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カテゴリ:イスタンブールで人と会う
【12月28日・月曜日】 朝から天気はよかったが風の強い日で、つばのついた帽子は吹き飛ばされそうなので、普段は肩に巻くショールで頭をすっぽり包んで出かけた。タクシーで家を出たので、実際に帽子は飛ばされるわけもないのだが、それほど用心が必要なのだった。 特にタキシム広場というのは高い丘のてっぺんにあるので、真冬には風が唸りを上げて周囲に広がる大通りに吹き抜けて行く。私はタキシム広場から真直ぐ北に行くジュムフリイェット通り、軍事博物館に近いSGK(社会保険事務所)の前で降りて、通りを渡り、事務所にオメルさんを訪ねた。 居住許可証の次年度の分を申請した時、書類が1枚不足だったので、書類全体が戻されてきていた。それは言わば住民登録の抄本を取るようなものなので、後日裁判所に行かなければならない。オメルさんは身を屈めて机の下の引き出しから大きな封筒を取り出した。 七緒さんとの待ち合わせの9時半にはまだ30分以上もあるのだが、いい具合にオメルさんが「チャイを取りますから飲んでからお出かけなさい」と言ってくれたので、またしても「エルトゥールル・1890」の話をして宣伝係を務めた。 3~400メートル先にある五つ星のラマダ・ホテルの前で七緒さんと落ち合い、ちょっとホテルのロビーにある喫茶でチャイを飲んでから、エズギさんの会社に向かった。 10時頃会社に着くと、タキシム広場から続くジュムフリイェット通りに面した大きなビルの5階のフラットを全部使ったオフィスで、エズギさんが待っていてくれた。七緒さんとエズギさんも知り合いなので、付いて来てくれた彼女を見るとたいそう喜んだ。早速エズギさんの差し出す契約書に記入しサインした。 そのあとは当然、プロフィール写真が必要なので、自社のカメラマンにすぐに私の写真を何ポーズも撮らせたのだが、仕上がりを見たエズギさんは「駄目よ、どれもありきたりの写真になってるわ。もっと加瀬さんらしく撮れないの?」と無理な注文。 2人でしばらくああだこうだと違う話題も話し合っているので、もう帰っていいのかと思い、手にした古帽子を被った途端、エズギさんが声を上げた。 「あっ、それそれ、帽子を被ったところを撮りましょう。このイメージがいいわよ~!」 私が照れないようにエズギさん自身も一緒に寄り添って、愉快なツーショットが出来上がった。 エズギさんと私。 やっぱり照れくさいかも。 かくて私はエズギさんの会社と契約し、タレント予備軍となったが、いつ仕事が来るかまだわからないので、当分は収入にも結び付かないだろうから、イスタンブールに暮らす身には、ツーリズムで働く友人達同様、厳しい冬だなあ、と思った。 七緒さんとも知り合って5年目となりました。 脂ののった美味しいハムシ(イワシ)、イスタンブール名物です。 私はこの日から3日連続で魚をご馳走になりました。 カリデス・ギュヴェッチ(エビの土鍋煮込み) イカのフリッター、さくさくと良く上がっています。 帰り道、昼を過ぎたので、七緒さんとラマダ・ホテルのそばの庶民的なフィッシュ・レストランでお昼を食べた。すると、私よりずっと若い七緒さんが、「加瀬さん、いつもカフェでご馳走になったりいろいろお世話になっているので、今日は私から、と言うことにして下さい。」とにこやかに言う。 嬉しいなあ、こんな時。 私は遠慮なくご馳走になって、いつかまた七緒さんに美味しいものをご馳走出来る日が来ることを信じて店を出たのだった。 アントニーナ・アウグスタ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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