸木橋のように残っている（「アゲート」とは瑪瑙という意味）（写真）。崩れ落ちないよう、下を鉄材で補強されている。​　ともかく想像を絶する景観が広がる。これがペトリファイド・フォレストである。​◎国立公園は広大なペトリファイド・フォレストのほんの一部​　公園内のトレイルの両側には、それこそ無数の「木っ端」が散乱している。ただ、国立公園なので、拾って帰ることはできない。公園を出る時に、係員に必ず「破片を持っていないか？」と尋ねられる。ただボディチェックも手荷物検査もされないから、ポケットに入れていても分からない。　ただ誰もまともに拾わない。公園を一歩出れば、あちこちで珪化木破片の瑪瑙を安く売っているからだ。つまりペトリファイド・フォレスト国立公園は、広大な化石森林域の一部にしか過ぎないのだ。それ以外は、民有地だから、珪化木の採取も販売も自由なのだ。​◎実験してみました、珪化木だから燃えない​　ちなみに公園外の原野に落ちていた真っ黒な珪化木破片を拾い、夜、ホテルの部屋で火をつけてみた。一見すると石炭の破片のように見えたが、やはり珪化木だ。全く燃えなかった。　ペトリファイド・フォレスト国立公園は、アルバカーキとフラッグスタッフの中間辺りにあるが、公共交通機関はないから、再訪するにはレンタカーを借りて行くしかない。しかしペーパードライバーで運転できないから、再訪は「夢」で終わりそうだ。​昨年の今日の日記：「中世ヨーロッパ社会を震撼させた黒死病（ペスト）の起源：キルギス北部の墓地にパンデミック７～８年前の黒死病死者の大量埋葬」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202206270000/​

  2023.06.27

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  鉄のプーチン体制に小さな亀裂、ワグネル反乱もすぐに収束したが、一時はテロ国家ロシアに大きな衝撃

  　ついに、とうとう、だった。　ロシア民間軍事会社「ワグネル」が２３日夜、武装蜂起を宣言し、プーチン政権に反旗を翻した。​◎反乱、１日で収束、プリゴジンはベラルーシに亡命​​　一時、南部ロストフ州の州都ロストフナドヌー（写真＝ロストフナドヌー市街地に展開するワグネル部隊）からその北方のボロネジ州に侵攻し、さらに首都モスクワまで数百キロまで迫った。​​​　しかし勢いは、そこまでだった。プーチンがテレビで、ワグネルを「裏切り者」と処断して投降を求め、反乱に参加した者は全員処罰」と５分間にわたって恫喝した（写真）。　夜にプーチンの手下の隣国ベラルーシのルカシェンコが介入すると、ワグネルの創設者プリゴジンは一転して「元の拠点に戻る」として、ワグネルは占拠したロストフナドヌーのロシア軍南部軍管区司令部などから撤退を開始した（写真）。プーチン政権も情報機関ＦＳＢも、ワグネル戦闘員の罪を問わないと表明した。​​　反乱を企てたプリゴジンは、ベラルーシに亡命することになった。​◎ワグネル、ゲラシーモフらの指揮下に入る命令​　ワグネルの反乱はたった１日しかもたなかったが、そもそも優勢なロシア正規軍に対し、本格的な戦闘になれば、勝ち目はない。だから、なぜプリゴジンが反乱を起こしたのか、謎である。　国防相ショイグが１０日、ワグネル戦闘員に対し、国防省との直接契約を命じ、プーチンもこれを支持したため、ワグネルに対する支配権が奪われるとプリゴジンは危機感にかられていたようだ。溜まりに溜まった不満いっぱいの国防相ショイグと参謀総長ゲラシーモフの指揮下に、手塩にかけて育てたワグネルが入ることになる。プリゴジンには、耐えられなかったに違いない。　一か八かで、反乱に出たのかもしれない。ロシア国内の一斉蜂起も期待したのだろう。　とすれば、かなり甘い。それでロシア国内が内乱に陥るなら、とっくに各地で小規模な衝突が起こっていたはずだ。ウクライナとの国境でゲリラ戦を仕掛けるロシア義勇軍などの動きは散発的なもので、まだとても面的な広がりはない。​◎プーチンのデマは暴かれた​　今後、ワグネルは解体され、戦闘員はロシア正規軍に編入され、懲罰として最前線に投入されるだろう。　プリゴジンは当面はベラルーシで安泰だとしても、ルカシェンコはプーチンの部下に過ぎない。プーチンの怒りが沸騰したら、ロシアに引き渡される可能性大だ。　それでも、プリゴジンとワグネルの蜂起は、対ウクライナ侵略戦争に勝っているとデマを振りまくプーチンとロシア正規軍に対する激しい「異議申し立て」となった。一次的にせよ、プーチンの独裁的な権威に挑戦がなされ、地方軍司令部が占領されるという事態となった。　鉄のプーチン支配に、小さな亀裂が入ったことは間違いない。　今後、ウクライナ防衛軍の反攻が進めば、一次的にせよ動揺したロシア侵略軍はもたない可能性が出てきた。​昨年の今日の日記：「札幌周遊記２０２２④：明治の先端酪農を展示する野外博物館『札幌農学校第２農場』を観る」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202206260000/​

  2023.06.26

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  平安時代初期に日本一の難所、剱岳を登った修験者と江戸時代後期に槍ヶ岳を開山した播隆上人

