夢みるきのこ

　湖東の太郎坊を極めるために、冬の関西ワンデイパス3600円をJRの最寄り駅へ買い求めに行ったとき、ちらりと見えたのが、湖都・びわこチケットのオプショナル・ツァーだ。この時、発作的に「日帰りで海と山のパワースポットを同時探検というのも粋だなぁ」と思いつき、だったら、「計画をガラリと変更して太郎坊の前に湖上の竹生島弁天に参ろうぞ」ということに相成った次第である。ぶらり旅はこんなことが簡単にできちゃうのがうれしい。

　ということで、始発の快速に飛び乗り、朝日にかがよう銀世界の湖北の長浜城下に降り立っているぼくがいた。

　片道30分、島内巡り1時間強。トンボ返りで再び長浜港へ。この洋上に浮かぶパワースポットは爽快そのものだった。そしてそのまま八日市手前の太郎坊へ向かうと1日存分に楽しめてしかも3600円ポッキリ。この日は近頃、僕について離れない相思鳥が終日見え隠れして、おらが春にふさわしい春先の旅となった。

　　　165段ある祈りの石段を登り、本堂直下から竹生島船着き場を俯瞰する。

　　国宝の都久夫須麻神社本殿

　本来は河の神サラスバーティ、のちに音楽の神となる弁財天をお祀りする竹生島寶厳寺本堂よりの眺め。

　竹生島寶厳寺本堂とその堂内

　弁才天の種字「ソ」。弁舌、芸術、財福、延寿をもたらす七福神中唯一の女神で招福の神さま。妙音菩薩、あるいは市杵嶋姫命と同一の神とされる。

　この鎌倉期の五重石塔は比叡山から産出される小松石で作られたもの。竹生島で僕がもっとも心惹かれたものは、なぜかこの石塔でした。

　竹生島の膝までの雪を踏み分けて、常行殿の更に東の端の波打ち際で、ようやく時代が僕に追いつきはじめた本年、静かな闘いを存分に遂行せんがための祈りを捧げました。

　竹生島神社脇のなじみの河童像

　同じく、竹生島神社の脇の空海が籠ったと伝えられる庵あと

　竹生島での思いがけないひと時を過ごし、再び洋上の人となる。

   J-FAS日本キノコ協会時代、近江今津に僕の盟友のN君が会員に開放してくれた近江くさびら庵(敷地面積3000坪の日本庭園・ヒノキ風呂付きの豪邸)には、四季おりおり通い詰め、その度に湖西の今津港から竹生島のきのこ調査に訪れましたが、湖東の長浜からは初めての体験。

　今回の上陸は、きのこ文化普及に心血を注いだ10数年の回顧の旅でもありました。いよいよスーパーきのこ時代のさきがけとなる原理的な指針をしたためる時節が巡ってきたことを小春の光まみれの船上で確信しました。  

　夕づく太郎坊の山巓で、シングルモルトウィスキーで、うすづく太陽に向かって新たなる門出となる瞬間をとらえて乾杯しました。

　いつもハイ状態で人から笑われますが、このたびのハイはハイのハイ乗(=ハイハイ。ハイは1回でよろしいと昔よく言われましたが、ちと意味が違うのです!!)。