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カテゴリ:イスタンブール日々新たなり
【7月1日・金曜日】 私がもう2ヵ月近く奮闘中の翻訳仕事は、納期を一度6月20日から30日に延ばして貰ったにも関わらず、出来そうで出来ない毎日が続いて、6月からは友人にも半分くらい引き受けて貰ったものの、最後にアタテュルク空港の大規模テロ事件の発生、という不測の事態が起こって、28日の夜から全然仕事にかかれず、連日の寝不足にほとほと疲れ果て、パソコンの前で居眠りすること、1時間に二度や三度ではきかないくらい。 6月30日も、訳された文章の校正、監修をしていたが、いろいろ引っかかることが多く、ついに夕方、トプカプ宮殿の学芸員で、世界中の陶磁器についての研究家・専門家の、オミュル・トゥファンさんに教えて貰うことにした。あらかじめ都合を聞いて、彼が帰宅した頃に連絡をくれると言うので、そうしたら私の方からかけ直して、監修中の私にも分からなくて引っかかる事案について、彼が噛み砕いて説明してくれると言うことになったのである。 オミュルさんは日本語が上手な人である。彼自身の論文はトルコ語で書かれていても、その文章が明瞭で非常に分かりやすい、翻訳者にとって貴重なものだった。それに私も陶磁器は自分の好きな分野なので、何度かトプカプ宮殿に彼の講演を聞きに行ったことがあるため、訳すときも苦労はしなかった。 ところが、別な分野の専門の研究者の方の論文には、高度な文法を用いたつもりか、どの語がどの語を修飾しているのか判断に苦しむものもあり、翻訳者泣かせのものも往々にしてあるのだった。原文に忠実に訳すのが翻訳者に課せられる基本姿勢であるが、文化の違いで同じものが両国語の間に存在しないため、ちょっと対訳出来ないものもあるのである。 文法的に理解出来ないものも、オミュルさんに読んで貰うことでヒントが与えられ、ようやく見当がついて訳文を思いつくことが出来た。 「加瀬さん、いつでも聞いて下さい。お手伝いしますからね。オスマン語が混じると大変ですよ、今ではトルコ人にも読めない言葉になってしまったのですから」 私は疑問点が解決した後、オミュルさんとしばらく歓談し、感謝しながら電話を置いた。すぐに訳文を調え、すっきりとまとめることが出来た。 そうこうするうち、7月1日の午前零時を迎えてしまった。ドヨヨ~ンとした頭痛に加えて首筋あたりから肩まで痛くなり、洗面所の鏡に映った眼精疲労で真っ赤な目を見て、これでは病気になってしまいそうだ、と何もかも明日に回して寝ることにした。昼間になったら、もう一度少々日延べ出来ないか、発注元のゼネラル・マネージャーに頼んでみよう。 朝っぱらからそう言う頼み事は失礼と思い、午後一番にメールで、オミュル・トゥファン氏に協力して貰っているので、納品を4日まで延ばして頂けるでしょうか、と丁寧に書いて送ったら、マネージャー氏から 「心配いらない。4日と言わず、バイラムの終わる11日までに、必要な訂正、推敲、監修をして納めてくれればいいですよ、と寛大な返事が返ってきた。 ああ、有難や、私はお礼の言葉と、7月1日がラマザンの終わる3日前の「カディル・ゲジェシ」に当たるので、宗教的なお祝いの言葉を述べて、よいバイラムになりますようにと書き送ったら、間髪をいれずマネージャー氏から「私もあなたのカディル・ゲジェシと、バイラムが素晴らしいものであるようにお祈りします」と優しい言葉が返ってきた。ご機嫌だったようで、本当によかった~。 そのあと、私はどれほどホッとしたことか、5月1日からスタートするつもりだった翻訳が、歯の不具合から来た痛みと腫れのために1週間も遅れたこと、それと前後してアパルトマンのカプジュ騒動、いわれもない重いジェザー・パラス(罰金)を課せられて、一日おきに住民会議で夜が潰れた。しかも毎月420TLを今後半年も払ってゆかなくてはならない。 娘が来た時、それに相当するお金を置いて行ってくれたので助かったが、そのあと食事中に治療した歯列がパカッと外れ落ちてしまったり、罰金を払いに指定の銀行に行くと待たされること、待たされること。幸い翻訳を手伝ってくれた友人がいるので、気持ちの上で負担が軽くなったが、原稿が余りに難し過ぎて彼女も私も全然予定通り進まなかったり。 さらに、メティンさんが突然結婚式をすることになって、これはまあ、嬉しいサプライズなのでいいのだが、突然の来客が複数回あったり、突然のナニナニが多過ぎた。とどめが突然の空港テロ事件だったし。 いつかそれも思い出になる日も近い、と安心して今日は遅い昼食に、とうとう「山芋入り 手打ちそば」を拵えて食べることになった。そば粉がないので、粉末鰹節をたっぷり入れて、山椒の粉も振り入れ、長芋をすりおろしよくこねて寝かせること1時間余り、まずまずの出来である。 朝ご飯には作り立ての「としお麺肉味噌」、ツナ缶、キュウリとレタスの即席キムチ 長芋が入るとちょっと柔らかくなるので、量に注意。 テーブルは猫が占領、このところ袖机に載せて、パソコンを見ながら食べています。 ビールでも飲みたいけれど、ラマザン中なので我慢。挽き肉と味噌があるので、毎年夏は欠かせない「としお麺」の肉味噌も作ってしまった。食い意地はさすが~、全く衰えていなかった。 ブログは5月分がとうとう書けなくなってしまったので、あとでダイジェスト風に書くことにして、今日はそれきり翻訳のページを開くこともなく、今年も後半に突入してしまった今日の日記だけはしたためないと、と思ううち眠くなって、私はもう何年振りかで8時間睡眠を実行したのだった。 そういうわけで、2日になってから書いた7月1日の日記です。それでも私の日記としては抜群にオンタイムなのです。 アントニーナ・アウグスタ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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