  ​　日本一の難所と呼ばれ、それだけに岳人の憧憬の山とされるのが、北アルプスの「岩と雪の殿堂」剱岳だ（写真）。　むろん僕にはとうてい挑戦できない遥かなる山だ。​◎明治末まで未踏峰として残された剱岳​　それだけに明治の遅くまで、日本最後の未踏峰として残された。​　初めて山頂に到達したのは、明治４０年（１９０７年）７月、陸軍陸地測量部（今の国土地理院）の柴崎芳太郎（写真）らの測量隊である。この時、残された最後の未踏峰として発足したばかりの民間の日本山岳会の初代会長の小島烏水らのパーティーと初登頂を競った。​　この経緯は、最もドラマティックに映画『剱岳　点の記』で描かれている（１８年９月３日付日記「木曽駒ヶ岳登頂記（９）：ようやくたどり着いた木曽駒ヶ岳山頂で；『劒岳 点の記』の連想」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/201809030000/、及び１３年１月６日付日記「未踏峰・最高峰へ登れない者の遥かなる山への憧憬」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/201301060000/を参照）。​◎平安時代初期の修験者は剱岳にどうやって登れたのか​　この時もちろん、今は各所に装備されている鎖場も鉄梯子も無かった。測量隊の艱難辛苦は、映画で描かれた以上のものだったろう。​　ところが、映画でラストに劇的に描かれたが、山頂には中世修験者が残した銅製錫杖（写真）と錆び付いた鉄剣が残されていたのだ。型式から、奈良時代後半から平安時代初期にかけてのもので、おそらく平安時代初期に初登頂した修験者が奉納したと考えられる。​　しかし登山靴も履かず、ストックも持たず、水や食料を詰め込んだ大きなザックも持たなかったはずの修験者がどうやって剱岳に登れたのだろうか。困難さは、前記『剱岳　点の記』で描かれているとおりだ。​◎名も知らぬ修験者が登ったルートは​​　それでも何度も登頂し、剱岳を知り尽くしている探検家の高橋大輔氏は、立山川を遡り「ハゲマンザイ」と呼ばれる谷筋から早月尾根に突き上げるルートを候補に挙げる（写真＝ハゲザンマイから剱岳方面を見上げる）。​　このルートの最大のメリットは、川沿いなので登山中の飲料水を確保しやすいということだ。水が無ければ、岩場をかじりついて登れない。また途中には修験者が休めただろう岩室もあるという。　しかし、それは剱岳を知り尽くした高橋氏だから挙げられるルートだ。当時の修験者は、そんなルートなど知る余地もなかっただろう。​◎帰らなかった？　初登頂の修験者​　ならば、偶然、たまたま、ということなのか？　それまで何人も、開山に挑んだ修験者は帰って来なかったはずだ。　そしてともかくも山頂に錫杖などを残したのだから、強運の１人の修験者が登頂に成功したのは確かだ。　しかしその修験者は、麓の村には帰り着けなかっただろう。だからこそ、登頂成功が記録に残らなかったのだ。​◎槍ヶ岳を開いた播隆上人、山道整備などに尽力​　立山信仰のように、当時、険しい山岳は信仰の対象だった。修験者たちは、未踏峰を山を１つひとつ開山していった。​​　もう１つの難所とされる槍ヶ岳（下の写真の上）の開山は、江戸時代後期で、こちらは文献記録に残されている。今から２００年近い前の文政１１年（１８２８）７月２０日、浄土宗の僧、播隆上人（下の写真の下＝松本駅前に立つ播隆上人像）が２度目の挑戦で登頂に成功、背負っていった厨子を設置し、阿弥陀如来・観世音菩薩・文殊菩薩の三尊像を安置して開山した。​​　播隆上人は、その後も３度、槍ヶ岳を登頂し、後に登る者たちのための山道整備なども尽力し、鎖場も設けている。宗教者こそが、日本の登山史の扉を開いたのだ。​昨年の今日の日記：「スターリニスト中国はなぜ弊害の強いゼロコロナ政策をやめられないのか」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202206250000/​

  2023.06.25

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  動物化石＝竜骨やミイラを薬にして珍重した中国とヨーロッパの上流階級

