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カテゴリ:メフテル軍楽隊
【2月19日・日曜日】 ドイツ教会のコンサートは成功裏に終わり、今日は昼少し前から叔子さんの興味を引きそうな、近場の見どころを案内するつもりでいたので、11時くらいにホテルにタクシーで迎えに行き、そのままスルタンアフメットに向かった。今日もなかなかの好天気だった。 タクシーを降りたところがイェレバタン通り。2年以上前と違って、閑散としたイェレバタン通りからアヤソフィア博物館前のこれも閑散とした広場が見える。トルコの観光メッカとして世界遺産にもなっているこの地区は、アヤソフィア博物館、ブルーモスク、トプカプ宮殿、イェレバタン・サルヌチ(地下貯水地)など、長い行列で待たないと、おいそれと入場出来ないほどの混雑ぶりだったのに、今は全くその面影もない。 イェレバタン通りには、22年前にイスタンブールに移住したとき以来の、長い友人兄弟の経営する絨毯やキリムなどの贈答品・お土産の店、ユーリュックがあり、店に挨拶に寄り店長のエルカンさんに叔子さんを紹介し、楽しい会話とお茶をご馳走になってからアヤソフィア博物館に向かった。 叔子さんも猫好きな人なので、アヤソフィア博物館内で生まれ、職員達がいつくしんで育てた看板猫の「グリちゃん」について話すと、どんな猫なのか、とても興味を引かれた様子。 イスタンブールは人種のるつぼとも言われるように、野良猫世界でも実に様々で、一見高貴な血統書つきかと思うほど、もふもふのアンゴラ系、ペルシャ系の長毛種がいたり、アメリカンショートヘアやロシアンブルーや鼻ペチャのチンやヒマラヤンの系統までその辺のソカク(道)にいくらでもいるのである。 アヤソフィア博物館の看板娘なら、純白のアンゴラやワン猫などの貴種であってもよさそうなものだが、全身縞模様の平凡なキジ猫で「純粋の雑種」。しかし非常にお利口さんで、館内で母親が5~6匹産み、職員達がみんなで面倒を見てきたのだそうだ。これは2010年春日本の番組の取材撮影のとき、まだ生後1年足らずの若い猫だったグリちゃん達について、当時の女性副館長さんに伺った話。 グリちゃんは、まだイスタンブールが観光客で大混雑の頃、日に何度か、マリア様に抱かれた幼いイエスのいる正面のドームの下の、ミフラップ(メッカの方向を示す床の間のようなくぼみ)や、ミンバル(僧侶の説教壇)のあたりに出てきてちょこなんと座り、モデルさんよろしく右、正面、左、と順に観光客に顔の向きを変えて、ちょっと寄り目ながらそれがまた可愛らしく、猫好きの人々のカメラに収まったグリちゃんの姿は、世界中の国々に紹介されたことだろう。 モデルのお勤めをしない時は、冬場ならライトアップ用の照明具に寄りかかって暖を取っている賢い子でもある。グリちゃんを捜してぐるりと見回すと、いたいた、すぐ目の前の、ミンバル照明用のランプの箱にもたれて眠っている。 よく見ると同じくらいの色と大きさの猫が2匹一緒に寝ていて、手前の1匹がむっくり起きてミンバルの横に出てきた。「グリちゃんや~」と呼びかけるとすぐに私達のそばに寄って来たが、見なれたグリちゃんとは毛色が違うような気がした。背中がグリちゃんより黄色っぽく見えるのだった。 右側のミンバル(僧侶の説教壇)を照らしている木箱にもたれかかって2匹の猫が寝ていた。 いたいた、グリちゃんと思しき猫。向こう側にもう1匹いますねえ。 叔子さんと戯れる猫はグリちゃんそっくりですが、なんだか黄色っぽい色に見えます。 あれえ? 寄り目のところもそっくり、顔も実によく似ていますが、やっぱり少し違う! 私も最初は騙されて、グリちゃんだとばかり思っていましたが、この子は噛みつく、ヘンですね。 その子と遊んでいるうちに、照明具の箱の前にいたもう1匹がのっそりと出てきた。すると、あとから出て来たのが元祖グリちゃんだったのである。それにしてもよく似た2匹、同じ時に生まれた姉妹の1匹かもしれない。 ありゃりゃ~、あとから出てきたこっちがグリちゃんですよ~、ああ、驚いたァ! 元祖グリちゃんのお出ましで~す。ごめんねえ、1年くらい会いに来られなくて。 グリちゃんと戯れていたときに、旅行者らしい1人の日本青年が話しかけてきた。穏やかそうな話し方が非常に感じのいい若者で、イスタンブールやカッパドキア、パムッカレを回る一人旅にやってきた大学生だそうだ。 2階の回廊にも一緒に上り、奥の方に残る幾つかのモザイク画についてや、十字軍として出征しながら、途中で矛先を変え、1204年にコンスタンティノープルを征服してラテン王国を築きあげたエンリコ・ダンドロの墓などを説明してあげたら、とても素直に喜んでくれた。 袖擦り合うも他生の縁、一緒に外に出てイスタンブールの思い出の一つにと、彼のスマホで記念に3人一緒にセルフィーで写して貰い、私達はこれからメフテル軍楽隊のコンサートに行くの、よかったらご一緒にいかが、と誘って、「ご迷惑にならなければ」と彼はとうとう私達と一緒にトラムワイとバスを乗り継ぎ、軍事博物館にも同行したのだった。 