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テーマ:法律についてのあれこれ(91)
カテゴリ:立法・司法・行政
ある高裁判決文を読んでいたら、いつもながらだけど腹が立つフレーズ。
「当裁判所も、被控訴人の請求はいずれも理由があり、これを認容すべきであると判断するが、 その理由は、次のとおり訂正するほかは原判決「事実及び理由」中の「第4 争点に対する判断」欄記載のとおりであるから、 これを引用する。」 「原判決7頁7行目の『理由がある。』の後に改行して、次を加える。」 一般的に、一般人が考える「引用」って、文章中に他の人の説などを記載して自分の文章に利用すること、だと思います。 参考: 引用「古人の言や他人の文章、また他人の説や事例などを自分の文章の中に引いて説明に用いること。」(大辞林) でも裁判所が考える「引用」はちょっと違う。 「引用する。」と書けば、引用される文を記載しないで、引用したことになる。 わかんねっつーの。(-_-;) っとに、これじゃあ、原判決(地裁)の判決文を読まないと何がなんだか、何に付け加えたんだか、分かんないじゃないか~~! 本件の地裁の判決文は手に入れられなかったし・・・。 全く! なんとかしてくれ。 一応、こんなことについては、先日、ちょっと期待な最高裁補足意見が出たみたい。 「1審細切れ引用『望ましくない』…最高裁判決補足意見」(2006年1月20日1時10分 読売新聞) 「判決文:「つぎはぎ引用ダメ」 泉最高裁裁判官が補足意見」(毎日新聞 2006年1月19日 21時05分) 「『つぎはぎ判決、わかりにくい』最高裁判事、高裁に苦言」(朝日新聞 2006年01月19日19時58分) 判決文はこちら。→最高裁平成18年01月19日 第一小法廷判決 「最高裁第1小法廷の裁判長を務めた泉徳治裁判官は19日の判決で『1審の判決文をつぎはぎ的に引用する2審の判決文は、国民に分かりやすい裁判の実現のためにも望ましくない』と異例の補足意見を述べた。 補足意見に拘束力はないが、1審判決を部分引用して継ぎ合わせる形式は一般的に取られており、判決文を書く裁判官に影響を与えそうだ。」(上記毎日新聞)とのことです。 泉裁判官の補足意見では、 「判決書の作成にコンピュータの利用が導入された現在では,第1審判決書の引用部分をコンピュータで取り込んで,完結した形の控訴審の判決書を作成することが極めて容易になった。 現に,「以下,原判決『事実及び理由』中の『事案の概要』及び『当裁判所の判断』の部分を引用した上で,当審において,内容的に付加訂正を加えた主要な箇所をゴシック体太字で記載し,それ以外の字句の訂正,部分的削除については,特に指摘しない。」, あるいは「以下,控訴人を『原告』,被控訴人を『被告』という。なお,原判決と異なる部分(ただし,細かな表現についての訂正等を除く。)については,ゴシック体で表記する。」等の断り書きを付して, 控訴審判決書の中に引用部分をとけ込ませ,自己完結的な控訴審判決書を作成している裁判体もある。 このような自己完結型の控訴審判決書が,国民にわかりやすい裁判の実現,裁判の迅速化という観点において,継ぎはぎ的な引用判決よりもはるかに優れていることは,多言を要しないところである。」 としています。 当事者にとっても、 高裁判決が出たときに、地裁の判決文と高裁の判決文を手元に置いて、両方見ながら比べ合わせて見ないと意味が分からないなんて、ひどい話です。 まして、ふつうに判例雑誌や判例検索などで見るだけのリサーチ人間にとっては、 当該事件の地裁判決文が一緒に載ってるとは限らず、 また、ほかで検索に引っかかるとも限らず、 結局何言ってるかわかんなかったってことにもなる。 なんとかしてほしかったけど、最高裁で補足意見ですが、いい意見が出ました。 効力ないですけどね。 でもこれで判決文もちっとは読みやすく変わってくれるといいなあ・・・。 でも見たことなかったけど、 「(ゴシック体とかで書体を分けたりして)控訴審判決書の中に引用部分をとけ込ませ,自己完結的な控訴審判決書を作成している裁判体もある」(上記泉裁判官補足意見)んですねえ。。。 見たことなかったけど。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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