陽ざしは明るいのに、赤壁を紅蓮に染めたような東南（たつみ）風がエリカをひっくり返す。
この気温の時にはあり得ない方角からの強風。
それでもなごり雪はまだ白くあちこちにとけ残ったまま。
空気も肌に痛い。
お腹がまだちくちくと痛む…

冬眠している熊は幸せだろうか？
少なくとも山の上にある公園で、お賽銭の匂いのする温水につかって半眠状態のワニは
今、ルーちと同じような気分で悪夢の中なのだろう。
何で体が動かないのか…
ぼんやり水ごしに見える景色は何なのか…
自分は今、何をしなきゃいけないんだっけ？
息の詰まるこの匂いは何？
・・・・・・・・・・

ああ…嫌。
何がイヤってこういうしようもない方向へ傾く
自分の心のバランスが一番イヤ。
体のバランスの崩れが心のバランスを崩す。
落ちていく心が体をまた下に引っぱる。

目の前で植え替えを待っている百日紅の
真夏の姿がどうしようもなく恋しい。

ふんばれ、這い上がれ。
焦点よ、なんとか合え。
薄皮一枚ずつでいいから、のろまな冬のワニでもいいから
何とか動け。


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