|
カテゴリ:トルコと日本と世界の出来事
【7月9日・日曜日】 トルコの野党第一党であるCHP(ジェー・へー・ペー 共和国民党)の党首ケマル・クルチダルオール氏の提唱で、6月15日朝、アンカラからスタートを切ったAdalet Yürüyüşü(正義の行進)は、7月9日、25日間で432キロメートルを踏破したクルチダルオール氏を先頭に、イスタンブール市アジア側のマルテペ・ミーティング会場に数万人の長い列となって元気に到着した。 クルチダルオール氏は、69歳の年齢や疲れをつゆほどにも感じさせない足取りで、最後の数百メートルを踏みしめ、会場の入り口に姿を現した。その様子を場内の巨大スクリーンが映し出す。万雷の拍手が沸き起こった。 彼と一緒にスタート地点のアンカラから、或いは途中の数多くの県内の町や村から、感動の思いに突き動かされ行進に参加した人々も含め、民衆は大河の流れのようになって、会場に続々と到着し始めた。 イスタンブール郊外のゲブゼから夕方出発した最後の数キロを、単身歩き始めたクルチダルオール氏 アンカラからの429キロでは、CHPの支持者や新たに党首の勇気に感動した人々が取り巻いていた。 集会場はまだ日の高い頃からこの行進を支持する人々が三々五々集まり、日が傾く頃にはほぼ満員。 マルテペ・ミーティング会場を埋め尽くした観衆、アンカラから延々と続いた 大河の流れのような行進の参加者達をこうして声援するために待っています。 いままであまり公式の場に出たことのなかった夫人も連日少しずつ夫君と共に行進に参加、 ついに終着駅、マルテペ・ミーティング会場に到達。舞台から待ちわびた支持者に挨拶。 クルチダルオール党首は、夫人と共に特設会場の舞台に上がり、しばらく会場の声援にこたえた後、演壇に立って、常と変らず粛然とした態度で、この歴史的な行進がどれほど国民の正義を求める声を拡大し、これほどまでの盛り上がりを見せたかを語り、国民の分断を防ぎ、正義を守ることがいかに大切であるかを述べた。 そして、もう、わが党は25日前のCHPではなく、トルコはもう、25日前のトルコではない、と力強く宣言した。この演説はいままで遠慮がちな人、謙虚である、というクルチダルオール氏のイメージも一新し、15年の長期政権を誇るAKPに対して一歩も譲らない、国民の求めている野党第一党党首の姿を強烈にアピールしたのだった。 これに対して、政権政党のAKP(アー・ケー・ペー、エルドアン大統領の率いる公正発展党)、野党第2政党のMHP(メー・へー・ペー 愛国者行動党、デヴレット・バフチェリ党首)は、この行進に非常に強い反発を示して、大統領も首相以下の閣僚も公的な場で演説を行うごとに、CHP党首クルチダルオール氏を痛烈に批判し続けた。 野党第3政党のHDP(ヘー・デー・ペー国民民主主義党 共同党首2名が、昨年のクーデター未遂事件以降、テロを支援した容疑で収監中)は、CHPを支援し行進に加担している。 マルテペ・ミーティング会場にはすでに、立錐の余地もなくアダーレット・ユルユシュへの賛同者が押し掛けており、イスタンブール県庁が所有するこの集会場は200万人以上収容出来るキャパシティを持っているのだそうだが、ほぼ会場の敷地を埋め尽くしていた。 翌朝の各局のTVニュースでは、トルコ国内各新聞の第1面のトップ記事を紹介するコーナーがあり、そこには、各新聞のイデオロギーの相違によって、その日のアダーレット・ユルユシュの記事の扱いがまるで違っていた。もちろん、政権政党AKPに近い新聞には、行進する大行列の写真はおろか、ミーティング会場の入場者についても触れず、「どこの国の話だ?」というムードがあった。 それでなくても、イスタンブール県庁の発表がまた、CHP支持者ばかりでなく一般市民を大いに笑わせた。AKPが同じ会場を使ったミーティングを開けば、たちどころに250万人が集結、と言う記事になるのだが、イスタンブール県庁は、このアダーレット・ユルユシュには「17万5千人」が参加した、と公表しているのである。一桁以上間違っていないか? 私の願いはただ一つ、政権政党と拮抗する力を持つ野党第1党が出現し、与党の独走を許さず、互いに切磋琢磨し、必要があれば共同戦線を張り、どちらも本当の意味の「国民のための党」になってほしい、と言うことだ。 どんなに目覚ましい活躍で政権を握っても、指導者が自分の周囲に耳に快いイエスマンばかりを侍らせれば、童話の「裸の王様」同様に、その政権は必ずや弱体化してしまうし、或いは悲劇に向かってまっしぐらに自滅することすらありうるのだ。希有の敏腕政治家エルドアン大統領の政権は、強い野党があってこそ本当の底力が発揮出来ると思うからである。 お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう
Last updated
2017年07月17日 16時48分02秒
コメント(0) | コメントを書く
[トルコと日本と世界の出来事] カテゴリの最新記事
|