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カテゴリ:チュクルジュマ界隈のこと、または猫ばなし
【9月12日・月曜日】 昨日11日はバイラム・イヴとも言うべきアレフェ・ギュヌ。この日はウィーク・デーなら、官公庁、銀行、事務所・工場・学校なども12時過ぎには休みになる。日本でも昔、土曜日を半ドンと言ったように、バイラムに入る準備のために事業所はほとんどすべて窓口が閉ざされる。 しかし、スーパーマーケットやパスターネ(ケーキ店)などはバイラム用の買い物が今日になってしまった人々のためにかなり遅くまで営業するのだった。 私にはこの日もたくさんの電話やチャットが入って来て、バイラム中に一度はお会いしましょう、と言ってくれる知り合いや友人達に、バイラムには家の掃除をする予定なので、バイラムが明けたら会いましょう、などと不確かな約束をした。それでも例年なら必ず守ることが出来た。掃除も曲りなりにもやっていた。 ところが今年はちょっと事情が違って、日本の流行り言葉風に言えば、元カプ一家(元カプジュだった男とその口汚い女房、簡単に人をかみ殺せそうな大型犬ピットブルを飼う無愛想な息子、財布から現金抜き取り常習犯だった娘の4人)と、12軒のうち、元カプに遅滞なく給料や健康保険代を払っていた10軒の家主にも、汚い手を使ってこちらには知らせず裁判に持ち込み、イシクルから不当労働行為のカドで多額の罰金を払わせられている。 そのうえ、新しいヨネッティジの指導のもと、家主側が発した解雇、立ち退き警告も無視、いまだに居座って、しょっちゅう廊下や階段、インターホン、エレベーター、などの電源を切ってしまい、嫌がらせばかりしているので、イスタンブールの外に旅行したり、長時間他家に訪問する気になれなかったのである。 アレフェ・ギュヌのうちに、バイラム中の食材を少し買っておこうと廊下に出たら、思った通り、早くも元カプの仕業に違いないエレベーターの停電が起きていた。急いで外猫の餌400gと、今朝までのゴミ袋を持ち(帰宅後また降りなくても済むように)、ミニ懐中電灯も買い物袋に入れて階段に気をつけながら一歩一歩下りて行った。ここはビルの中央で螺旋階段風になっており、手摺のある側は足が乗らないほど狭くなっているからである。 玄関の扉を押して外に出ると、戸口に座っていた元カプの強欲妻が私を呼びとめた。 「ジャポン・テイゼ、どこへ?」 「すぐそこよ。それよりアサンソールはどうしたの?」 「さっき、5階の娘っ子が友達3人と一緒に乗ったから、5階に着いたとき下まで一気に落ちてそれで故障したのよ。2人乗りのアサンソールに4人も乗ったんだから落ちて当たり前だわ」 「どこのアサンソールの話をしているの、私はずっと家にいたのよ。アサンソールが下まで落ちて、何の音もしないわけないじゃないの」 「じゃあ、あんただけ聞こえなかったんだよ、みんな知っているんだからね。1時間もしないよ、まだ。」 そんな見え透いた嘘を信じるとでも思っているのだろうか。4人も乗ったワゴンが落下したならこの1階の部分に激突して大きな音がしただろうし、けが人が出るような騒ぎになるはずだ。 救急車やパトカーが来たわけでもなく、乗っていたと言う若い女の子4人はそのあと、どうしたのだ。嘘つき女め。 「あのさあ、ジャポン・テイゼ、このごろあんた達がトプラント(会議)だとか言って集まって、ブドゥ、ブドゥ、ブドゥ、ブドゥ(べちゃくちゃべちゃくちゃ)、よからぬことを相談しているのは分かってんだよ。図星だろ、ジャポン・テイゼ」 うわ、盗っ人猛々しいとはこのことよ。私はもちろん返事もせず、彼女にはもう一瞥もくれずに歩き出した。私が相手にしなかったので、女は「あんたらのヨネッティジに、早くうちのアイダット(給料)を払えって、言っときな!」と私の背に向かって口汚く言い放った。どっちが雇い主だったのか、忘れてしまっているようだ。 バイラムが来ると言うのに、エレベーターが使えない、と言うことになると、あまり何度も階下に下りて行くことも出来ないし、思い切って大掃除すると言っても予定通りに事は運ばないかもしれない。 その晩、私は5階のハンデ・ハヌムの家を訪れた。彼女は私より4,5歳若いはずだが、体重が重いのと膝に故障があって5階まで上り下りするのは、私よりはるかに難行苦行になる。幸い、カナダ国籍も持つ息子のレベントさんが諸手続のため、仕事を休んでトルコに帰って来ていたので、買い物は彼がやっている。 エレベーターの件と言い、元カプに給料を払わなかった連中が今度はそちらの肩を持って、共闘体制を取っていると言う信じられないような話を、何年もカナダ暮らしをしてきたとはいえ、このアパルトマンの情報については私などよりよほど詳しいので、レベントさんも呆れた顔つきで私にいろいろなことを説明してくれた。 エレベーターについては最上階に停止レバーがあり、これには余人が触れぬよう、プラスチックのカプセルで覆われており、その鍵は元カプが持っているので、鍵のない住民には簡単に復旧させられない。試しにレベントさんと私が上まで階段を上り見に行ったが、手の出しようがなかった。 この件をヨネッティジのムラット氏に電話で報告し、バイラムの4日間は住民も我慢するしかないようだから覚悟はしているが、話のついでに私が昼間出かけるときに、元カプの妻がエレベーターが落下したという作り話をしたり、みんなで集まってひそひそよからぬたくらみをしてるんだろう、と私に言っていた、と話すと、ムラット氏は「それはどっちのセリフだ、と言いたくなりませんか」と笑った。 とにかくすべてがバイラムの明ける来週でないと、らちが開かないと思うしかない。バイラムが来たというのに、こんなに不愉快な気分なのもかつてないことだ。さあ、来週はどうなるのだろう。 チュクルジュマ・ジャーミイの向こうに見えるアパルトマンが悪者に食い物にされようとしている。 アントニーナ・アウグスタ お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
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