  　今もあるのだろうが、中国では「竜骨」と称して古脊椎動物の化石を、漢方薬として重用していた。そうした「竜骨」には、北京原人やギガントピテクスのような希少なヒト族化石も含まれていた。​◎漢方薬となっている竜骨、すなわち動物化石、北京原人化石も​​　何しろ北京原人の産地として世界遺産にも登録されている北京郊外の周口店（写真）で、竜骨が取れる山として「竜骨山」が著名だったのだ。　中国に派遣されていたスウェーデンの地質学者ヨハン・グンナル・アンデルセンが、竜骨、すなわち獣骨化石が出土すると聞きつけて赴いた周口店で１９２３年に発見したヒトの歯の化石こそ、第１号北京原人化石だった。後には学術発掘調査で、竜骨山でほぼ完全な北京原人頭蓋も発見されている。​　それまでに竜骨山で、どれだけ多くの北京原人化石が中国人の金持ちの胃に収まり、排泄されてしまったことか。化石は無機物なので、ほとんど腸で吸収されないのだ。それなのに、中国の金持ちは高価な竜骨を奪い合った（写真＝今も売られている漢方薬の「竜骨」）。​​◎中世ヨーロッパでミイラを服用​　それと似たことが、中世ヨーロッパで流行していた。​　こちらはエジプトのミイラである。盗掘された古代エジプトのミイラが、ヨーロッパに持ち込まれ、巻いた布を剥がれ、解体され、粉にされて服用された（絵＝フランス人画家、ポール・フィリッポトーの１９世紀末の油絵。考古学者たちが、アメン神に仕える女性の神官のミイラの布を解くのを紳士・淑女たちが観ている）。​　古代にペルシャの採取された瀝青（天然アスファルト）が「ムンミヤ」と称され、万能薬として珍重されていたから、「マミー（ミイラ）」と呼ばれるようになっていた古代エジプトのミイラが、その代わりとして服用されるようになったという。​　ミイラの粉末は、万能薬として、頭痛から心臓発作までありとあらゆる症状に対して処方された（写真＝「ムンミヤ」の壺。この中にはミイラの粉末が納められていたかもしれない）。​​◎不足した本物のミイラの代わりに処刑された犯罪者の遺体も​​　必然的にミイラの争奪戦が始まった。古代エジプトの墳墓から宝石や陶器などの高価な副葬品だけでなく、そこに眠るミイラも略奪され、ミイラを売買する商人も現れた（写真＝売り物のミイラの脇で居眠りするエジプトのミイラ売り）。需要は瞬く間に供給を上回り、偽のミイラが活発に取り引きされるまでになった。​　処刑された犯罪者や奴隷などの遺体が、「ミイラ」に加工され、闇取引されるようになった。　「ムンミヤ」が薬として服用されなくなったのは、やっと１９世紀の末だった。とすれば、幕末の日本にもこの悪習が輸入されていたかも分からないが、幸いにシーボルト初め、当時の日本人蘭方医には一顧だにされなかったようである。​昨年の今日の日記：「札幌周遊記２０２２③：北大が誇る２体の全身骨格化石の模型＝ニッポノサウルスとデスモスチルス」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202206240000/​

  2023.06.24

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  ウクライナ侵略戦争で被る女性たちの悲惨な受難を思わせる敗戦直後の引き揚げ女性たちの惨禍

  ​　図書館で小説家・帚木蓬生の連作小説『花散る里の病棟（新潮社）』（写真）を借りて読んだ。​　その中の章「胎を堕ろす　二〇〇七」は、敗戦直後の福岡市近郊に設けられた秘密堕胎施設の業務に携わったことのある元日赤看護婦の石崎さんという８０歳を超す高齢女性の話だ。​◎戦中に植民地朝鮮で看護学校に通った女性のストーリー​　石崎さんという女性は、診療所を開く野北という主人公医師の５～６年来の患者だ。４週に１度訪れる、高血圧以外はどこが悪いという患者でもない。だから野北医師は、降圧剤を処方する以外は、石崎さんの四方山話に耳を傾けるのが診療実態だった。　そのうちうち解けて、石崎さんは青春時代の自分史を語るようになる。早くから両親を亡くしたので、植民地時代の朝鮮に住んでいた養父母に育てられ、京城（ソウル）の日赤付属看護学校に進学し、従軍看護婦を目指すことになる。　しかし石崎さんが３年の夏に日本は無条件降伏し、京城の日赤付属看護学校を繰り上げ卒業する。しばらくはソウルに身を潜め、冬になる前に帰国、継母の引き揚げていた唐津に身を寄せるが、京城日赤の関係者から召集がかかり、Ｆ町という近郊の温泉地の「保養所」に派遣される。​◎帰国した「石崎さん」が目にした女性の受難​　この保養所に、最初は性別も分からないほど、薄汚れた女性たちがトラックで運ばれてきて、石崎さんは自分たちの仕事が分かった。引き揚げ中に暴行され、妊娠した不幸な女性たちの堕胎を行うのが、その「保養所」の仕事で、元日赤の医師が施術し、石崎さんたちは看護婦として手術を補助した。　女性たちは、命からがら引き揚げてきた祖国で、胎児という重荷を下ろし、そこから再出発するための出口ゲートにやって来た。手術を終え、しばらく滞在し、回復すると、物も言わず、看護婦たちに礼も言わずにひっそりと退去していく。　後で分かるのだが、石崎さんの働いていた施設の他に、福岡市内など２カ所の国立療養所がそのための施設として開かれ、九州大の産婦人科の医師が派遣・出張していた。​◎今のウクライナに通じるソ連赤軍兵士の残虐さ​　当時は、現在と違い、堕胎罪は犯罪で、暴行されて妊娠させられても被害女性は中絶できなかった。石崎さんたちが堕胎に携わっていた２年後の１９４８（昭和２３）年に、妊娠中絶は合法化される。　筆者の帚木蓬生は、私家版を含めた多数の資料に当たり、石崎という老元看護婦の口を借りて、フィクションという形で戦争の闇の一部に光を当てた。　ちなみに引き揚げ船が寄港した博多では、引き揚げ途中の暴行された女性たちの中絶手術が行われていたことは、他の本でも読んだことがある。　こうした施設は、福岡と佐賀県他にもあった。九州大の医師が厚生省の指示で交代で出張し、堕胎に当たったという。　身を守る手段さえ無い弱い立場の日本人女性を暴行したのは、トップが満州・南樺太などに侵攻してきたソ連赤軍兵であった。次に、長年日本人に虐げられたと思っていた在地の中国人・朝鮮人だろう。他に浮浪の徒と化した敗残日本兵による暴行もあっただろう。　ソ連赤軍兵士の残虐さは、今もウクライナで振るわれている。​◎敗戦直後のドイツはもっと惨かった​​　ただ、本書を含めて他の著述でも断片的に語られた日本人女性の受難は、同じ敗戦国だったドイツに比べれば、マシだったかもしれない（写真＝敗戦直後のベルリン）。　ベルリンなどに侵攻してきたスターリンのソ連赤軍は、野に解き放たれたさかりのついた猛獣のように、手当たり次第に、老人も幼女も含めてドイツ人女性を暴行した。​　ある調査によれば、当時ベルリンには１４０万人の女性がいたが、そのうちの１１万人もがソ連赤軍兵士に暴行された。　その結果は、翌年１９４６年の出生調査にはっきりと表れた。保存されたカルテには両親の記載もあるが、それによると出生数の３．７％が父親はソ連人となっていた。しかも、妊娠理由として「強●」（注　禁止用語のため表現できません。「女」を３つ書きます）という表現まで付記されていた。​◎日本本土のソ連進駐を拒んだアメリカのトルーマン大統領に感謝​　僕は、敗戦の最中に受難した外地から帰国した日本人女性の過酷な運命には強い心の痛みを覚えるものだが、ソ連赤軍が日本本土に進駐してことなかった幸運をこそ喜びとしたい。　戦後ゼロ年のベルリンなどでドイツ人女性が被った受難は、日本人女性のそれよりはるかに過酷だったのだ。　アメリカのトルーマン大統領が、北海道北半部への進駐を求めたスターリンの要望を断固として拒否したことは、日本人として深く感謝する次第である。他にも、現在の朝鮮半島のように、北にならず者国家が居座る不安を感じずに済んでいることも、である。​昨年の今日の日記：「札幌周遊記２０２２②：樺太周遊を思い出させる展示品＝ピウスツキの蝋管、日露国境標石など」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202206230000/

