クライマー今井通子さんの「私の履歴書」で制覇した3大北壁に強い憧憬、そしてスイスと僕の山々
最近は、自宅で講読する日経新聞を最終面から読むのが習いとなった。 過去に何度かテーマにした「私の履歴書」が、月を替えて連載されている。今月は、日本の女性クライマーとして最高峰の今井通子さんだ。医師でもある。◎世界最初の女性3大北壁制覇のクライマー 母校の東京女子医大での医師の勤務の傍ら、女性として世界で初めて、もう1人の女性と共にスイス・アルプスのマッターホルン北壁(1967年7月19日)に登頂した。その翌々年、同じアルプスのアイガー北壁、そしてもう2年後の1971年7月17日にグランド・ジョラス北壁に登頂する。 マッターホルン北壁、アイガー北壁、グランド・ジョラス北壁と言えば、世界3大北壁に数えられる。ほとんど垂直の崖で、北壁のために夏も氷と雪が壁面を覆う(写真=上からマッターホルン。北壁は影になった右側。中央がアイガー北壁、下がグランド・ジョラス北壁。いずれも垂直に近い壁となっている)。難度が極めて高いことで有名で、世界のクライマーの憧れの的だ。その3つを女性で制覇したのは、もちろん今井さんが世界最初だ。 今井さんは、最後のグランド・ジョラス山頂で、クライマーの高橋和之氏と結婚式を行った(写真)。17日~19日付の記事は、そのことが描かれた。◎また見ぬスイス、行きたいが 3大北壁など、中高年から低山登山を始めた僕には見果てぬ夢、である。それを、すべて制覇するなど、人間ではないとさえ思う。 3大北壁どころか、僕はスイスに行ったことさえない。せめて行って、有名なモンブラン、マッターホルンを遠望したいとは何度も思ったが、以前、北欧旅行に行った時の添乗員さんが、雨に降られたら目も当てられない、と言っていたことが念頭を離れず、ずっと行けず仕舞いなのだ。その添乗員さんが付いていったツアーでは、連日ほとんど雨で、美しいスイスの山々は全く見られなかったという。 添乗員さんのように、数十回、数百回もヨーロッパに行っていれば、そうしたこともある。不運なのは、マッターホルンやアイガーなどの美しい山容を楽しみにしていたお客さんだ。僕は、雨男なので、どうしても雨に遭遇することを考えると、二の足を踏んでしまう。◎ミルフォード・トラック、南樺太の鈴谷山も雨にたたられた 例えば、ニュージーランドのミルフォード・トラックのトレッキングでは、3泊4日の行程のうち、最も楽しみにしていたマッキノンパスのトレッキングの日は1日中雨に打たれて濡れ鼠になりながら山行した(写真=マッキノンパス頂上)。晴天になったのは最終日だけだった。 南樺太の鈴谷山(ロシア名チェーホフ山)登山も、雨模様の終日曇天だった(写真=山行の途中、わずかにユジノサハリンスク市街が見えた)。ここからの眺望も全くダメだった。可憐で美しい山野草の花が、僕たちの一行を迎えてくれたのがせめてもの救いだった。◎マチュピチュ、ヒマラヤ山脈観望、イエローストーンも天気に恵まれた ただ、それ以外は乾期を選んでいるせいか、雨にたたられたことは少ない。 ペルーのマチュピチュ(下の写真の上)も晴天だったし、ネバールのヒマラヤ山脈観望行(下の写真の下=ノーダラの丘から観たアンナプルナ山群のモルゲンロート、左からアンナプルナサウス、アンナプルナⅠ、ヒウンチュリのピーク)もまずまず天候に恵まれた。 昔、行ったアメリカ国立公園のイエローストーン国立公園も3日間観光したが、ずっと晴れに恵まれて素晴らしい自然と景色・野生動物を堪能できた。◎雨にたたられたスイスでは 雨にたたられたスイスでは、見る物もあまりないだろうし、食べ物だって飛び切りのものはない。 ちなみに今井さんも、3大北壁登攀では悪天候にたたられたこともあったが、ビバークして待つ余裕を持っていた。そうでなれば、とても達成できない。昨年の今日の日記:「江戸時代のキリシタン禁教下に静かに信仰に生きた九州筑後の潜伏キリシタンの300年を描く『守教』(後編)』https://plaza.rakuten.co.jp/libpubli2/diary/202302190000/