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カテゴリ:ムックきのこクラブ
この日は道中いたるところでしるべとなって立ち尽くしていたキイボカサタケ。ここで出会ったおびただしい数のきのこたちについてはまた別稿で。 この夏最大のイベントとして用意した特別の聖地が、宇治田原と和束の領域にまたがる秘境、鷲峰寺・金胎寺(じゅぶさん・こんたいじ)だ。50年余り前に一度訪れたことのあるこの聖地、名前だけが記憶に残っていて、数年来ムックきのこクラブの有志と是非訪ねてみたいと思っていた。 ここが秘境である所以は、交通機関がとても不便なこと。アプローチが長くどこから辿っても険しすぎること。そしてかっては途絶えていた行場が近年整備されたらしいこと。 これだけでも行くに値いする地だと僕には思えた。アプローチの長いのは、道々きのこ地蔵たちに祈りを捧げつつ辿れば何の問題もない。そのため、きのこに不自由しない時節を選んでPLANを立てた。 案に違わず、きのこだらけの一日となり、行場もいまだかってない命からがらと言う言葉がぴったりのスリリングなもので、この絶巓(ぜってん)の鎖場を攀じた後のメンバーの顔には、一切を放下した爽やかさのようなものさえ漂っていました。 ムックきのこクラブは、一期一会の自由参加の会。「異」というものに平静でいられない優しい無頼派のサロンです。その真骨頂ともいえる山旅がここに実現しました。
集落の地蔵祠を覗けば、それはすべて化粧地蔵でした。
バス停を降りて、地元の人に道を尋ねると、今朝畑で収穫してきたというキューリを持っていきなさいとどっさりくれました。大半胃袋に収まったあとの映像。 今日の宴は、Aさんが諏訪で買い求めてきたというシングルモルトの「信州」。あとは小瓶につめかえて持参したアイリッシュウイスキーのBUSHMILLS、土佐鶴、加茂鶴。つまみは、のし烏賊風味のおつまみえのき、瀬戸のすだちののり天。
これまでの行場めぐりとは異なりスリル満点でっせと役小角像(迎え行者)前で語りましたが、皆、困った顔ひとつせず、したがって大喜び?!だと判断。 とりあえず、ロッククライミングの3点確保のみを説明して敢行。絶壁に貼りついて2時間余り、よくぞ文字通りただの一人も落伍者とならず迎え行者像まで帰還できたことだなと密かに思いました。ヘッヘッヘ!!。
死と再生を体験した後のこの爽やかな表情は、やはり不揃いのきのこたちが不揃いのまま無垢の心境を手にした瞬間にしかみられないものではないでしょうか。
無住の金胎寺境内。しかし、山岳修行者たちの気配りと善意に満ちており、あっけらかんとした空間が広がっていました。 この山旅の僕の密かな願望は、千手の滝に立って来し方の塵にまみれた人生を無化すること。それには、あきらかに十一面千手観世音をイメージしたと思われるこのかくれ滝に対峙することでした。 それは気の遠くなるような酷暑の道を辿り、絶壁の隘路を縫ってしか出会えない小滝で、思わず掌を合わせてしまうほどの見事なものでした。
この瀑布の広がりが千の手を広げて済度しようとする慈悲そのものにみえたのでしょう。 すべてのスケジュールを難なく終えて、山の中腹まで茶畑のひろがる急坂を駈けるように下り、宇治から辿る山の北側とは反対に南へ下り、バスでJR加茂駅をめざしました。
金胎寺から南東方向に下り、和束町側を望む
疲労困憊の極みにあると思われるメンバーは、それでも駅へまっしぐらのバスの車窓からマツタケのアイコンや菌の文字に敏感に反応し、とても頼もしく思われました。
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最終更新日
2015年07月13日 21時46分03秒
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