  2023.06.23

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  函館の旅（３２＝最終回）：過去２５度もの大火に見舞われた函館、戦前には珍しい都市計画の跡

  　雨は降り止まなかったが、函館駅に戻った。​◎風の強い函館、繰り返し大火に見舞われた過去​　最終日の４月２６日だけは雨だったが、他３日間はおおむね晴天に恵まれた。　恵山や函館山では特に感じたが、海に面しているせいか、函館は風が強い。　そのためだろうか、函館には大火が多かった。明治から昭和戦前期にかけて、少なくとも２５件の大火に見舞われているという。　特に明治４０（１９０７）年８月２５日の大火の規模は大きく、８９７７戸が焼けている。せっかく流れてきた函館で職を得た石川啄木も被災し、半年余で札幌に去っている。　これまで本稿で紹介した遺愛幼稚園、函館区公会堂、ハリストス正教会聖堂、カトリック元町教会などもみんな類焼している。​　耐火建築だった金森赤レンガ倉庫（写真）や太刀川家は類焼を免れている。​​◎戦前には珍しい地方都市の都市計画​​　その後も函館史上最悪の、１万戸以上が焼けた昭和９（１９３４）年３月の大火があった（図＝昭和９年函館大火の焼失地、左隅の住吉町から出火し、北・東方面へ火が広がった）。この時の大火は、図のように市の南部に収まったので、明治４０年大火後に再建された遺愛幼稚園、函館区公会堂、ハリストス正教会聖堂、カトリック元町教会などは被災を免れた。​​　その大火の跡は、あちこちに見られる。十字街から新川町にかけて、あちこちに記念碑や記念像の建てられたグリーンベルトが見られたが（写真＝高田屋嘉兵衛像と日露友好の碑の建つ護国神社坂のグリーンベルト）、これらは昭和９年大火後の復興事業によって形成されたもので、これは戦前の地方都市の都市計画が実施された数少ない事例とされる。​​◎住むならちょっと不便かも​　僕は今回、行かなかったが、函館には有名な湯の川温泉もある。景観も、海産物も素晴らしい。しかし坂の多いのは、住む人には難渋だろう。冬は道が凍結したら、転倒しやすい（その防止のためか歩道にはコンクリート製の石畳が敷かれている）。　住みたいかと問われれば、首をかしげたくなる。​◎新函館北斗の北の先の札幌へは？​　簡単な昼食を済ませて、チェックアウト後に荷物を預けた新函館北斗駅前のホテルに戻った。​　そこで駅に向かい、１３時３２分発の「はやぶさ３２号」に乗った（写真）。この列車は、来た時の「はやぶさ７号」と違い、途中停車駅が多く、東京まで４時間２５分もかかる。​　やはりこれくらい長時間乗るとなると、どうしても退屈感が出てくる。　北海道新幹線はいずれ札幌まで延伸されるが、これは最速の列車でも５時間を切るべく努めているらしい。それにしても函館から札幌までノンストップとしても限りなく５時間に近い４時間後半は避けられない。利用者はいるのだろうか、と危ぶんでしまう。（完＝３２回にわたった函館の旅は今回で終わります。ご愛読、ありがとうございました）​昨年の今日の日記：「札幌周遊記２０２２①：まず緑したたる北海道大学キャンパス内の博物館へ」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202206220000/​

  2023.06.22

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  函館の旅（３１）：あちこちに文学者の碑、そして高田屋嘉兵衛像と日露友好の碑

