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カテゴリ:日本を思う/日本にいる人々を思う
【4月23日・日曜日】 今日はトルコでは子供達の祝日。いつものように、5時50分に携帯電話の目覚ましをかけておき、実際にはそれより早く目覚めることも多いので、そのまま起きてしまい、猫の砂箱の掃除など、機械の音を立てずに出来ることをやっておく。 パソコンを開いて日本から来ている質問やら、頼まれごとの内容を確認したりする。すぐ返事の書けないものが多いので、あとで調べてお知らせします、と、一応メールやらメッセージを受け取っていることを知らせる。 やがて6時になり、ロンドンにキー局のあるJSTVがヨーロッパ諸国に送信しているNHK正午のニュースと「のど自慢」。そのあと朝7時からドキュメンタリー「目撃! にっぽん」、この日のルポルタージュは「高校生ワーキングプア 旅立ちの春」という、3人の高校生に焦点を当てて密着取材されたものだった。これは日本では実際には日曜朝の6時15分に放送されていたものを、JSTVがこの時間帯にアレンジしたらしい。 冒頭の10分くらいを台所に行っていて見逃してしまったが、翼君とマー君(優・まさる君)は日本人の父親と外国人の母が離婚して、2人を引き取った父も亡くなり、今は兄弟2人だけで暮らしている。母親は東南アジア系の女性だが、どこの国かは聴き逃した。 父の死後生活保護を受けているので借家の家賃などは払えるが、2人の生活費を稼ぐために兄の翼君は日中ファミリーレストランで働き、定時制高校で夜勉強している。弟のマー君は全日制で学び、授業が終わると兄の職場に行き交替で夜働く。 マー君が大好物だと言うので、弟のために翼君はチーズの大袋をいつも切らさないようにし、チーズたっぷりの炒め物やスパゲティなどを作って2人で向き合って仲良く食べる。 兄は6万円、弟は5万円程度の収入で、本当に何一つ贅沢も遊びも出来ないが、互いにいつも相手を想い合い、心を一つにして働き、暮らしを維持して、今年の3月半ば、揃って卒業式を迎えることになった。 兄弟は4月から企業への就職も決まっている。翼君のバイト先の勤めが最後の日、馴染みのお客さん達が集まって、店でお別れ会をしてくれたそうだ。 マー君は午前中に卒業式があるので、兄の翼君が背広・ネクタイ姿で保護者として出席、夕方に今度は翼君の卒業式がある。彼は思い切って真紅の着物に真紅の羽織を着て、縞模様の袴という目立つ姿になった。 草履がなくて仕方なくそうなったのか、ニューモードなのか、袴の下には白いスニーカーを履いているのだが、特に違和感もなく、これが若者世代と言うものかとちょっと微笑ましく思った。今度はマー君が背広・ネクタイ姿で親族として出席、翼君は6人の定時制卒業生の総代で謝辞も述べた。堂々たる兄の姿にマー君も嬉しい。 兄ちゃんが卒業式にはカッコよく羽織はかまで決めたぞ。さすが兄ちゃん。 弟のマー君もこれからは社会人、でも兄弟の二人三脚は続く。 卒業証書。3年間(定時制は一般に4年間)の学問の証し そしてもう1人、両親の離婚で母子家庭となり、働く母の代わりに弟妹の面倒を見ながら家事一切を引き受けている少女優子(ゆうこ・仮名)さん。何年もそうした暮らしが続き、いくら若くても疲れて宿題や予習復習のさなかに眠りに陥ってしまうこともしばしば。 それでも高校の成績はオール5の彼女は、大学進学も充分可能な立場だったが、家の経済状態を考えて、一日も早く仕事に就けるようにと、2年制のキャビン・アテンダント養成専門学校に進んだ。 経済大国にっぽん、子供達の6人に一人は貧困層に属し、家計の一助に、自分の学費にと、アルバイトで働き続けていると言う。この優子さんも妹が12歳になって弟の面倒が見られるようになると、学校の帰りには僅かな時間でもアルバイトに行き、働きづめの高校生活を送った。 翼君とマー君兄弟は、高卒後それぞれに就職が決まっていて、持ち前の辛抱強さを生かして、職場の先輩達から信頼される社員になってくれるだろう。卒業式から半月余り。咲き乱れる桜の下を、新しい学校に向かう優子さんは中学生の妹と手を繋いで歩く。翼君とマー君もそれぞれの会社の入社式に、新しいネクタイを結び合う。 桜が咲いた、入学式、入社式の季節がめぐってきました。 桜吹雪の中を専門学校生になった優子さんの旅立ちの日 希望に満ちた入社式の日、仲良しの兄と弟の旅立ちである。 この3人の高校生は苦しい生活から逃げようとせず、「弟のために」「兄ちゃんのために」、あるいは「お母さんと弟妹のために」といつも相手を思うことによってハードルを一つずつ跳び越えてきたに違いない。 大義名分ではなく、心の底から沸き起こる肉親や他者への思いやり、それが大きな力となって、この若者達を後押しして来たのだろうな、と私は久々に心洗われる思いをし、「早起きは三文の得」、いいものを見せて貰ったとしみじみと涙の余韻に浸ったのだった。 トルコでは各地で近隣国の子供達の選抜チームがそれぞれの民族衣装で、楽しげに踊る姿が日がな一日続いたようだ。本来まだ子供である中学生や高校生が必死で働かなくてはいけない状況、それは功罪半ばする現象だ。苦労するからこそ人間形成も出来ると考えるのがいいのか、余りに可哀想、安倍さん、なんとかしてやって、と考えるのがいいか、私には今のところ明快な答えが見つからない。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2017年04月29日 14時10分59秒
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