叔子さんは昨年2月に親戚の人とイスタンブールに来たとき、何気なく軍事博物館に入り、メフテル・コンサートを聴いたそうで、そのあと、庭を散策していたら鎖帷子の護衛兵の役を務めた義務兵役の青年に出会い、「Facebookの友達になってくれませんか」と、目の前でいきなり頼まれてついOKしたと言う。 この青年A君が当時のメティン総務課長の付き人で、私に「僕にも日本人女性のFB友達がいるんですよ」と自慢したのがきっかけで、彼から私のことを聞いた叔子さんが、すぐに私に友達申請してくれて知り合ったのだった。 鎧の護衛兵A君が除隊となって故郷に帰り、隣県のコンヤにある勤務先に復帰してほどなく、叔子さんにトルコでの演奏計画の話が出て、7月中旬再びイスタンブールにやって来たあと、コンヤで1週間くらい休暇を過ごすことになった。 私は鎧の護衛兵A君に、ユジェルさんを紹介し、2人で交互に叔子さんの案内や警護をお願いしたい、と頼んだ。イスタンブールからコンヤに飛んだ叔子さんとは、その際、何度もたっぷり電話で話をしたが、7月15日になんとまあ、イスタンブールやアンカラでクーデターが起こり、国中が大騒ぎになっていても、コンヤでは爆撃の起こる不安もないので安心だった。 その時期は私も忙しく、叔子さんがイスタンブールに戻ってすぐスイスに帰ったこともあり、会うことは出来なかった。しかし、軍楽隊で見た1年前のコンサートで指揮を取っていた、長身の美丈夫の躍動的なパフォーマンスをもう一度拝見したいものです、と言うのを聞いて、今回は必ず私が案内することに決めていたのだった。私達が本日、コンサートの観賞に行くことは、デニズ少佐には朝のうち、あらかじめ知らせておいた。 叔子さんも旅の青年W君も、世界最古のメフテル軍楽隊の発祥についての紹介映画が終わり、舞台の袖から総大将チョルバジュ・バシュ一人が登場し、軍楽隊を呼ぶ掛け声をかけた途端、入場行進曲が鳴り響き、舞台右手の緩やかな階段を、旗指し物を掲げた兵隊達が下りながら入場を始め、ほどなく舞台の袖からは本隊の入場となり、楕円形の舞台を一回りしてみんなが定位置に着くのを、目を凝らして見つめていた。 コンサートが始まる直前、W君も叔子さんもわくわくしているときです。 この日も入場者が多く、メフテル軍楽隊のコンサートもかなりの入りでした。 メフテル・バシュ、デニズ少佐の観衆への挨拶。 観覧席の舞台に向かって左側に座ったので、中大鼓の皆さんがよく見えました。 ああ、2人とも喜んでいてくれる、と私も何度来ても飽きない、どころか、隊員の皆さんのほとんどの方と友達あるいは顔見知りになったことで、なお一層、メフテル・コンサートの観賞が楽しみになっていたので、ご案内した人々がお気に召した様子だと、非常に嬉しかった。 約25分ほどのコンサートが終わったあと、一旦退場したデニズ少佐が舞台の袖から戻って来るのが見えたので、私達も観覧席から舞台に下りたが、真紅のコスチュームを着たひときわ目立つ軍楽隊長を見た途端、舞台に早く下りていた人々が少佐に殺到したので、結局ほぼ最後まで待ってやっと私達の番が来た。 音楽家2人のツーショットは見事に決まっています。 私が2人を紹介し、それぞれデニズさんとのツーショットを写したあと、私は叔子さんと一緒にデニズさんの両脇に立って記念に写して貰った。デニズさんは最後になってしまった私達を、中庭から展示館の廊下に出る近道を通って送って来てくれた。 さらにデニズさんは私達が軍事博物館の展示館を出たところで、既に私服に着替えて待っていてくれた。叔子さんとももう一度話をしながら正門を4人で一緒に出て、W君は「とても素晴らしいコンサートを聴かせて頂きました」とデニズさんともしっかり握手し、私達にも丁寧に挨拶をしてから、タキシム広場に向かって歩き出した。デニズさんはメトロに向かうので、通りを渡ったあと、私達がアジア側に行くために乗る、ハルビエ交差点のドルムシュ乗り場で別れを告げた。 ハルビエからベシクタシュまでの道路は既に混雑の様子を見せていた。今日はドルマバフチェ宮殿の向かいにある、ベシクタシュ・チームの本拠地、イノニュ・スタジアム (Vodafon Areana) で試合があるらしく、白黒のチームカラーのユニフォームを着こんだ大勢のファンが三々五々、グループになってスタジアムの方向に歩いていた。 海洋博物館の前で下車した私達は、5時発のカドゥキョイ行きモトール(発動機船)に間に合い、2階部分に乗って潮風に吹かれながら、20分足らずの船旅に出たのだった。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2017年03月03日 18時57分24秒
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