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マックの文弊録

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2010.02.20
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カテゴリ:そぞろ歩き

☆ 2月20日(土曜日) 旧一月七日 辛丑(かのと うし) 先勝: 水戸の梅祭、旧七草

昨日の雨水を過ぎたら暖かくなった。雨水は父の命日でもある。父は14年前のこの日に、長く住んだ岐阜の地で逝った。周辺に汚れ雪の残る寒い日だった。それで、昨日は父を偲ぶ意味もあり、彼が幼い頃遊んだ王子の周辺へ行ってきた。命日にも帰郷がままならない不肖の息子のせめてもの供養の積りだった。

私の利用する西武池袋線では暫く前から線路の「二階建て化」が行われている。最初は練馬駅とその前後の駅が二階建てになった。これは地下鉄線との相互乗り入れが進んだせいだ。西武池袋線は、元々は池袋と飯能を結ぶだけの鉄道だった。父が未だ東京の人間だった頃には、西武電車は都心の人々の生産物を秩父に運び、秩父からはセメントを運んでくる電車だったそうだ。だから私が西武線の沿線に居を構えたと聞いた父は、「なんだ、汚わい電車に乗って三業地まで行くのか!?」と馬鹿にしたものだ。

「汚わい」とは、人間の生産する醗酵前の肥やしのこと、つまりは新鮮な「●ンコ」のことである。
「三業地」とは、色っぽい生業の集中する地域の事である。「芸者の置屋」、「料理屋」、そして「待合(芸者と客が待ち合わせて、そのう・・・ナニをなさる場所=今風にいえばラブホですな。)」の三つの業種に携わる方々が軒を連ねている場所を三業地といい、池袋のすぐ先、大塚辺りに、昔は大規模なものがあったそうだ。
汚わいも三業地も今では死語になってしまった。
つまりは父の感覚からすると、私はそんな臭くもいかがわしいところに新居を構えたわけだ。

しかし、今は西武池袋線も池袋も全く様変わりしている。
西武線は西武池袋線、西武新宿線と、共に都心と郊外住宅地を結ぶ通勤路線であると同時に、秩父の夜祭、長瀞峡、芝桜の里、小江戸川越などへ行くための観光鉄道にもなっている。今では汚わいもセメントも運ばない。

そして池袋は山手線や埼京線などの他に、西武池袋線、東武東上線、地下鉄有楽町線、丸の内線、副都心線などが集中し、都内でも一大ターミナル駅の一つになっている。
西武池袋線はこれらの内、地下鉄有楽町線と副都心線と相互乗り入れをしている。有楽町線は、その名の通り有楽町や永田町、銀座、木場などに行くことができ、副都心線は新宿御苑、渋谷などに、所沢や飯能などから乗り換え無しに直行できる。
その接続点が練馬駅になっているので、この駅を中心として二階建て化が進んだのである。

つい最近練馬からやや所沢寄りの、石神井公園駅の二階建て化が完成した。因みにこの石神井公園というのは、東京周辺以外の人には難読駅名なのだそうだ。これは「しゃくじいこうえん」と読みます。

それで、今日西武池袋線に乗っていたら、石神井公園駅の付近で富士山が見えたのである。期待していなかったので意外だった。
西武池袋線の沿線では、西方に富士山を遠望できる地点は未だ幾つか有るが、池袋に近づくほどにこれが無くなる。都心に近づけば近づくほど、周囲には高層建築のマンションなどが増えていくから、これは当たり前だ。石神井公園や練馬の辺まで行くと、富士山など見えるわけは無いと思っていたし、実際これまでは見えなかった。

それが、駅の二階建て化のおかげで、目線の位置が上がったため、思わぬところで富士山を遠望できるようになったのである。

私も日本人の一人なので、富士山を目にすると思わず見とれてしまう。お天気や雲の具合、それに季節によって富士山の姿も見え方もそれぞれに異なる。家々の屋根の彼方にくっきりとした姿が意外に大きく見えると、思わずその日は何か良い事がありそうな気になって嬉しい。

都心と郊外を結ぶ電車は、土地の確保も大変だろうし、値段も高いだろうから、駅や路線の拡張は横方向ではなく縦方向にならざるを得ない。沿線に住む人たちにとっては、高いところを電車が走っていくのは余り歓迎できないことかもしれないが、乗っている側にとっては、車窓の視野が広がり、こうして富士山を眺めることができるようにもなるのである。

今日の富士山は白い冠を戴きながら、やや霞んで見えた。
空の方はもう春になってきたようだ。





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最終更新日  2010.02.23 14:34:15
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