  　市立函館博物館を観た後、函館公園を出て、函館公園通りを北に歩く。​◎亀井勝一郎や石川啄木ら文学者の碑​​　ここら辺は、文学者のA旧跡が多い。例えば高校の国語教科者に取り上げられることの多い評論家、亀井勝一郎の碑だ。小公園の全部が、亀井の文学碑に充てられている（写真）。​　説明板によると、亀井は函館の元町の生まれで、中学（旧制）まで函館で過ごし、後、旧制山形高校を経て、東京帝大文学部に学んだという。​　かと思うと、この辺りに一時期、石川啄木も住んでいたらしい。明治４０（１９０７）年８月の函館大火で、やっと得た小学校代用教員と新聞社の職も失い、半年ほどで札幌に発った。半年ほどの流民なのに、函館市はよほど啄木を誇りたいのか、旧居址に説明プレートを立て、別の緑地帯に歌碑も建てている（写真）。​​◎高田屋嘉兵衛像と日露友好の碑​　しかし僕は、もっと観たかったものがある。​　護国神社坂の緑地帯に建てられた高田屋嘉兵衛像だ（写真）。​　高い台座の上に、何か巻物を手にした高田屋嘉兵衛像が僕を見下ろしていた。地理的位置から、晴れていれば像の向こうに函館山の山容が見えるはずだが、雨雲に覆われて全く見えなかった。​　高田屋嘉兵衛像のすぐ隣に、嘉兵衛が見つめる位置に「日露友好の碑」がある（写真）。高田屋嘉兵衛が尽力し、文化露寇以来の日露間の緊張関係を収めた功績を記念したものだ。しかし日露間は、その後、日露戦争、シベリア出兵戦争、そして終戦間際のソ連赤軍による満州、北千島、南樺太の侵攻で、幾度も戦火を交えた。​　今も、南千島と北海道の一部の歯舞・色丹が占領されたままだ。​◎１世紀半以上前にピークに達した日露友好は今は昔​　高田屋嘉兵衛が命を賭して斡旋した日露友好関係は、プチャーチンの「北から来た黒船」ディアナ号の来航でも保たれた。１８５４年の安政の大地震でディアナ号は下田港で津波に遭い大破、それを何とか戸田に回航したものの強風で沈没したが、戸田の漁民が総出で乗組員を救助し、またここで帰途に使う初の洋式帆船「へダ」号の建造に助力した。　この間の戸田漁民とロシア乗組員たちとの友情の物語は、日露親善の極点であったろう（２０年４月１３日付日記：「『北から来た黒船』ロシアのプチャーチンと日露和親条約締結に結び付けた克己の人、川路聖謨（後編）：忠勤励んだ幕府に殉じて自決」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202004130000/を参照）。　前記したように、プチャーチンから幕府に献上されたディアナ号の大砲の一部が箱館の弁天岬台場に設置されたのも、この友情の証だった（今年５月３１日付日記：「函館の旅（１９）：新撰組最後の地、弁天岬台場跡を観る：あの島田魁もここで降伏」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202305310000/を参照）。　北方領土のロシア領への強引な編入と昨年のウクライナ侵略で、日ロ関係は冷え切っている。それを象徴するように、「日露友好の碑」は文字が判読できないほどになっていた。​（この項、続く）昨年の今日の日記：「軍事同盟が国を救った＝合わせて４万の軍しか持たないＮＡＴＯ加盟のバルト３国はロシア侵略を免れた、侵略されれば２日で占領」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202206210000/​

  2023.06.21

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  函館の旅（３０）：蝦夷にいなかったイノシシは本州から瓜坊が持ち込まれた、明治初年の謎の動物物語

  　志海苔古銭を観られただけで、もう市立函館博物館入館の目的は達せられた。なにせ入館料はたったの１００円なのだ。​◎イノシシ？　ブタ？​　あとは、おまけと２階の展示場に。階段を上がった右側が古刀の展示。残念ながら、古い刀剣については、ほとんど知識がない。​　左のホールの常設展示場を、ザッと観て回る。入り口近くに、大きなイノシシの剥製がデンと展示されている（写真）。牙が見えるからイノシシなのだろうが、あえて「イノシシそれともブタ？」とある。　明治１４（１８８１）年２月に道南の尾白内村（現・森町）で捕獲され、剥製にされて博物館に収蔵された。　この個体については、長年、イノシシなのか、それとも野生化したブタか、と論争がなされ、まだ決着がついていないらしい。明治１４年という早くに、北海道にブタが持ち込まれ、それが逃げて、厳冬を生き延び、野生化したというのは信じがたい。だが学芸員がイノシシと即断できなかったのは、イノシシは北海道には自然分布していなかったからだ。​◎縄文時代には本州から瓜坊が移入されていた多数の例​​　ただ北海道内の縄文遺跡、例えば市内の日ノ浜遺跡から、縄文晩期のイノシシの幼体である瓜坊のイノシシ形土製品が出土しているし（写真）、イノシシの牙を加工した装飾品、炉址からはイノシシの骨片がたくさん出ている。幼体の瓜坊が、縄文人によって本州から舟で運び込まれていた証拠だ。　だから、この個体もイノシシという可能性はある。しかし幕末の蝦夷でも、イノシシが捕獲されていた記録はない。　ただ、本当にイノシシかブタかを突き止めるつもりなら、今なら遺伝子解析をすれば、簡単に決着がつく。野生化したブタという意見が強くなっているそうだが、あえて曖昧にして謎として残すのも、１つの手かもしれない。​◎江戸後期の箱館の街の絵と高田屋嘉兵衛の木像​​　江戸時代後期の天保年間の箱館を描いた絵（写真）は、興味深い。この頃の箱館の街の賑わいがうかがえる。左端には、現在の金森赤レンガ倉庫に当たるという築島が見える。築島は、幕府が高田屋嘉兵衛ら豪商に命じて造らせた人工島だ。​​　その高田屋嘉兵衛の木像も、展示の中にあった（写真）。箱館と高田屋嘉兵衛とは、切っても切れない縁があるのだ。​​　発掘調査された志苔館の出土品の一部も展示されている（写真）。ただ、志海苔古銭群に比べれば、展示としてのインパクトは小さい。​◎洋館風の旧博物館建物​　資料室にベンチがあり、一休みして外に出た。　雨は相変わらず降り続け、止む様子はない。​　博物館手前に、洋館風の建物があった。旧博物館の１号（写真）と２号だという。これはまさに「博物館の野外博物館」である。​（この項、続く）​昨年の今日の日記：「ビットコイン、底無しの大暴落、わずか半年余りで７４％強も劇下げ」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202206200000/​

