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夢みるきのこ

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2011年11月15日
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 愛宕山では、たくさんのきのこたちと逢瀬を重ねてきたが、ここでも名残りのきのこの筆頭は、ミイノモミウラモドキ Rhodophyllus staurosporusであった。
 比叡山の山門派に対して、弥勒信仰、新羅明神を護持して山を降りた寺門派の三井寺で発見されたので「三井寺の紅絹裏もどき」との和名に定まったようだ。
 地上生のきのこで、柄に特徴があり、重力にさからって伸びるために写真のようにしばしば顕著なねじれ模様を残す。僕などはこのきのこと出会うと、こじれにこじれた比叡山の歴史がそのまま体現されているようでうれしくなる。
 傘の表情は湿気の多いとところでは灰褐色で条線をあらわすが乾燥した場所で出会うものは淡いベージュ色で条線もない。
 ヒダは最初灰白色で、やがてごらんのようにサーモンピンクとなりこれがイッポンシメジである出自をしめしている。
 ただ円錐形か鐘形の傘の形は老成するにしたがい平らに開くが、傘の中央が山形であることは最後まで保たれ、これも種の同定の決め手となる。
 というのは、この日も同じ表情で紛らわしいことこの上ないウラベニガサ Pluteus atricapillusがところどころで顔をのぞかせていたが、彼らは1-広葉樹の腐朽材より発生すること、2-ヒダは白色からサーモンピンクとなることなどは同じだが、ミイちゃんよりはやや密であること、3-柄に傘と同様の繊維紋があるが白色でねじれタイツを履くことはまずないこと、4-ミイちゃんにはある柄の基部の白色菌糸がウラベニちゃんにはないこと、5-傘は幼時おまんじゅう形であることなどから区別できる。いやできると思う。やっぱり区別できないかな?。と言葉を濁してしまうほど微妙なところがきのこにはある。
 きのこは深入りすればするほど難しくなるは人間と同様である。しかし、つきあって気心が通じあえばそんなに悩むこともなくなる。これも人間と同様である。この2種のきのこはすれ違った時、今くだくだと述べた個々の特徴以前にきのこ全体のテキスチャ―の違い、すなわち印象だけで即断できる。要はきのこと抜き差しならぬ関係に陥ることなのだ。





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最終更新日  2011年11月15日 17時49分37秒
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