北海道の若者が海外で活動中!【12月活動報告・鹿野皓己さん】
こんにちは総合政策部政策局総合教育推進室です若者の海外留学を官民挙げて支援する「ほっかいどう未来チャレンジ基金」により道産ワインを世界に流通するブランドとして確立させ、北海道をワインの銘醸地にすることを目指し、ドイツでワイン醸造の最先端技術を学んでいる未来の匠コース鹿野皓己さんから12月の活動の様子が届きました 12月は、先月から引き続きクリスマス、年末年始に向けてのビン詰め作業を行うワインのろ過や赤ワインの清澄・熟成作業を中心に行いました。 その他にはイベントとして、研修先のワイナリーでの消費者向けの試飲会や、クリスマス時期に開催されるクリスマスマーケットにも参加しました。赤ワインは半年から数年熟成を経て複雑さを与えてからビン詰めをして販売されます。そのため主発酵(アルコール発酵)を終えてから味に複雑さを与えるMLF発酵(マロラクティック発酵)や緩やかな熟成や樽香を付与する目的で樽での貯酒を行います。MLF発酵は、主に赤ワインで行われる醸造作業であり、赤ワイン中の「リンゴ酸」が乳酸菌によって代謝され、リンゴ酸より酸味の優しい「乳酸」に変わることでまろやかで深みのあるワインに仕上げる工程になります。こちらのワイナリーのMLF発酵は、一部の高価格帯のワインを除いて乳酸菌のスターターを用いず、元々ワイン中に存在している乳酸菌で発酵を行います。理由としてはスターター使用によるコストを抑えて、出来るだけリーズナブルな価格で販売を行うためです。そのためスターターを使用しないテーブルワインは、MLF発酵の進捗にばらつきが出たり、全く発酵が進まないものありました。 発酵がうまく進まないワインには、同一種類のワインでMLF発酵が順調に進んでいるものをブレンドするなどして、気温が低くなる前にMLF発酵がしっかりと行われるように管理を行いました。(気温が低くなると、スターターを添加しても発酵が行われなくなってしまうため) スターターを添加せずにMLF発酵をコントロールするこちらの手法はワイン醸造をする過程で大切な要素になるのでとても勉強になりました。 MLF発酵が終わった赤ワインは随時清澄作業(渋味の除去作業)を行っていきました。 今年収穫した葡萄で造るワインは白とロゼワインの清澄・ろ過作業を優先に行いますが、赤ワインも発酵が終わっているのにそのままタンク内に貯蔵をしていると滓から雑菌が繁殖しオフフレーバーの原因となるため滓引き(滓を取り除く作業)を行いました。特に今月は若干遅れ気味だった赤ワインのMLF発酵が終わり、滓引きを一斉に行ったため作業量も非常に多かったです。 中でも130KLタンクに貯蔵されていたワインの滓引き作業時は、タンクに残った滓を外にかき出すために実際にタンクに入って滓や酒石の清掃作業を行いました。私が現在勤めているワイン会社でもここまで大きいタンクはないので、初めてタンクの中に入って清掃作業を行いました。滓自体は発酵後のワインから約5%産出するのですが、130KLタンクになると5%といえど5,000Lほどの滓が発生するため改めてこちらのワイナリーのスケールの大きさを感じました。 次にMLF発酵、清澄作業が終わったワインの貯蔵作業を行いました。 樽に貯蔵する目的は二つあり、一つは樽の香りをワインに移してワインに深みを持たせること、もう一つは緩やかに酸化させて熟成感を獲得することです。こちらのワイナリーには2種類の樽があり、赤ワインに与えたい味わいや香りによって樽を使い分けています。一つはワイナリーでよく使われる228L容量の「バリック」と呼ばれる樽と、それよりも非常に大きいドイツで伝統的に使用されている「フォルツファス」と呼ばれる樽になります。前者は樽から抽出される香りづけや酸化を目的としており、主に樽の香りに負けないフルボディの品種で使用されます。後者はもともとステンレスタンクが醸造で使用される以前に発酵・熟成を行っていた伝統的な樽であり、メンテナンスを繰り返して十数年単位で使用されるので樽の香りは移らず、緩やかな熟成を目的として使用されます。 これらの特徴を生かして、質の高いぶどうを使用した高価格のワインを目的に応じて樽の中で貯蔵を行います。イベントしては、12月中旬に開催された私が研修を受けているワイナリーの一般消費者向けのワインの試飲会に参加しました。この試飲会は土日の2日間開催され、参加料として2€のグラスを買うことで誰でも参加でき、ワイナリーで現在販売されている約60種類全てのワインが試飲出来る消費者還元イベントでした。会場は現在醸造を行っていないワイン蔵の倉庫で行われ、長テーブルの上に赤、白、ロゼに場所を分けて置かれ、お客さんが好きなワインをセルフで注ぎ試飲を行うスタイルです。 気に入ったワインがあれば購入も可能で、どのワインも2割ほど値引きされているので非常に来場者が多かったです。日本でも様々な試飲会が行われていますが、ここまで消費者に還元的なイベントは聞いたことがなかったので非常に興味深かったです。クリスマスシーズンにはドイツで伝統的に行われているクリスマスマーケットにも行きました。フランクフルトのものに比べると規模は小さいですが、こちらの地域は古都として有名なのでライトアップされた昔ながらの民家や教会は日本では見ることが出来ないヨーロッパならではの光景でした。 会場には露店が所狭しと並んでおりツリーの飾りつけ用の小物やクッキーや軽食、ワインが販売されております。ワインは通常のワインも売られていますが、メインはドイツで冬に楽しむグリューワインと呼ばれるホットワインを楽しむのが一般的です。このクリスマスマーケットは私の研修先のグリューワインを使っている露店が多かったです。今月は赤ワインの清澄・熟成作業を中心に先月からの作業を引き続き研修しました。その他にもイベントに参加することができ、ドイツの文化を通してワインの普段と違う楽しみ方を実際に体験できました。 来月は、ドイツで醸造責任者として活躍されている坂田千枝さんが働くワイナリーに1週間ほど研修に行く予定です。現在研修を受けているホーエンローエのワイナリーとの違いを比較しつつ新たなことを学びたいと思っております。 研修も残り2か月なので、毎日を大切に過ごしながら少しでも北海道の発展と私自身のために勉強してまいります。 ▼「ほっかいどう未来チャレンジ基金」についてはこちら ▼「みらチャレ」公式facebookページについてはこちら