  2023.06.20

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  日本経済復活・再生の狼煙か、経済人が全く予測しなかったバブル崩壊後高値・日経平均１０週連騰の期待

  ​　今週初の日記で、連日のようにバブル崩壊後の高値を更新する東京株式市場の背景を述べた（６月１２日付日記：「東京株式市場の堅調さ、いつまで、どこまで？　日本株を割安と見ている外国人投資家」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202306120000/を参照）。先週末の１７日も、高値を更新し、１０週連続の高騰となった（写真＝東京証券取引所）。​◎主要企業経営者の誰も予測できなかった高値​　それで思い出したというか、そのきっかけになった記事が、その日土曜日の日経新聞に載った梶原誠記者の記事である。　それは僕の実感だったのだが、誰しもこのような株価の堅調さを予測していなかったという趣旨だ。　日経新聞は毎年の年初に、その年の日経平均株価の年間予測を主要経営者２０人に聞いた結果を載せている。名だたる経営者のみならずメガ証券会社の社長の予測も含まれるが、誰も先週末の終値のような日経平均株価３万３７０６．０８円のような高値を予測できなかった。​◎売り方優位相場の終焉​　中には年末終値２万２０００円と、たぶん大外しになる予測もあったが、最も強気な３万３０００円を予測したのはたった３人だった（うち１人は株高を誰よりも願うメガ証券の社長だった）。　むろん今後、株価が調整し、年末３万円割れで終わる可能性もあるが、それにしても経営者すら予測できなかった株高だから、多くのアマチュア投資家など誰も予想しなかっただろう。　だから１９９０年のバブル崩壊以来、３０年以上も続いた株安に慣れた投資家なら、高くなったところで空売りを仕掛けた人たちも多かったに違いない。アベノミクス相場が始まった２０１２年秋以前は、高くなったところで空売りを仕掛ければ、百発百中利益が出たのだから。彼らは、今回の高値で回復不能の大痛手を被ったに違いない。​◎トヨタ、ついにＰＢＲ１倍超​​　潮目の変化を確信させたのは、日本最大企業のトヨタ自動車（写真）のＰＢＲ（株価純資産倍率）が先週ついに１倍超えを達成したことだ。そしてトヨタは、８１万３２５４名（今年３月末現在）と日本有数の株主数を誇る会社でもある。昨年１月に同社は上場来高値をつけていて、それに比べれば先週末株価は１６０円ほど安いが、その時に買った人以外は、ほとんどの株主は、含み益になっているはずだ。​　思えば、１９９０年のバブル崩壊は、日本経済の転換点となった。それ以後、株価ばかりか地価も底無しの下落に転じ、さらにそれはあらゆる物価の下落というデフレ経済のきっかけになったのだ。​◎日本経済の将来に期待したい​​　デフレは、収益の上がらない企業も賃金も上がらない勤労者（それどころか時間外賃金の減少で総収入割れが常態化した）も痛めつけ、今日のような没落した日本を招来した（写真）。デフレ脱却を目指したアベノミクス経済政策と日銀の黒田バズーカは、正しかったのだ。​　それが、今やっと実を結びつつある。　バブル崩壊後高値を更新する原動力となった外国人投資家の怒濤の買い（１１週連続）は、まさにその日本と日本経済の見直しの反映である。　人口減という構造変化に適応した日本に、「日はまた昇る」のかを、期待をもって注視していきたい。​昨年の今日の日記：「探査機『はやぶさ２』の持ち帰った小惑星『リュウグウ』の砂から２３種のアミノ酸検出、生命誕生までの道のりは遠し」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202206190000/​

  2023.06.19

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  海底に棲むナマコの発光をとらえる：６回も独立に進化した発光能力

