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カテゴリ:映画・ミュージカル、音楽題材映画
93.Onceダブリンの街角で
■原題:Once ■製作年・国:2006年、アイルランド ■上映時間:87分 ■日本語字幕:税田春介 ■鑑賞日:11月23日、シネ・アミューズEAST(渋谷) ■公式HP:ここをクリックしてください □監督・脚本:ジョン・カーニー □製作:マルチナ・ニーランド □製作総指揮:デヴィッド・コリンズ □撮影:ティム・フレミング □衣装:ティチアナ・コルヴィシエリ □編集:ポール・ミューレン □音響:ロバート・フラナガン □美術:タマラ・コンボイ ◆グレン・ハンサード(男)父の経営する掃除機修理屋で働きながら路上ライヴで生活する ◆マルケタ・イルグロヴァ(女)チェコ移民で街で花を売りながら幼い子と母とひっそりと生活する ◆ビル・ホドネット(男の父)掃除機修理で生計を立て息子と二人暮し ◆ダヌシェ・クトレストヴァ(女の母)チェコから娘と孫と共に引っ越してくる 【この映画について】 ダブリンの街角で今日も一人の男がギターを抱えながら誰が聞いているとも知らずに演奏を続け、そこに偶然通りかかったチェコ移民の女性との心のふれあいを描いた作品。お互いの共通点は「音楽」で、それを媒介にして男女の仲を超越した「友情」で結ばれる。 映画全体はこの「魂の音楽」で語られるので、決して出演者のセリフや演技力で成り立っていない点に注目してもらいたい。 当初はアメリカでも単館公開に近かった(2館)作品が、徐々にその素晴らしさが口コミで伝播し140館までの拡大公開されるに至った。 主演の二人はプロのミュージシャン。さらに監督は、グレン・ハンサードと同じバンド(アイルランドの人気バンド、The Flames)でプレイしていたという生粋の“音楽映画”だ。 この映画は第80回アカデミー賞で見事に「最優秀歌曲賞」を受賞した。 【ストーリー】(ネタばれなし) アイルランド、ダブリン。多くの人が行き交うグラフトン・ストリートでオンボロのギターをかき鳴らし自作の歌を唄う男がいる。そこに一人の女がやってきた。10セントのチップを出し、あれやこれやと男に質問する。挙句、掃除機の修理の約束をさせられてしまう。 翌日、壊れた掃除機を持って女が現れた。途中、ピアノを弾かせてもらえるという楽器店に立ち寄った。彼女の腕前に感心した彼は、一緒に演奏することを提案するのだった。 彼女は楽器店の店主と顔馴染みで、彼女がピアノを弾きたくなったら売却済みの楽器でなければ快くOKしてくれる。彼女のピアノと彼のギターでのセッションでミュージシャンとして意気投合し、彼は彼女を気に入り彼女が依頼した掃除機の修理を父に任せ2階の自室に招く。そこで音楽の話をするが、彼が「泊まっていていかないか?」と誘ってきたことで動揺し家を出て行ってしまう。 翌日街角で花を売り歩く彼女を見つけて昨日のことを詫びるが素っ気無い。そこで彼は自作曲のCDとプレイヤーを渡すと、意外にも自宅へ招かれたがそこで見たのは移民としての厳しい生活の現状だった。 それでも彼女は彼の提案を受け入れ、拙い英語の歌詞を付ける喜びを感じていたのだった。 彼女は花売りの仕事と家政婦の仕事の追われ、彼は父の掃除機修理の手伝いをしながらも街角で演奏し別れた彼女を思い出しながら曲作りに精を出しロンドンへ行き成功することを夢見ていた。 ある日、彼が父が大事にしているヴィンテージ・バイクを無断で拝借し、彼女をダブリン郊外の風光明媚な海岸へと誘った。お互いに心を和ませ、始めて心を開いた彼女は自らのチェコでの生活やまだ彼に告げていなかった自らのことを話し始めたのだった。 彼はそれから数日経ってから、彼女に、自分がロンドンへ渡る決心を告げ一緒にこないかと誘う。そして最後の週末を一緒にレコーディングしたいと提案し、彼女も申し出を快諾し積極的にスタジオと交渉するなどしたサポートする。 彼もミュージシャン探しに街中でストリート・ミュージシャンに声を掛けてついに念願のレコーディングに漕ぎ付けたのだった。本番前には集まったメンバーとともに地元のバーで伝統音楽を歌い大いに盛り上がった。 そして遂に、レコーディングの日を迎えた。そこで彼女は突然泣き崩れるのだったが、その真相は...。 さて、ここから先は核心に迫って来るのでポイントだけを書く。 1.彼女がダブリンへ移住してきた本当の理由とは? 2.彼女が彼に海岸で告げた重大なこととは?それを伝えたときの言葉とは? 3.彼が「ロンドンへ行こう」と誘って来た事に対し彼女はなんと答えたのか? 4.レコーディング・スタジオで彼女が流した涙の意味とは? 5.彼がロンドンへ旅立つ空港で、胸に去来したものとは?果たして彼女は来るのか? などを中心に公開館は少ないので観にいくことが出来る人は「映画館」で、遠隔地の方はDVDで是非是非ご覧下さい。きっと感動しますよ! 【鑑賞後の感想】 この映画はアイルランド出身のミュージシャンであるジョン・カーニー監督と、監督と同じロック・グループのメンバーであるグレン・ハンサードの体験が元になっているそうだ。 相手役のチェコ出身のマルケタ・イルグロヴァとグレン・ハンサードはミュージシャン同士としても交流があり、一緒にアルバムも出すなど息はあっている。 映画全体と通して言えるのは、二人が俳優として「演技」をしている訳では決して無い。大部分が音楽であり、所謂「セリフ」と呼べるものは無いに等しい。それでもこの映画がこれだけの評判をアメリカで呼び、私が観にいった映画館もミニシアターながらも幅広い年齢層の人たちで満席だった。 この映画は基本的には「音楽映画」であるが厳密に言えば「ミュージカル」ではない。音楽の歌詞と旋律が映画のワンシーンを物語っているので、俳優でないミュージシャンが本職の二人が出演していても違和感がないのはそのためだ。 アイルランド出身の音楽家と言えばロック界でも「U2」「エンヤ」などを含めてそのジャンルも多彩である。 この映画では主演のグレン・ハンサードが音楽を全面的に担当し、そこにマルケタ・イルグロヴァが絡んでくるのが基本。そのサウンドはどこかアイルランドのトラッド色を感じさせながらも、ロックやフォーク的なサウンドになっていて映像とすんなりと溶け込んでいたのは見事でした。 サントラ盤はアメリカでも大ヒットとなったとのことでそれも納得しますね。私はまだサントラ盤は買っていませんが、買おうかな...。 【自己採点】(100点満点) 91点。音楽を通じた「男女の友情」を描いたそんな作品でした。低予算でもこんなに印象的な映画が作れる見本のような作品でした。 人気blogランキングへ←映画の話題がザクザク お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2009.06.01 22:58:11
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