映画『コールド・マウンテン』を観て
【この映画について】この映画は今年のアカデミー賞でレニー・ゼルウィガーが最優秀助演女優賞を獲得した。あいにく「ロード・オブ・ザ・リング」が総なめにしたので目立たなかったが、この作品もそれに負けないいい作品だ。主演は二コール・キッドマン演じるエイダと、そのエイダが南北戦争の戦場に赴いてしまったジュード・ロー演じるインマンとの恋物語だ。監督のアンソニー・ミンゲラは「イングリッシュ・ペーシェント」で見せたのと似た手法でこの映画を作っているが、どこが似ているかは観て感じて欲しい。一方、助演女優賞に輝いたレニー・ゼルウィガーは「シカゴ」での演技が印象に強い女優だ。この三人と脇を固める俳優陣もしっかりしているので全体にしまっている。ルーマニアでロケしたノース・カロライナの四季を通した映像も目立たないが美しいし、バックの要所に流れる音楽も素晴らしい。陰の要素をもったカントリー・ミュージックとでも表現したらいいような音楽は映像とストーリーに見事に合致している。英国アカデミー賞では音楽賞を受賞しているし、アカデミー賞でもノミネートされていたほど素晴らしかった。【ストーリー(ネタバレなし)】映画の舞台は1864年の南北戦争で、コールド・マウンテンとはノース・カロライナにある山に囲まれた田舎だ。その街にチャールストンから引っ越してきたエイダの一家と、その街に住む寡黙な男のインマンとの出会いから全ては始まる。南北戦争の影響はこの街にも及びやがて街の若者は戦場へと向かった。その中には知り合ったばかりのエイダとインマンもいた。わずか知り合って3日の二人だが出征の直前に交わした熱いキッスが二人の今後の運命を決めた。映画ではこの二人のそれぞれの現在、過去をオーバーラップさせて話を進行させる。戦場で負傷した挙句にエイダを忘れられないインマンは重罪を覚悟で脱走する。だが各地で脱走兵狩りが始まっておりおちおちゆっくりと600KMも戦場から離れた、コールド・マウンテンには帰れない。途中で何度も危ない目に会いながらも果たして二人は再会できるのだろうか。コールド・マウンテンでは父が急死して広い敷地で生活に困る一人娘のエイダの窮状を見かねて、レ二ー・ゼルウィガーがエイダの農場にやってくる。ここからやっと話が少し展開してくるのと、彼女がストーリーの中盤で登場するのだが途端に明るくなるのは不思議だ。逞しい行き方をしてきたレニー・ゼルウィガー演じるルビーに引っ張られて深窓の令嬢育ちのエイダも徐々に一人の人間らしい生活を取り戻す。一方のインマンは紆余曲折を経て何とかコールド・マウンテンを目指すが、そこは義勇軍を名乗る地元の組織が脱走兵狩りに目を光らせている。脱走兵をかくまっていたと誤解されそうになった二人は何とか農場を逃れて山の中に入っていく。そこで出合ったのは何とインマンが命からがら逃げて辿り着いたのだった。やっと巡りあった二人は納屋でお互いの愛を確認しあうが、そこにも義勇軍の魔の手が伸びてきた。さあ、果たして二人の愛は成就し生活を営む事が出来るのか?。それとも悲劇的な結末が待つのかは映画館で確認してほしい。【鑑賞後の感想】この映画は主役の二人が出会ってからいきなり3日目で試練が訪れる。それは南北戦争への出征である。だがこの時点で二人は果たしてどこまで愛し合っていたのか?。ろくなデートもしていないし、ましてや肉体関係も結んでいなかった。でもそれは出征前のキスで吹っ飛んでしまう。そのキスを二人とも忘れないでいて、再び会いたい動機付けにも用いている。そこには今の世の中には無い恋愛感が横たわっている。だがこの二人だけの恋愛物語ではこの映画はここまで感動を呼べなかっただろう。そこにはアカデミー賞を撮ったレニー・ゼルウィガーのキャラも大いに貢献しているし、影中ながら音楽の効果も大きいとおもう。つくづく映画は主演俳優や監督の資質だけで成り立っているものではないと思った作品だ。