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カテゴリ:イスタンブールで人と会う
【10月5日・水曜日】 バスに乗ったが道が混んでいたので、6時少し前にやっとタキシム広場に着いた。時々知り合いの人も泊まるホテルなので、場所は分かっている。ドアを押して入るとすぐに、ロビーのソファに腰掛けて、私と同じような古いトルコ携帯をなぜか、しみじみと見つめている石本先生に会うことが出来た。 私がミチコさんとユジェルさんを紹介し、挨拶が済むと先生がレセプションに声をかけて、ほどなく智恵子夫人が夫妻からのお土産とうちの娘からの預かり物、とのことで二つの紙袋を持ってロビーに下りて来られた。 先生夫妻は去年4月頃トルコに見えていて、かつてトルコ留学中に下宿していたジハンギルのアルバトゥル家を訪問した夜、お時間があったらいらっしゃいませんか、と電話を下さったのだが、翌朝が納期の翻訳をしていて、お会いしたいのは山々だったが、もし出かけてしまったら最後、朝までにやり遂げる自信が持てなくて、伺うことが出来なかったのだった。 十数年前から、先生と智恵子夫人が二人三脚で訪ね歩いたトルコ各地の手編みレース、「オヤ」の様々なモチーフの集大成として、585種類の見本帳を出版するための準備に来ておられたのだが、これがいよいよ出版されて、今回はお世話になったトルコの方々への報告とお礼に、約1ヵ月間、各地を回って歩かれるとのことだった。 奥さんがまず、袋からご自分達のお土産の味噌やだしの素、高野豆腐などを、そしてV子からの袋をそっくり渡してくれたので、心からお礼を言って受け取った。さらに奥さんは、ご自分達の共著である「トルコの伝統工芸 縁飾り(オヤ)の見本帳」という出来立てほやほやの本をプレゼントして下さった。 左下が出版されたばかりの「オヤ」に関するお2人の研究の成果。 どうもありがとうございます。 ミチコさん達が本を見せて貰っている間に、先生のトルコ携帯が、このところ1年半以上使っていなかったため、今回、バッテリーに充電しても全然使えないので困っているところだったと言うので、ユジェルさんに聞いてみた。 「1年以上プリペイドに充填されないとその番号は使えなくなるんですが、同じ番号を続けたい場合は、一定の料金を払うと復活させることが出来ますよ。そうすれば、今まで登録してある人達の電話番号のリストも使えるようになります」とユジェルさんがきれいな日本語で答えた。 「ああ、それも出来るんですか。だったらぜひとも継続したいですが、これはどこでやって貰えるのでしょう。それと、来週月曜日から地方に出るためにフェリーボートの予約をしたいのですが、イエニカプの港まで行かないと駄目なのでしょうかね?」と先生。 ユジェルさんが自分の携帯でいろいろ調べてくれたら、大手のバス会社、メトロ・ツーリズムの各地のチケット・オフィスでも、カーフェリーの券が買えるとのことだった。電話のTurkcell(トゥルクセル)の総代理店もイスティクラール通りのバルック・パザールの手前にある。 ユジェルさんは「もしよろしかったら私がお伴して行きますから、明日と言わず、今まだ6時半なので8時くらいまでは店が開いていますし、両方とも今日のうちにやっておいてはいかがですか」と言った。 どちらのオフィスもタキシム広場の周辺と言える地点にあるので、私が場所を説明すると、先生もそのくらいだったら私も行こう、何、大丈夫だ、と、足元を心配する奥さんをしり目に立ち上がった。 かくて奥さんがフロントに私達用にチャイを頼んでくれたのを頂きながら、ミチコさんと私はホテルで待つことになった。奥さんはとても気を使ってくれて、 「すみませんね、せっかく皆さんでお夕食にお出かけの予定だったのに、余分なことをお願いして」とすまなそうに言いながら、出て行った。 と思ったら、すぐに扉から顔を覗かせて、「あの、表でアンティーク市が開かれていますよ。ご退屈なさらないようにそれでも見ていて下さい」とニコニコしながら教えてくれたのだった。 奥さんが心配したにもかかわらず、1時間もかからずにユジェルさんが手伝って電話は復活するわ、チケットは手に入れるわ、すべてが済んで、夫妻はとても嬉しそうに戻ってきた。 「加瀬さん、あの、皆さんへのお礼にこのホテルの食堂でよろしければ、何かお好きなものを注文しますから、どうか食べて行って下さい」 「いえいえ、お礼なんてとんでもない。実は今日はアンカラにもコンヤにもない、ウイグル料理を食べたいと思っていまして、それこそもしよろしければ、ドルムシュ(乗り合いタクシー)で先生方もご一緒にアクサライ方面にいらしゃいませんか?」 石本先生夫妻の活動には、トルコ好きの人々がたくさん集まるので、ミチコさんは帰国後同じ東京に住まいがあるし、日本トルコ文化交流会に参加する約束が出来た。 また今、アンカラ大学のマスターコースで最後の段階を学ぶユジェルさんは、ドクトルコースをいつか日本でやりたい希望を持っているので、その際は先生夫妻が受け入れ先として協力し、今日のユジェルさんの親切に報いたい、と言ってくださった。 人の出会いは不思議、不思議。今日の今日まで互いにトルコに関わりながらも、全く知らない同士がここで心が結ばれたことになる。これこそが人生コーディネーターの仕事冥利に尽きるなあ、と私も嬉しかった。 1ヵ月後には地方回りを終わってまたイスタンブールに戻って来られる先生と奥さんに、再会を約束し、私はミチコさん達とすぐ近くのドルムシュ乗り場に向かった。 先生、奥さん、ありがとうございました。 8時になろうとしているタキシム広場の交通はごった返していたが、何とか2台待ちしてドルムシュに乗ることが出来た。アクサライ地区のユスフパシャというトラムの駅の近くに、ユジェルさんが一度友人と来たことがある、という「イペッキ・ヨル・ウイグル・レストランに行った。 週の半ばの水曜日でもあるし店は空いていて、じきに料理も運ばれて来た。この電車通りは、トルコ系の店よりも圧倒的にダマスカス料理やベイルート料理などの店が多く、以前はロシア人ばかりがいたのに、十年かそこらで街の様相が一変したことを感じないではいられない。 ウイグル料理の定番、ウイグル・ラグメン(ラーメン)。 一人前の量がかなり多いので、シェアして食べています。 焼きうどん風に、ソースがすっかりまぶされたタイプ チチュレ・スープ、早い話が餃子スープのようなものです。 水餃子風ですが、中の肉はブチャック・アラスというぶつ切り。 満腹になって、ここはミチコさんのおごりで有難くご馳走になり、またドルムシュでタキシム広場まで戻り、下りたところでちょうどタクシーも拾えたのでまっすぐに家に戻った。10時を過ぎてしまったので、猫達もお腹をすかして待っており、私は大急ぎで内外の猫に餌をやり、麦茶を沸かして休憩することになった。ミチコさん、ご馳走様でした。 明日はいよいよお別れだが、明日の献立は既に頭の中にあるし、何よりも仲のいい友人達が私を訪ねてくれたことで、嫌がらせ電話もブロック出来たし、今日先生達が届けて下さった娘からの土産の中に、私は一言も娘には言わなかったのだが、イシクルに払う3ヵ月分のいわれなき罰金と、猫達の当座の餌代に相当するものを入れてくれていたので、一挙に肩の荷が下りたのだった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2016年10月14日 13時39分47秒
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