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夢みるきのこ

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2013年06月05日
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  ギャラリーコレクションと高田光治 (30)0023.jpg

 アーティスト高田みつおによる非学術的・リアルなヴァーチャル世界の形象化としてのきのこや種子の標本。

  意識(言葉)をもった人間は、地球上でヴァーチャルな世界を手にした唯一の生物である。神の存在も言葉なくしてありえないものであった。「はじめに言葉ありき」とはその間の事情を端的に物語っていて興味がつきない。

 しかし、21世紀の現在ヴァーチャルなものに飽き飽きした人間が増え続けていることも事実だ。フィクションよりもノンフィクションが好まれることもその一つであろう。かっては写真や映像がその主役を担ってきた。しかし、世界を操作しようとする人たちのどす黒い意志はそうした真を写す行為を200%利用してノンフィクションを装ったフィクションを氾濫させた結果、誰も、何も、信用できなくなってしまったのだ。今では信頼できるものは、目に見え呼べば答える距離にいる人だけになってしまった。そしてあえて言えば疲弊の極に達しているかにみえる身の周りの自然も加えてよいだろう。お粗末な自然観察会がはやるのもその一端である。しかし、その自然観察から生きもののリアルな生きざまを見届ける目を養う助けをする人類の教師的存在が皆無であるため、堂々巡りの末にせっかくの機会に身を置きながら少しばかりの知識を得るだけで「もう若くはないから」とユーミンの『いちご白書をもう一度』みたいな言葉を残して人の顔を持つ蟻ばかりが我がもの顔にはしる世にひきもどされていってしまう。

 今一度、手ごたえのある関係をそれぞれが回復する必要がありと考えて、きのこから世界を相手にする人材育成を期してムックきのこクラブははじまった。ここでは人と人とが束の間出会い、同じ時間を共有し、野原や森を散策し、そこで出会う生きものを相手に自身と野生生物との間にひろがる何かを言葉で紡いでいくことが求められる。

 すでに終わってしまって久しいきのこブームであるが、きのこしらずのきのこ好きばかりがめだつブームがかぶさり、地球生命圏のいのちある生きものに対する関心の核心からますます遠のいていく昨今の状況を鑑みて、わたしたちは決定的に不足しているものを満たす試みを続けてきた。

 生きもの世界の観察とは異なり、きのこ観察の場合はきのこのある風景、そのリアル世界とひたすら接してみると、その生きもののリアルさゆえのヴァーチャルな存在様式に気づき、ふたたびヴァーチャルな世界へ舞い戻ることになる。しかし、それは単なる他から与えられたヴァーチャルではなく、自ら掴み取ったリアルさの彼方のヴァーチャルなのだ。それが21世紀の私たちの世界を考える場合にとても重要なメッセージ性がこめられていると直観し、四半世紀前スーパーきのこの研究を呼びかけて立ちあげたのがJ-FAS日本キノコ協会であった。

 この2年ほど前からムックきのこクラブでは新しい試みを始めてきたが、本年度からはいよいよ具体化に向けて動きだそうと考えている。

 リアルといえば、ムックきのこクラブのステイタスとなるきのこポエムもそうだが、不在出句ではどうしても伝わらない月1度の夜の顔不思議な俳句会、言葉とのつきあいにおいて不ぞろいとしか言いようのない人たちの集まりだが、終始抱腹絶倒の時間で、これも参加してはじめて言葉は生き物だということをまさにリアルにしみじみと感じとることができる場としてまさに「参加しなくては絶対損だ」と思うような会となりつつある。

 21世紀の国際的に通用するきのこ人の養成機関として、フィクションとノンフィクションの境を体感できるもっとも基本的かつ平易な「場」としてムックきのこクラブは動きだしているのはうれしい限りだ。人はヴァーチャルなものにうんざりしきっている。といってもヴァーチャルしか存在しないかに見えるこの世界で、どうやって自分という生きものをいきものとして再生させうるのか。その試みがムックきのこクラブであり、僕もたのしませていただいている川西きのこクラブなのだ。そしてそれらの世界に参入した人たちの世界観を再編するために<夜の顔不思議な俳句会>がある。手ごたえのある瞬間を気の遠くなるような努力でそれぞれがつないでいく以外にリアルな世界をとりもどすことができないまでに私たちの生活は荒みきっていることを今一度考えてほしい。






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最終更新日  2013年06月06日 08時03分01秒
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