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夢みるきのこ

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2013年04月15日
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 ムックきのこクラブの探訪会はきのこ観察会ではありません。きのこを通して先人の行き来した土地の記憶を辿り、それぞれの来し方をふりかえり、行くえをととのえる集いです。

 きのこポエムは、そんなスーパーきのこ大学の文学部必修課目といったところでしょうか。文学部といえば筒井康隆の『文学部唯野教授』という愉快な小説がありましたね。でも、きのこのような非生産的な生き物におまけにスーパーがついたような大学の文学部なんて、もう気が遠くなるほどの無意味さで、世の我利我利亡者さんたちにはまったく無縁の世界です。打算のきつい人はきのこは敬して遠ざけます。たまたま間違ってこのきのこ世界に入ってきてもやがて去ります。スーパーきのこを志向するムックきのこクラブは「このきのこ食べられますか?」という思いしか持てない人には無縁の世界なのです。まして、スーパーきのこなんてわけわかめ?!(=わけわかんないのマダラ言葉)なことをいう人なんて異星人としか思えないでしょう。

 そんなムックきのこクラブのスーパーきのこ志向には、その根底に大乗仏教の「空」(そらではなく空っぽのくう)思想が流れています。

 まず、<文学やアートはこの世の未練でしかない。>というところからスタートしましょう。これが競争原理の世界の中で拡大再生産される差別を根絶できないまでも最小限に食い止める唯一の方法であると僕は考えてきたからです。

 そして「空」思想では全く無意味であるとされるほんわかアート活動に生涯を通して従事するための最初の一歩が「きのこポエム」なのです。

 仏教の大乗運動は、「空」理論を究極にまで推し進めながら、自分以外の世界の存在を認めるという矛盾を犯します。「空」思想では、他者とか自分自身のまわりにひろがる世界とかは一切夢幻とされます。しかし、そうであるにもかかわらず、利他行を説くのです。その個人と社会の矛盾を埋めるものとして菩薩行が編み出されました。いわば苦肉の策なのです。そこにはこの人生に対するするどい洞察、すなわち魂の救済なんてどこにもなく極楽も地獄もない。しかし、生きよ、励めよ。そして、虚無を抱えて突っ走りなさいという教えのみがあるのです。

 僕はきのこと決定的な出会いを果たした青春期(今はもっと青春しちゃって青ざめていますが・・・)の山旅の途中で「人は、きのこのように生まれきのこのように死んで、そのあとさきは一切ありませんのよ。なぜおわかりにならないの」と問いかけられたことできのこにぞっこん参ってしまったのです。そのときのきのこたちは絶世の美女以上の魅力を漂わせていました。

 矛盾だらけの「空」思想では、その人間の基本である言葉も不要とされます。アートなんてますます不必要。しかし、あなたや僕が、文学やアートに憧れ、鑑賞者、表現者となろうと試みること。それを未練だと僕は言ったまでのことです。でも、この未練、僕にとってはなんとも捨てがたいもので「未練でもなんでもいい。もっともっと楽しまなくっちゃ」と思ってきました。

 人は生まれ落ちてしばらく、みじかくて数秒、長くて100年余り生きなければなりません。その間、「空」「くう」と言ってみても「食う」のも必要ですし、セックスもしたい、ちょっぴりお金もばらまきたい。しかし、同じ生きるなら自分以外のいのちにいささかでもお役に立つ生き方(=利他)をするほうがよろしいのではないでしょうか、ということから文学やアートが生まれたのです。その基本は言葉です。

 この一言で未練といってもさまざまな表情をもつ事を「色」と言い、そんなのは死ぬ時になったらようやく分かりますが結局はあほくさいものでっせというのが「色即是空」「空即是色」ということなのです。

 ムックきのこクラブはそんな淡い未練を形にするクラブなのです。きのこシアター構想の思想的な核はここにあります。

 この世に対する未練。この未練はこの世のもの(=身体)と心という二元的にとらえれば分かりやすい。僕の好きな文学者に上田三四二がいますが、彼の『この世 この生』(新潮文庫)はそんな観点から西行・良寛・明恵・道元といったあほくさい人生をもっとあほくさく生きた4名の人物の生の軌跡を辿りとってもさわやかです。地に足をつけた状態の身体を未練を見つめていくことで浮かしていくそこに異質な文学・アートとしての言葉が生まれてくる情況をピタリととらえています。

 ムックきのこクラブ、とりわけきのこは言葉であるという僕の思いを受け止めてポエムをはじめた方たちには是非読んでもらいたいもの。

 それじゃきのこポエム新しい週の課題に入りましょう。






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最終更新日  2013年04月15日 20時09分45秒
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