1回で終われない根管治療1.0(Per?)
70代女性、左下6 、遠心歯肉腫脹、自発痛+数年前近心根の頬側が腫れたので部分的に根管口まで穴を開けてα-TCPを入れていて、そこは大丈夫なようなのだが、今回は遠心根のさらに後ろが腫れている。レントゲン写真では近心根の歯根膜腔も拡大しているので、Per(根尖性歯周炎)もしくは歯根破折で細菌感染しているのは確実なんだが、遠心根には異常は見られない。もちろん絶対ではないし、近心根の炎症が波及していると考えられないこともない。腫れている部分の歯槽骨も境界明瞭とは言いにくい。見た目がカリフラワー状?で気持ち悪いので悪性腫瘍かもしれないが、そこは下手にいじってリンパ節転移でもされると嫌なので、歯根内部がどうなっているのか冠やメタルコア、根管充填材を外して見てみることにした。根管内部に3MIX+α-TCPを入れてみて症状が改善するようなら腫瘍ではない。この既存の修復物を除去するのが大変で、最悪削り取らないとだめで、無理矢理こじると歯根が破折してしまう。除去するだけで小1時間かかることもあり腕が萎えている僕には辛い作業だ。今日は除去するだけで力尽きた。。冠除去後メタルコア削除途中少しこじるとコアは外れた。内部のセメントは細菌の代謝産物で汚れている。冠やクラウンに隙間ができていたことがわかる。細菌出入り自由だということだ。セメントはあらかた除去した。ピンク色の根管充填材の周りも硫酸塩還元細菌の代謝産物のFeS(硫化鉄)で汚染されている。ここからも歯牙の内外に細菌出入り自由だ。多かれ少なかれ全ての歯科治療、詰め物、被せ物には隙間ができて細菌が出入りするようになる。最初から削らないのが最も良いのだが。僕は神経を取って被せ物は作らないので、他所の尻拭いばかりさせられている。このような症例では標準治療の感染根管処置も上手くいかない確率が高く疲れるだけで、儲からないので抜歯だ。ブリッジはできないのでインプラント。お金がないなら入れ歯か、抜きっぱなしです。となる。根管充填材を除去する体力が残っていなかったので、3MIX+α-TCP50%クエン酸練りを入れルミコンで仮封し、デュラシールで固まるまでのカバーとした。根充材を除去せずとも隙間だらけなので薬剤は浸透する。これで腫脹が改善していれば腫瘍ではない。一安心だ。つづく