  　光る生物と言えば、誰しもホタルを思い浮かべるだろう。しかし都市化の著しい最近は、どこでもホタルが見られるとは限らないから、若者の中にはホタルが光ることさえ知らない者もいるかもしれない。​　それ以外では――、となると、富山県の周辺の人ならホタルイカが身近かもしれない（写真）。​◎発光の目的、コミュニケーションや捕食など​​　生物が発光する理由は様々に考えられている。例えば深海に棲む生物では、光で餌になる小動物を招き寄せる魚がいる。チョウチンアンコウ（写真）などがそうだ。​​　しかし海底の砂の上などに棲むナマコは、どうなのだろうか？　彼らの中には、発光するナマコがいることが知られている（写真＝刺激を受けると発光するカンテンナマコ）。彼らは、別に餌となる小動物を引き寄せる意味は乏しい。ホタルのオスがメスを誘引するように、何らかのコミュニケーション目的があるのかもしれない。しかし自ら光ることは実は危険で、捕食者に対して目立ち、身を危険にさらすことにもなる。​​◎発光するナマコを新たに１３種発見​　一見すると生存にさほど有利とも思えない発光だが、海底に棲むナマコは、実はかなり多くが発光することが、このほど名古屋大学、アメリカ・モントレー湾水族館研究所、ベルギーのルーベン・カトリック大学との共同研究チームの調べで分かった。深海に住むナマコが光る様子の撮影にも成功した（写真）。　研究チームは、高感度カメラを搭載した深海探査機を用いて、発光するナマコを新たに１３種も発見した。それところか、進化学的解析を行った結果、発光するナマコ類が２００種以上いる可能性も推定できた。​◎２億年前から発光していた​　また遺伝子を解析した結果、発光能力はナマコの仲間で６回も独立に進化しており、とくに板足類のナマコの共通祖先はおよそ２億年も昔から深海で光っていたことが明らかになった。　独立に６回も進化したということは、また確定できないものの、発光は生存に有利であることを示唆する。発光の仕組み自体、突然変死による中立進化の過程で、何度でも獲得されるだろうが、生存に不利なら、たまたまある個体が発光能力を獲得しても、子孫に伝えられず、途絶えてしまう。しかし前記のように、進化史上で何度も起こり、その結果、広い種に発光能力が広がっていることは、発光が個体の生存に有利であることを示す何よりの証拠だ。　だからこそ、ナマコ以外も含めた全ての生物では、合計で発光能力が１００回以上も独立に進化したのだろう。​昨年の今日の日記：「掛川花鳥園を観覧（下）：人気のハシビロコウが飛翔し大きな嘴のオオハシに最接近」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202206180000/​

  2023.06.18

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  函館の旅（２９）：１５００年間もの時代幅の中国銭＝志海苔古銭３８万枚余が埋納されて忘れられたデポ

  　中世志海苔古銭の展示コーナーは、博物館で最も入り口に近い一等地にある。それが、この博物館の最大の目玉であることを示す。​◎新しい洪武通宝は１３枚だけ、永楽通宝はゼロ​​　解説パネルによると、２００４年からの５年計画で実施された保存修理により、実に３８万７５１４枚もの古銭が確認された（写真＝珠洲焼大甕に入っていた古銭約６５００枚）。​　３８万枚余の古銭のうち、最も古いものは前漢の時代の紀元前１７５年初鋳の四銖半両で、新しいものでは明代の洪武通宝（１３６８年初鋳）だ。実に約１５００年間にわたって作られた銭（ぜに）が網羅されている。ただ、中世後期に国内で大量に流通する明の銭は洪武通宝が１３枚だけで、１４０８年初鋳の永楽通宝は１枚も含まれていなかった。　明銭は、商業の盛んになった中世日本で大量に輸入、流通していた。それなのに、洪武通宝が１３枚だけしかなかったのは、収納に使われた大甕の制作年代とも考え合わせると、古銭大量埋納が１３７０年頃だったらしいことを強く示唆している。​◎志海苔海岸産の昆布を畿内に移出​​　そしてこの時代に近くの高台で志苔館（写真）が営まれ、築いたのは道南十二館の１つを支配した小林氏である。​　小林氏は、志海苔沿岸産の昆布を大量に京・大坂方面へ移出し、巨大な利益を得ていたと思われる。越前焼と珠洲焼の大甕の存在は、越前・能登が交易中継地として深く関わっていたことを示す。　ちなみに高田屋嘉兵衛たちが廻船した北前船は、まだ行われていない。それ以前の中世に、早くも京・大坂との太い交易ルートが開かれていたのも驚異的だ。◎アイヌとの緊張漂うなか、財宝を埋納して忘却されたか​　なお志苔館は、文献などから、長禄元年（１４５７年）のコシャマインの戦いで陥落したとされている。長年の倭人によるアイヌの収奪が戦いの遠因となっており、１４世紀末には志苔館の小林氏を取り巻く環境は緊張していたはずだ。この緊張した環境で、蓄えた銭の大量埋納＝デポが行われたのだろう（写真＝志苔館と古銭出土地）。そして志苔館の陥落で、デポの存在も忘れられたのだろうか。​（この項、続く）​昨年の今日の日記：「掛川花鳥園を観覧（上）：人気の鳥が放鳥されて身近で観られる；ハシビロコウ、オオハシ、ケア、ヘビクイワシetc.」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202206170000/​

  2023.06.17

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  トランプ前大統領の起訴で共和党内の支持率上昇という不健全極まる状況；共和党の自浄作用望む

