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2007.01.01
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カテゴリ:映画・邦画
犬神家の一族(東宝)公式HP
上映時間:134分
鑑賞日:12月29日 シネフロント(渋谷)
監督:市川崑
出演:石坂浩二(金田一耕助)、仲代達矢(犬神佐兵衛)、松嶋菜々子(珠世)、富司純子(松子)、松坂慶子(竹子)、萬田久子(梅子)、岸部一徳(寅之助)、蛍雪次朗(幸吉)、尾上菊之助(佐清)、葛山信吾(佐武)、奥菜恵(小夜子)、池内万作(佐智)、松本美奈子(青沼菊乃)、加藤武(等々力所長)、深田恭子(はる)、大滝秀治(大山神官)、草笛光子(琴の師匠)、林家木久蔵(九平)、中村玉緒(九平の妻)、中村敦夫(古館弁護士)、嶋田豪(若林久男)、永澤俊矢(猿蔵)

【この映画について】
1976年に角川映画の記念すべき第1弾として製作された『犬神家の一族』は、現在の興収に換算すると50億円に相当する大ヒットを記録。
その後、映画界だけでなくTV界にも横溝正史ブームが続いたことを覚えている方も多いことだろう。各映画会社では横溝作品の映画化権取得に躍起となり、横溝作品の出版先でもある角川文庫も横溝作品はベストセラーとなった。
そして30年の時を経て、監督・市川崑×金田一・石坂浩二の黄金コンビが復活した。当時のセリフ、画面の構図、カット割りを踏襲しながらも、フレッシュなキャストでまた違った作品の雰囲気を醸し出している。石坂=金田一だけでなく、30年前と同じ役を演じる加藤武と大滝秀治、そして犬神三姉妹の次女と三女を演じた草笛光子と三條美紀が違う役で出演している事など、ファンには嬉しい気配りも多数ある。
石坂浩二演じる金田一耕助の謎解きがやはり最大の見どころなので、彼の表情や動きに注目して見てもらいたい。
【ストーリー(ネタバレなし)】
日本の製薬王といわれた信州・犬神財閥の創始者、犬神佐兵衛は、臨終寸前に一族を床に集めていた。
医師や弁護士の立会いの下で亡くなった佐兵衛は、自分の死後の血で血を洗う葛藤を予期したかのような不可解な遺言状を残して他界した。
犬神家の顧問弁護士、古館恭三の助手、若林は、莫大な遺産相続にまつわる一族の不吉な争いを予期して、私立探偵の金田一耕肋に助力を得るための手紙を送った。指定された旅館に到着し若林が来るのを今かと待っていたが、旅館の部屋から眼の前の湖を眺めているとボートに乗った犬神家の屋敷に住む珠世が悲鳴を上げる。ボートが浸水しバランスを崩し今にも沈みかけている場面に遭遇し、金田一は慌てて駆けつけるが珠世は雇人の猿蔵が駆けつけてくれたおかげで何とか助かったが、ボートの底には穴が開けられていた。念のため、猿蔵にボートを警察に鑑定するこを勧めた。
旅館に戻った金田一だったが顔を合わさぬまま、トイレで血を流して倒れており何者かに毒入り煙草で殺害された。
奇怪な連続殺人事件は、若林の死からその第一幕が切って落された。佐兵衛は生涯妻子を持たず、松子、竹子、梅子という腹違いの三人の娘があり、松子には佐清、竹子には佐武と小夜子、梅子には佐智という子供がいる。そして、犬神家には佐兵衛が今日の地盤を築いた大恩人である野々宮大弐の孫娘、珠世も住んでいた。
問題の遺言状は血縁者全員が揃う事が条件であり、残るは佐清の復員を待って公開されることになっていたが、戦争で顔を火傷した佐清は、母松子が迎えに博多まで出向き白い仮面をかぶって一族の前に現われた。
ところで遺言状の内容は古館の事務所の金庫に厳重に保管されており、若林の死後、その依頼を引き継いだ金田一立会いの下、古館が読み上げた。
その驚くべき内容は、犬神家の全財産と全事業の相続権を意味する三種の家宝、斧(よき)、琴、菊を佐清、佐武、佐智のいずれかと結婚することを条件に、珠世に譲渡する、というものだった。ただし、三人と珠世が亡くなった場合は佐兵衛が女工の青沼菊乃に50歳を過ぎてから生ませた静馬
が相続するという内容だった。三人の娘達はこの遺言状に各々が異議を唱えるが遺言状は法的に有効であるとの古館の一言に騒然となった。
だが遺言状公開後、佐武は花鋏で殺され、生首だけ菊人形の首とすげかえられ、佐智は琴糸を首に巻きつけられて殺された。その間に町外れの旅館に夜遅くになって、戦闘帽を目深にかぶり襟巻きで顔の大部分を隠した不審な復員兵風の男が一人でやってくる。男は夜10時から12時まで行き先を告げぬまま外出していった。
その頃、犬神家では白マスクの男が本当に佐清であるかを鑑定するために、佐清が出征の際に近くの那須神社に奉納した手形との照合を迫られていた。母の松子は当初は頑なに拒んでいたが、観念し手形は犬神家の者が見守る中、警察の鑑識が採取し分析することになった。
犬神家の家宝「斧(よき)、琴、菊」(よきこと聞く)は、いまや祝い言葉ではなく、呪いの連続殺人の呼称となった。「菊」と「琴」での殺人が行われた今、次は「斧(よき)」かと緊張が走る犬神家。
私立探偵金田一耕助によって血で血を洗った犬神家の系譜が次々と過去にさかのぼって解明されていく。さらに、那須神社の神官大山が金田一に語った佐兵衛と野々宮晴世との関係と珠世の存在には驚愕の事実が隠されており遺言書の内容にも関わっていたのだったが...
さて、ここから先は核心に迫って来るのでポイントだけを書く。
1.白マスク姿の"佐清"の手形の鑑定結果は如何に?
2.顔を隠した謎の復員兵らしき男は果して何者か?白マスクの男とは関係があるのか?
3.行方不明の青沼静馬の消息は?静馬の母、菊乃が三人の娘たちから受けた酷い仕打ちとは?
4.斧(よき)による殺人は行われるのか?
5.珠世は一体この先誰を結婚相手に選ぶのか?それとも自ら権利放棄するのか?
6.珠世に佐清との結婚を迫る松子だが、松子の思いは叶うのか?
7.金田一が女中のはるを通じて分析を依頼した、毒殺された若林の毒の正体とは?
8.金田一はこの難事件解決の糸口を掴めたのか?

