|
カテゴリ:チュクルジュマ界隈のこと、または猫ばなし
【6月20日・火曜日】 本日こそ、張り切って掃除の続きをする筈が、夕べ預かってきた子猫タローに3時間おきに水割りした牛乳を一度温め、冷ましてから脱脂綿に含ませて吸わせる、という喫緊の「お仕事」が発生したため、夜10時に吸わせ、午前1時、午前4時という具合に、寝不足が加算されて目など真っ赤になってしまった。 朝の6時からのNHKニュースはしっかり見たが、そのあとの箱根登山鉄道の紫陽花電車のレポートを見た後、7時に新しく作ったミルクを吸わせたあと、もう欲も得もなくなり、本棚を拭き掃除し、本を整理して並べ替える作業を予定していたが、結局何も出来ず10時頃まで寝てしまった。 昨日、猫が出産した”ファッションと土産物ショップ「EDO」”にいるとき、留学希望のE嬢から携帯にショート・メッセージが入り、日本でのレール・パスは、ネットで買おうと思って調べたら、発行から5日後に住所に届くので、その頃自分達はもうミチコ先生の家に着いているだろうから、先生のアドレスと電話番号を教えて下さい、という。 私はすぐ電話して、彼女にこんこんと言い聞かせた。もうこのことで何度も私はあなたにメールを書き、日曜日にかけた電話でも言ったでしょう、イスタンブールのHISという旅行会社なら、その場でパスを発行してくれる、日本に持って行くのはこちらで日本のお札を都合してくれる両替店と交渉済みなので、替えたい金額が確定すればすぐ私が電話して、100万円くらいまでなら2日のうちに揃えてくれると約束してあるのに、あなた、私からのメール、全然読んでいなかったのね、と注意を促した。 E嬢はまだそのことを両親に伝えていないので、今晩話をします、明日の火曜日、HISと両替店に行って頼みたいので、もし一緒に行って貰えるなら、明日の午前中に連絡します、と彼女は私に約束したのだが、結局昼を過ぎても何も言ってこないし、こちらから2度ほど電話をしてもついに電話口に出て来なかった。 水曜日になってからではもう遅いのだ。いやいや、いつも最良の方法を指南しているのに、全然うんともすんとも反応がないのだから、私の留学コーディネーターとしての役目はもう終わった、あとは放っておこうと思っても、ついつい、そのことが頭を離れないのである。 しかし私はもう6時前に家の猫達に缶詰を食べさせ、幾つかかかってきた電話に対処し、電話が鳴るたび、もしかしてE嬢ではないか、と期待しながら画面を見ると全部違う人からだった。7時過ぎにタローを懐に入れて街に出た。ヤーシンさんには会えなかったが、2匹目のチビ猫の様子を見に行きますよ、と電話で話し、断食を実行しているヤーシンさんが、イフタルまで家に間に合いますように、と念じて電話を切った。 クラブ歌手のアフメットさんが一人ぽつねんと店番をしていたが、私を見ると喜んで暗い部屋に入れておいた子猫をかごに入れて連れてきた。母猫のマミーも店の中にいたが、子猫を近づけるとクンクン臭いを嗅ぎ、そのうちにカッと口を開いて噛みつきそうになった。 危ない、危ない、この様子では、タローと妹を母親のそばに寝かせたら怒って噛み殺してしまわないとも限らない。私は懐に入れてきたタローと比べて、妹猫の体が冷え切っているのが分かったので、妹猫も懐に入れて温めた。こんな新生児は体温が低下しただけでも容易に死んでしまう。 私がドンドゥルマ(トルコのアイスクリーム)を土産に持って来たので、アフメットさんが近くからラマザン・ピデを買って来てチーズをたくさん入れてサンドイッチにしてくれたので、2人で食べているところにオーナーのメテさんが友人のおじ様達と現れた。 タイと台湾と日本で2ヵ月余り滞在しあちこちに旅行したのだそうだ。アフメットさんがオーナーの分もサンドイッチを作ると、それを食べながらメテさんは二つ三つアフメットさんにやるべき用事を書き残し、友人達と出て行った。アフメットさんは妹猫にも日本名でいいから名前を付けて、と私に頼んだので、縞々猫なのでシマちゃんがいいと言うと、シマ、シマ、うん、いいねと喜んだ。 私は結局10時を回ったころ、2匹とも懐に入れて夜の街をやや足早に歩きながら帰宅した。家の前まで来ると、大工のブラック・ウスタがまだ店の前の商品を片付けずに表で立っていた。 「加瀬ハヌム、ちょっとその猫を見てごらんなさい」と私を呼びとめた。子猫が2匹いて、母猫がそばにいた。ウスタのショウルームの向かって右隣りに木造2階建ての元骨董店があるが、この数年、売家の広告を出していて、それをいいことにブラック・ウスタがその店の前を占領して、山のようなガラクタを置いたままにしている。 その廃材の下にいる子猫の1匹は、うちのタンブルか1月に亡くなったマヤちゃんのように白っぽく、少し黒い模様があった。生後2~3ヵ月の子供達で元気はいいが、腰から下がどうしたのか両脚とも外向きに広がってしまっており、真っ黒な兄弟猫がぴょんぴょんと飛びかかると、負けずに遊んでいるのだが、私は胸が詰まってしまった。 ブラック・ウスタはしきりにその子猫について、昨日、この空き家の廂から落ちてこうなったんだ、早く獣医に見せてやらないとこのまんまで、いざりになってしまう、と私の同情心を掻き立てようとしていた。もちろん、見たからに可哀想である。だが、昨日廂から落ちてこんな風に足が折れたのなら、兄弟猫と遊んではいられないはず。 私は胸の中に2匹の生まれたての子猫を抱えていることは、おくびにも出さず、ウスタに言った。 「ウスタ、私にはもう、いくら可哀想だと思っても、獣医に連れて行ってやるお金も力もないのよ」と言い、それ以上かかわらないようにその白っぽい猫のことは見ないようにして、心の中で目をつぶり家の中に入った。 「はいはい、おチビちゃん達、お家に帰って来たよ~、すぐに温かいミルクを作ってあげるからねえ、ちょっとの間、猫ベッドに寝ていてね」 タローはこんな風にミルクを飲んでいます。妹のシマちゃんにもこうして与えます。 子猫たちはママがいなければ子猫同士でしっかりと抱き合ったりしている。 ああ、あ~あ、全然懲りていない私。でもいいよね、子猫の命が助かって、2匹が揃って生きながらえてくれれば、この寝不足と足腰の疲れが報われる。母親マミーは、うちのシェビィとアルスの母、ニケのように最初は育児放棄しても、二度目はとてもよく面倒を見るようになるかもしれない。 しかし、二度目は、ではなく、お店の周囲の人が5リラ、10リラずつでも出しあって不幸な親子を作らないように、避妊手術を受けさせてやることが先決だと思う。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2017年06月22日 07時09分54秒
コメント(0) | コメントを書く
[チュクルジュマ界隈のこと、または猫ばなし] カテゴリの最新記事
|