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テーマ:法律についてのあれこれ(91)
カテゴリ:刑法、犯罪学・刑事政策、犯罪心理学
最高裁判決で、建物への落書きは建造物「損壊」になるとの判断がされました。
「建物への落書きは『建造物損壊』、最高裁初判断」(読売新聞 2006年1月19日3時2分) 「壁を壊すなど建物の機能を損なった場合は明らかに同罪が成立するが、落書きについては明確な司法判断がなく、拘留(30日未満)と科料(1万円未満)の罰則しかない軽犯罪法違反を適用することが多かった。 今後は、5年以下の懲役が科される同罪を適用しやすくなり、商店街のシャッターなどへの落書きが社会問題化する中で、抑止効果が期待できそうだ。」(上記読売新聞)とのことです。 判決文はこちら。→最高裁平成18年01月17日 第三小法廷決定 建造物損壊罪(刑法260条)の「損壊」に落書きすることが当たるとは、物理的破壊を思わせる本来の意味からは一般にちょっと違和感がありますが、 一応法解釈的には無理ないと思います。 あとで書きますが、判決後のことを考えても、ちょうどよい判決が出たのかなという印象。 さて、「損壊」ですが、 「損壊とは、必ずしも物理的に破壊する行為に限らず、広く、物をその用法に従って使用することを事実上不可能にする行為、あるいはその使用価値を減少させる行為をいう。」 (有斐閣・法律学小辞典)とあります。 最高裁判決では、 「本件建物は,区立公園内に設置された公衆便所であるが,公園の施設にふさわしいようにその外観,美観には相応の工夫が凝らされていた。」 「その大書された文字の大きさ,形状,色彩等に照らせば,本件建物は,従前と比べて不体裁かつ異様な外観となり,美観が著しく損なわれ,その利用についても抵抗感ないし不快感を与えかねない状態となり,管理者としても,そのままの状態で一般の利用に供し続けるのは困難と判断せざるを得なかった。 ところが,本件落書きは,水道水や液性洗剤では消去することが不可能であり,ラッカーシンナーによっても完全に消去することはできず,壁面の再塗装により完全に消去するためには約7万円の費用を要するものであった。」 として、外観、美観を著しく汚損したとしています。 事案が公衆便所じゃなくて、上記読売新聞に挙げられているように、商店のシャッターとかだったらよかったんだけどねえ。 公衆便所で「美観」ねぇ・・・合わねぇ~~~(^_^;) しかも新聞記事からは、暴走族(と思われる)がよく街道とかに書くアレを想像したんですが、事案的には、書いた落書きは「反戦」「戦争反対」「スペクタクル社会」だって。orz ま、まあ、いいや・・・ <追記> あまり詳しく触れませんが、本件はトイレの個室内のちょっとした「落書き」というレベルでなく、壁面全体にスプレーのようなもので書きまくっているようです。 上の最高裁判決文中にも「ほとんど埋め尽くすような形で」とあります。 事案については、こちらのブログが参考になります。 Re:F's blogroom「常識的に考えても・・・・・ねぇ」(ジョカトーレ・Fさん) <追記終わり> 刑事政策的に最近よく言われているのが、 犯罪抑止にはまず軽犯罪をなくすことから、ってやつです。 たとえば、どっかの空き地にナンバーのない車が放置してあったとすると、そのうち、窓ガラスが破られ、車内にあったものが持って行かれ、タイヤも持って行かれ、車もボコボコにされ・・・とさんざんな様子になっていく。・・・ってやつ。 軽い犯罪が放置されている状態が続いていると、なんだ、いいのか、もうちょっと、もうちょっと、とどんどん犯罪のレベルがエスカレートしていく。 ということで、ニューヨークで成功したのが、地下鉄や街中の落書きを全部消したら犯罪が減った、というものです。 札幌のススキノでも、駐車違反の取締りを強化したら、犯罪件数が減ったっていう例もありました。 と、そんな感じで、暴走族(と思われる)がよく素晴らしい絵を描いている横浜・横須賀なんても、全部消して市民から募集して別の絵にしたりしていますね。 たかが落書き、されど落書きなのでした。 今後は落書きをすると犯罪も重くなるので、 落書き自体だけでなく、重大犯罪にも、犯罪予防によい結果となることが期待されます。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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