等を中心に既に筋をご存知の方もそうでない方も是非映画館でご覧下さい。
【鑑賞後の感想】
市川崑監督が再びメガホンを取った横溝作品ということで期待して観にいった。横溝正史作品の大ファンである私は、当時の大ブームの頃は高校生から大学生にかけての頃で単行本を買い映画や古谷一行のTVシリーズまで食い入るように観てきた。
今回の「犬神家の一族」は横溝作品らしい田舎の財閥を舞台とした、独特の人間関係と過去の様々な怨念が描かれており大好きな作品だ。
市川監督は前回と同じ石坂浩二を金田一耕助に起用した。この人選については文句はないし当然の配役だろう。その他は、人気女優の松嶋菜々子を配して最近の年代層にも訴える配慮がなされている。脇を固める俳優陣はここで述べるまでもなく、過去に名を成し主役を張ってきた女優や男優ばかりで確かな演技力は目を見張る。何しろ佐兵衛を演じた仲代達矢がオープニングの臨終のシーンだけにしか登場しないのだから贅沢な起用でもある。
最近の邦画ブームは洋画を凌駕する勢いで、様々なテーマを持った作品が公開され興行収入も物凄いが、市川監督の今回の作品は特に奇をてらうこともなくオーソドックスで王道的な作りに終始した。
金田一耕助の謎解きも既に定着しているので、これについては目新しさはなし。欲を言えばロケ地を前回とは変えて欲しかったとの希望はあるのですが...
【自己採点】(10点満点)
7.7点。これを機に再び横溝作品の公開ブームが来れば...

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Last updated  2007.01.02 18:05:27
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