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カテゴリ:イスタンブール日々新たなり
【9月1日・火曜日】 このところ、何度も外出しているのに、毎回デジカメのメモリーチップを買い忘れるので、今日は絶対忘れまいと、左掌に水溶性のサインペンでSDと書いて、午後2時頃、家を出ようと、最後にFacebookのチェックをしたら、先頭にトルコ息子の1人、サイットのページが出て、絵文字の顔がべそをかいていて病気、と出ている。 どうした、と電話してみると、ひどい風邪らしくゴホン、ゴホンと咳が苦しそう。嗄れた声で、先月下旬からコック長のバイラムさんが長い休みを取っているので、コック長代理として働かなくてはならないのだという。 「よし、よし、これからうちを出て、幾つも用事があるので、5時頃になるかもしれないけど、顔を見に行ってやるよ」 「うん、待ってるからね。でもそんなに忙しいなら無理すんなよ、母ちゃん」 あーあ、これで37歳と言うのだから、トルコ男は甘ったれだなあ、うちの息子なんか、私がトルコに来て以来20年余りのうちに2回だけしか電話してこなかったぞ。父親と祖母の死を知らせるためにだけ。 あれこれ思いながら家を出て、まず額縁屋に寄り、今大急ぎで写真を1枚焼いて来るから、それをすぐに額縁に入れて貰える? 贈り物なんだけど、と言うと、額縁屋さんだろうと写真屋さんだろうと、仲良くしているのですぐに引き受けてくれた。 どちらも、チャイをご馳走になってしばらく待つうちに出来上ったが、60×40センチの額縁はそれなりに重く、ガラスを割ると大変なので一旦家に帰る気になり、店の外に出た途端、これも仲のいいジハンギル・タクシーのヴェフビさんがソカク(細い道)に入って来た。 ちょうどいい、家に戻ってタクシーには待っていて貰い、額縁は猫の手の届かない寝室に置いてすぐにまた出た。タキシム広場の銀行の前で降ろして貰い、ガランティ銀行の支店を覗くと5つの預金窓口があるのに、一つか二つにしか行員がいない。 入金するだけなのだが30分も待たされ、いらいらしながらやっと終わったときには5時を回っていた。 次は、あれ、何をするんだっけ、手に書いたような気が・・・左手を見てみると、滲んでしまっており、SDとは読めなかったが、書いておいたおかげで思い出すことが出来た。 8GBでは沢山写せていいが、逆戻りして画像を探す時不便だなあ、と4GBを頼んだら、もうそういう小さいのは売っていないのだそうだ。仕方ない、大事な場面でいつも以前の不要の画像を消さないと写せないという状況になりがちなので、ついに買ったのだった。 ウムット・オジャックバシュでは、5時過ぎなのでまだ客はほとんどいなかったが、5階のオジャック(炉)で、6階の客の注文の品をサイットが焼いているところだった。 忙しく動き回ったので、サイットの斜め前の席に腰を下ろし、ビールを取って、ジエル(レバー)を焼いて貰った。サイットは時々咳込み、後ろを向いて激しく身体を二つに折って咳をしていた。可哀想に。 火の前にいるだけでも暑いのに、彼は発汗剤を呑んだ、とのことで、頭から顔から喉元にかけて汗びっしょりで苦しそうだった。 「母ちゃんは病気の時、どうしてるんだい」 「滅多に病気しないのよ。でも風邪を引いたかな、と思うときは、すぐにこれを呑むのよ」と私は、自分の薬を見せた。そして彼に聞くと、飲みたい、というので1回2錠の3回分を試しに手渡すと、彼はその場ですぐに飲んだ。 やたらに他人の薬を飲んではいけないのだが、私のは日本で市販のバッファリン。解熱・鎮痛作用だけで、副作用もなく、同時に混ぜて飲まなければ害はない。 ジエル(レバー)の串焼き、アジュルエズメ、ビールはトゥボルグ 私もレバーを食べ、ビールを1本飲みながらしばらく彼のそばにいた。店に少しずつ客が入り始めて、これからが忙しくなるのだろう。交代要員のいないのは辛いことだが、サイットも10歳の男の子の父親なので、泣きべそをかいているわけにもいかないのである。 病気でも働かなくてはならないトルコ息子のそばで、ビールを呑んでいる困ったおっかさんだけど「来てくれただけでも嬉しい」と言うのを真に受けて、いいことをした、と満足し、帰り道でもう、次は猫達の餌のことで頭が一杯の私である。 帰りのソカクで見かけた白猫。オグリにそっくりです。 こちらがうちのハチャメチャ大王、腹ペコ王子、オグリです。 アントニーナ・アウグスタ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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