  ​　トランプ前大統領がまたも起訴された。昨年８月のＦＢＩのフロリダ州の自宅の家宅捜索で、多数の機密文書が見つかり、国防に関する情報を故意に保持した罪に問われている他、ＦＢＩなどに文書が見つからないよう移動させていたとして司法妨害の共謀の罪などにも問われている。件数は、合わせて３７件にも達する（写真＝開示された起訴状＝持ち出して機密文書のずさんな管理状況も明らかに）。​​◎共和党支持層でトランプ氏の支持率急上昇中​　この３月には、ポルノ女優との不倫問題に関して州法違反で起訴された件に続いて２度目だが、今回はアメリカの安全保障に直接の脅威をもたらす重罪容疑だ。​　トランプ氏は、例によってバイデン政権による迫害を訴え、起訴を政治利用と一蹴している（写真）。​　問題は、このトランプ氏の迫害訴えが、一定程度、説得力をもってアメリカ国民に受け入れられていることだ。特に共和党支持層では８１％もの多数で「起訴を政治的動機によるもの」と見ている。３月の州法違反での起訴でも、共和党支持層に同様な反応があり、これによって共和党支持層のトランプ支持率は上がった。　今回も、その傾向が顕著だ。​◎トランプ前大統領に対して腰が引けている共和党大統領指名争い候補​　そのため、共和党内の反トランプの有力候補、デサンティス・フロリダ州知事も、ペンス前副大統領も、司法の政治利用を訴え、トランプ氏擁護に回っている。来年から始まる共和党予備選で、圧倒的優位のトランプ氏に対し、腰が引けているのだ。　これは、アメリカ民主主義に対して極めて憂うべきことだ。民主党と対立する共和党が、反民主主義的なトランプ色一色に塗りつぶされている。　トランプ前大統領の思惑は、大統領選挙の出馬で山ほどある容疑も党派的な魔女狩りと正当化し、また選挙に勝って大統領に就任することにより法的保護を受けられると考えていると見られる。確かに仮に大統領選挙で当選してしまえば、有罪の司法判断は下しにくくなる。それによってあらゆる疑惑を雲散霧消にさせてしまおう、ということなのだろう。​◎大統領選の本選と上下両院議員選などで共和党大敗の危機​　しかし、これは共和党にとって壊滅的痛手となる。今の共和党内の支持率の高さから、大統領候補の指名争いで、トランプ氏は楽勝するかもしれない。　しかし民主党支持層と無党派層からは、嫌悪をもって受け取られているから、２０２２年の中間選挙のように、民主・共和の拮抗州では軒並みバイデン氏に敗れるだろう。同時に行われる下院全議席と上院３分の１の改選、そして州知事選挙でも、共和党は大敗するに違いない。　バイデン陣営は、共和党の自己崩壊を待っていればよい状況だ。　共和党の党内自浄作用が働くことを望む。​昨年の今日の日記：「列強も驚いた正確な日本全図を作った伊能忠敬は実は熱烈な天文マニア、地球を測るために蝦夷地まで旅した」https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202206160000/​

  2023.06.16

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  函館の旅（２８）：雨の朝、市立函館博物館に志海苔古銭を観に行く

  　４月２６日、函館４日目の朝。目覚めると、前夜の予報どおり雨だった。これまで３日間は、肌寒い「寒の戻り」の陽気だったが、曲がりなりにも晴れてくれた。　おかげで行きたい所はほとんど行けた。恵山に登れたし、函館山にも脚で登れた。箱館戦争とゆかりの人たちの事跡も訪ねられた。美味い海産物も食べられた。​◎雨で行き先は限られる​　それでも見残した所は、まだある。函館山の麓の、津軽海峡に突き出した立待岬に行ってみたかったし、郊外のトラピスチヌ修道院にも訪れたかった。昨日借りた電動アシスト自転車を使えば、両方行けたが、雨では自転車は乗れない。　市電で行ける市内を、ちょっと見るだけとなりそうだ。午後１時３９分、新函館北斗始発の新幹線「はやぶさ３２号」で帰らねばならないから、行けるのも限定される。　僕は、市立函館博物館に行くことにした。ここに昨日バスで通過した志海苔で出土した中世豪族の小林氏の隠匿した膨大な中国銭が収蔵されているから、一部は見られるはずだ。ちなみに中世には日本では銅銭は作られていない。日本国内に流通する銭（ぜに）はほぼ全部が中国から輸入した中国銭だった。大河ドラマ『どうする家康』で時々映し出される銭は、みんな中国銭なのだ。​◎函館公園の中の函館博物館へ​　市電の「青柳町」電停で降りて、函館山裾のゆるやかな坂を登る。広い、整備された函館公園を目指す。市立博物館は、その奥まった所にある。​　函館公園は、整備された広い公園だ。ただ雨なので、晴天なら仰ぎ見られるはずの函館山も雲の中だ（写真）。​​　市立函館博物館（写真）は、公園の奥まった所にある。​　９時会館すぐに入ったから、僕が一番乗りだった。入館料を払う時も、驚いた。大人はたったの１００円。昨日夕に入った青函市連絡船記念館摩周丸の５００円の割高さを、あらためて意識させられた。​◎大甕に入って埋められていた大量の中世古銭​​　志海苔古銭の展示は、入ってすぐのホールにあった。ガラスケースの中には、珠洲焼と越前焼の巨大な甕３個が収められていた（写真）。中央の口と胴部上部が欠けているのが珠洲焼で、あと２つは越前焼で、いずれも１４世紀後半の制作と分かっている。​　前にも書いたが、１９６８（昭和４３）年７月、道路拡幅工事中に、偶然、前述の３つの大甕と中に隠匿された大量の古銭が発見された。１カ所で、これだけの中世古銭が発見されたのは初めてのことだった。（この項、続く）​昨年の今日の日記：休載​

  2023.06.15

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