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テーマ:法律についてのあれこれ(91)
カテゴリ:貸金業規制法、消費者法
日本の裁判制度っていうのは、「三審制」と昔(小中学生とかの頃)教わったと思いますが、厳密にいろいろ考えると、再審とかもあるわけで、1つの件について、4審以上ってのもあり得るわけですね。
とはいえ、要件がかなり厳しいので、めったに4審以上ってことはないでしょう。 貸金業者への過払い金返還請求訴訟では、この「4審」が容易になりそうな気配です。 「上限金利上回る利息徴収認めず、『4審』最高裁が判決」(2006年3月17日23時9分 読売新聞) 「『灰色金利』無効、特例で特別上告 最高裁が判決」(朝日新聞 2006年03月18日02時36分) 「貸金返還訴訟:『4審』で借り手救済 特別上告、最高裁が差し戻し判決」(毎日新聞 2006年3月18日) 三審制は、昔学んだとおり、 地裁 → 控訴(高裁) → 上告(最高裁) となり、 少額の案件などで簡裁から始まれば、 簡裁 → 控訴(地裁) → 上告(高裁) となり、 高裁が上告審でだいたい終了します。 「三審制」という昔学校で習った頭があるので、 弁護士事務所の依頼者の方などは、 「負けても最高裁まで争ってやる!!」といった気持ちの人が多いのですが、 実際は、高裁、最高裁と上がるにしたがって、受け付けられにくくなっています。 だから、事実について調べる、地裁での争いが一番の勝負と思います。 高裁で逆転、ということもあるけど。 依頼者がどうしても最高裁へ上告するという気持ちであれば、受け付けられにくいことを説明した上で、苦し紛れの憲法違反を主張する上告理由書を書いてみたりするのでしょうね、弁護士さんは。 法令違反での上告受理申立理由書もつけて、2つセットで最高裁へ書面提出をして、やるだけやった、という感じで最高裁の判断を待つ。 結局、受けてもらえないことが多いですが・・・。 そんなんで、 ふつうの訴訟でも最高裁に受け付けてもらうのでさえ、大変なんです。 それなのに、簡裁から始まった案件で、上告審の高裁までいき、さらに、「特別上告」として最高裁に受け付けてもらうというのは、至難の業でしょう。 しかも、通常の上告としての最高裁であれば、憲法違反だけでなく、法令違反を理由に上告受理申立てをし、受け付けてもらうこともできますが、特別上告の申立ては、憲法違反を理由とする場合に要件が限られるらしい。 (「らしい」というのは、そんな案件見たことなかったからです。民訴法の条文のそんな条文があったことも忘れました。) 民事訴訟法 (特別上告) 第327条 高等裁判所が上告審としてした終局判決に対しては、その判決に憲法の解釈の誤りがあることその他憲法の違反があることを理由とするときに限り、最高裁判所に更に上告をすることができる。 2 前項の上告及びその上告審の訴訟手続には、その性質に反しない限り、第二審又は第一審の終局判決に対する上告及びその上告審の訴訟手続に関する規定を準用する。この場合において、第321条第1項中「原判決」とあるのは、「地方裁判所が第二審としてした終局判決(第311条第2項の規定による上告があった場合にあっては、簡易裁判所の終局判決)」と読み替えるものとする。 特別上告の要件は、憲法違反の場合だけなので、裁判所で憲法判断があったようだ、と思いました。 裁判所が憲法判断をすること自体もめずらしいと思ったので、判決文を見てきました。 判決文はこちら。→ 最高裁ホームページより「平成18年03月17日 第二小法廷判決」 ・・・憲法判断はされていませんでした。 「高等裁判所が上告審としてした終局判決に対して最高裁判所に更に上告をすることが許されるのは,民訴法327条1項所定の場合に限られるところ,本件上告理由は,違憲をいうが,その実質は単なる法令違反を主張するものであって,同項に規定する事由に該当しない。」 とした上で、 「職権による検討」として、明らかな法令違反として、破棄差戻しとしています。 大学時代、民事訴訟法では、 特別上告理由に憲法違反が示されていなければ、特別上告としては不適法として却下される、と教わりました。教科書にもそう書いてありました。 しかし、特に過払い金返還請求訴訟案件では、最近最高裁が徹底した債務者保護を打ち出したこともあり、最高裁が、簡裁案件であっても、あらゆる訴訟で自分の判断を徹底させる、という強い意思の表れでしょう。 最近の他の最高裁判断を見てもアメリカ的だなあ、というのがいろいろありましたが、司法改革の影響下で、最高裁も司法積極主義となってきているようですね。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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